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「IoT H/W BIZ DAY Product Pitch 2021」

災害備蓄を社会でシェア 防災テック6社がピッチ

左から株式会社エーアイシステムサービス プロジェクトリーダー 小穴久仁氏、株式会社ロコガイドシニアディレクター 石井一弘氏、株式会社アジラ IVA事業部プロダクト統括マネージャー 山下勝也氏、株式会社InnoProviZation 代表取締役社長 残間光太郎氏、株式会社角川アスキー総合研究所 アスキー編集部 ASCII STARTUP ガチ鈴木氏、株式会社Monozukuri Ventures CEO 牧野成将氏(撮影時のみマスク未着用)

広い意味での「災害」に対するプロダクト・ソリューションを6名が発表

 ASCII STARTUPは2021年11月19日(金)、ビジネスカンファレンスイベント「IoT H/W BIZ DAY 2021」内にて「IoT H/W BIZ DAY Product Pitch 2021」をオンラインにて開催した。イベントのメインテーマは、災害の多い国土である日本の大きな課題のひとつである「災害対策」。

 自然災害のみならず、新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)で明らかになったまだ見ぬ脅威への対策も同様に、対策ソリューションの導入と各種ICTの活用など課題解決に向けて進めていかなければならない状況が続いていている。 そんな広い意味での「災害」に対して、対策・活用できるプロダクト、ソリューションをもつ企業が登壇した。

 審査員は株式会社Monozukuri Ventures CEO 牧野成将氏、株式会社InnoProviZation 代表取締役社長 残間光太郎氏、morning after cutting my hair,Inc. 代表取締役 田中美咲氏、ASCII STARTUPのガチ鈴木氏の4名だ。


防災ソリューション「Ai-SYSTEM」
地盤条件の調査で情報の精度向上へ

 まず、株式会社エーアイシステムサービス プロジェクトリーダー小穴久仁氏が登壇した。

過去から現在に至るまで、自然災害での犠牲者はなかなか0にすることができず、今後起きるであろう大地震などの災害でも大きな犠牲者が出ることが予見されている。そんな中、日本で運用が始まった緊急地震速報には、2つの種類がある。1つ目はテレビやスマートフォンなどから発信される一般向けの速報だ。こちらはエリアごとに発信されるため、詳細な情報を得る事はできず、実際に何かアクションを起こす事は難しいと言わざるをえない。2つ目は高度利用者向けの速報である。一般向けの速報とは異なり、その場所に対しての震度、揺れの到達時間など詳細な情報を得ることができる。また、放送で呼びかけることや自動的に設備運動をかけることができ、命・生産設備・施設を守ることにもつながる。

 同社の提供する「Ai-SYSTEM」は、ボーリング資料で地下の構造を調べたり、過去の地形図や空中写真から地形条件を判読したりと、その場所ピンポイントの地盤条件を専門家が調べ、震度予想の精度向上を図っている。「ここまでやっている会社はなかなかないのではないか」と小穴氏は自信を伺わせた。愛知工業大学の研究者と共同で開発を行ない、精度向上を図っているのも特徴の一つである。「安否確認・連絡アプリ等が防災情報と連動するようになれば、より強固な防災ソリューションになるはずだ」と外部との提携を模索中であると話した。

「現在は自動車業をはじめとする製造業・学校等がメインの顧客であるが、今後は食品メーカーや物流センター・医療機関などにも展開していきたい。防災ソリューションの活用はまだまだこれからである」と意欲的に語った。

「Ai-SYSTEM」では地盤条件を調査し、高精度な予想震度を提供する

 7分のプレゼンののち、審査員による質疑応答の時間が始まった。

「予想震度の精度が向上する事によってどれくらいのインパクトがあるのか」という牧野氏の質問に対し、「震度の大きさで災害のインパクトは大きく変わってくる」と小穴氏。「緊急地震速報を鳴らす震度を任意で設定できる。利用者によって必要な設定は変わってくるので、コンサルティングした上で設定していきたい」と語った。

「競合はあるか。それともオンリーワンなのか」という残間氏の質問には「(高度利用者向情報に関しては)競合は沢山あるが、コンサルティング、地盤条件の解析には専門的な知識が必要である。代理店を通さないので細かなコンサルティングができるのは当社が優位な点」と直販ならではの強みをアピールした。


エアコンの意識改革を図るGF技研
新しい空調システムでGreat resetを

 次の登壇者は、株式会社GF技研 代表取締役 梅津健児氏。リモートでプレゼンを行った。

 「エアコンとは本来、健康と安全に貢献する機器だった」と梅津氏。しかし現在は3つの大きな課題が見受けられる。使用電力の増加に伴い地球温暖化の要因の1つになってしまっている点、コロナ禍の現在窓を閉め切っての使用で感染症の伝搬につながってしまう点、使用する度に大量のフロンが排出されてしまうという点だ。「これらによってまだ見ぬ将来、大きな災害が予見される」と梅津氏は警鐘を鳴らす。

 現在世界中では、室内機と室外機が分離している「分離型」のスプリットエアコンが使用されている。しかし「分離式」のままだと上記3つの課題が徐々に悪化していってしまう。今こそ新しい方式のエアコンが必要だと考える中で、「約50年前に使用されていた「一体型」のエアコンがヒントとなった」と梅津氏は語った。

 風を流すだけで冷やす事ができる熱交換器、「IDEC」の実用化に取り組んだ。さらに「IDEC」を使用して従来のエアコンと同じくらいの性能を出すために、世界初のハイブリット冷却システムを開発。このシステムを採用すれば、使用電力は半分にまで抑えることができ、換気をしても電力の消費量は増えず、冷媒が漏れることがないと、さまざまな効果が期待される。

 従来エアコンといえば冷暖房のことを示していたが、「本当の意味でエアーコンディショニングを目指す。空気の品質を変え、換気を行うためには新しいシステムが必要だ。現在のエアコンを減らし、新しい空調システム「FFA(フレッシュ・フリー・エアコン)」に置き換えていくことが目標」と熱意を持って語った。

新しい方式のエアコンが必要であると語る梅津氏

 牧野氏からの「従来のエアコンと比べて価格はどうなるか?」という質問に対し、「同じような量産規模ならば、従来かかっていた費用よりも2~3割安くなると計算している。電気代が半分になり、換気機能がついていることによってコストダウンが可能。生涯の費用としては安くなり、詳細に関しては現在検証中」と答えた。

 田中氏から「電力が1/2となり、自然エネルギーを使用するという視点は大賛成。一方、グローバルで展開させるとなると製造エネルギーが拡大する。全世界にとってそれは良いことなのか。どのような思想を持っているのか聞きたい」と質問があった。「エアコンは今のままでいいというのが一般的な考えであり、皆改革をしないといけないとは思っていないだろう。全世界に広めるためには、まずそのマインドをGreat Resetすることが必要。徐々に新しいシステムに置き換えていけば初期のエネルギー投資も、ランニングコストも少なくなる。トータルで、最終的なGreat Resetができる。」と持論を語った。


避難所の情報を簡単に提供
「混雑ランプ」はコロナ禍でも活用

 次に登壇したのは株式会社ロコガイド シニアディレクター 石井 一弘氏。避難情報の発信について語った。

 石井氏は前職で障害のある方の支援をしていた際に自然災害を経験。障害者の方にうまく情報が届かないという課題を痛感し、「その人に合う形で情報を届けたい」と考えた。

 そんな経験から生まれた「混雑ランプ」はこのコロナ禍で始まったサービスだ。混雑状況の判断を担当者が手動入力することが大きな特徴であり、各所の混雑情報を気軽に発信することができる。現在も市役所の窓口や、レジャー施設でも活用が行われている。緊急事態宣言発令の際にも、都知事の会見で紹介された。

 同社はこの「混雑ランプ」を活用し、避難所の情報・避難経路・備蓄情報・混雑情報など、シンプルかつ簡単に発信ができるサービスを開発。「コロナ禍で密が発生したため、避難場のたらいまわしが起きた。それらを避けるためにも情報の発信が必要」と石井氏は話す。ジェンダーや高齢者の方など多様化する避難者にも対応していく。「避難して終わりではなく、滞在サービスや避難所へ行くまでの経路も重要。避難所発発信インフラとしてサービスを提供していきたい」と語った。

 サービスの大きな特徴としては3点あげられる。1つ目は「緊急時だからこそシンプルでわかりやすく」だ。また、自治体のサーバーがダウンしてしまっても、セカンドサーバーとして利用できるのも大きな利点である。2つ目は「自治体との連携」。自治体の情報発信をサポートしていく役割を持つ。3つ目はさまざまな企業とのアライアンスだ。

 情報を発信したとしても見てもらえないという事は大きな課題であり、特に災害時においては命に係わる問題である。石井氏は「能動的な行動を増やすためにも、インセンティブを付与した情報発信を行なっていく」と話した。

緊急時だからこそシンプルに。自治体公式HPのサーバーダウン時でもセカンドサーバーとして利用できる

 「スマホやパソコンにアクセスできない人へのケアは?」と田中氏から質問が挙がる。「誰に届いているのか、いないのかの確認が重要。タブレット等を配布している自治体もあるので連携していく。誰に情報が届いていないのかはこちらでチェックもできるので、しっかり情報が届くサービスを展開していきたい」と石井氏は答えた。

 牧野氏の「障がい者の方にどう情報を届けるのか少し分からなかった」という指摘に対し、石井氏は「目が見えない方へは、音声読み上げソフトと連携。耳が聞こえない方へは振動でのアラート等で対策をとっている。しかしまだ不十分なので、今後サービスを考えていきたい」と回答した。


災害備蓄シェアリングエコノミー
「あんしんストック」で備蓄の課題を解決

 次に株式会社Laspy 代表取締役社長 藪原拓人氏がリモートで登壇。

大災害の発生時に、3日間の備蓄が備えてあるインフラを作っていくことを目標としている。「身近に備蓄の備えがあれば、大災害発生時におけるさまざまな心配事がなくなる。どこのコミュニティーへ行っても安心だという社会を作りたい」と藪原氏は話す。

 法人・自治体向けには、備蓄管理業務を行うBPOを行なっている。備蓄は「あったら良いもの」ではなく、「東京都帰宅困難者対策条例」にも定められている「必要なもの」であり、企業の社会的責任の観点から見ても重要である。ただし災害備蓄品の保管は、スペースや重量により企業の負担が大きくかかり、都心部での管理は困難を極める。そういった悩みを解決するのが、「あんしんストック」災害備蓄シェアリングエコノミーである。同社がプラットフォーマーとしての役割を果たし、保管・管理・提供まで一元化してシステム管理を行なっていく。

 また、藪原氏は「各企業や個人で備蓄品の管理をおこなうのは、社会全体で見たら非効率」とも話し、街の中に備蓄プラットフォームを構築し、ディベロッパーやゼネコンと行う「街づくり」への意欲を見せた。「新しい街には大きめの備蓄庫が備わり、共益費から勝手に運用されている世界を創りたい。最終的には建物→エリアへと進化させ、備蓄のシステムを構築していく」と、備蓄をインフラとして整備していくことを目指す。「災害備蓄を持つことが出来なかった原因にフォーカスして、ソリューションを提供していく」と語った。

「身近に備蓄があることで、災害時のさまざまな問題が解決する」と藪原氏

 「備蓄のシェアリングは多くのスタートアップが挑戦し失敗してきた事業だった」と田中氏は同社の取り組みを絶賛。次いで「備蓄するアイテムの整備が今後重要になる。どのようなケアを行なっているか」と質問をした。藪原氏は「多様性に対応していくのは重要。ハラール・アレルギー対応食品にも対応しており、安く仕入れができるノウハウを構築している」と自信を覗かせた。

 牧野氏は田中氏の発言に触れ、「(多くのスタートアップが挑戦し失敗した事業だが)どういった所に着目したのか」と問うと、「備蓄は自分ではできないのだということに気が付いた。(さまざまな災害も)ひと時過ぎてしまうと忘れてしまうのならば、仕組みで解決しないといけないと考えた。また、大企業になればなるほど、管理をアウトソースしたいニーズが強い」と藪原氏は自らの着目点を話した。


「違和感検知AIアジラ」で
犯罪や事故を未然に防ぐ世界へ

 続いて、株式会社アジラ IVA事業部プロダクト統括マネージャー 山下勝也氏が登壇。

 最近は電車内での無差別殺傷事件など、予期せぬ状況での事件が増えてきている。「これも災害の一種である」と山下氏は感じている。同社は「犯罪や事故を事前に未然に防ぐ世界」をビジョンに置き、事業を展開。そんな中で、2022年1月に「違和感検知AIアジラ」のリリースを予定している。

「違和感検知AIアジラ」は防犯カメラに映った人間の骨格をAIで認識し、数日間で通常の行動を記録し学習させていく。そこから逸脱した行動が合った場合は「違和感」として感知し、さらに「異常行動」(喧嘩、暴力行為等)に分類しアラートを出す仕組みだ。「違和感検知AIアジラ」を利用して効率的な警備や安全な空間価値の向上を図る。

 大型のショッピングモールやオフィスビルなど、既存のカメラに対してアドオンでき導入が容易であることも特徴の1つだ。カメラは1台~最大80台まで一台のサーバーで処理が可能である。

 現在の課題として「レコグニションセキュリティ(検知)してからでは未然に防げない」と山下氏。「今後はデータを蓄積していくことによって、リアクティブセキュリティ(再発防止)、プロアクティブセキュリティ(予測して防止する)を目指していきたい」と今後の展望を語った。

「違和感」を検知し、「異常行動」に分類される。デモ映像が発表された

 「骨格を検知する精度は?技術的な優位性も教えて欲しい」と残間氏。「検知率は9割程度。自律学習にパテンドをもっているおり、コア技術を自社開発し処理を軽くしている。一棟まるまる一台のサーバーで処理できるのが強み」と話した。

 田中氏からの「行動→反応→介入のフローの中でタイムラグが発生するのでは?システムを使用する事によってピュアプレッシャーが低くなるのでは?」との指摘には「違和感を検知できるのが一番のポイントである。警官は怪しい人物の行動がなんとなく分かるといわれており、そこをAIで置き換えるのがプロダクトのコンセプト。データを蓄積し、未然に防いでいきたい」と強調した。


点検業務の点検を生かす
「災害インフラ監視システム」

 最後にオングリットホールディングス株式会社 代表取締役 森川春奈氏がリモートで登壇。

「災害対策において、初動対応が重要だと認識している人間は多いが、状況把握には時間がかかりスムーズに行なえていないのが現状だ」と森川氏は話す。そこで同社はAIを活用した「災害インフラ監視システム」を提案し、初動対応への供えを促した。

 市保有の車両バスやタクシーにカメラを搭載。AIを活用して、道路や道路付属物への損傷の早期発見を目指す。人間の目で判断するのは情報量が多いため時間がかかるが、AIであればスクリーニングを行ないながら対象物とマップをリンクさせ、スムーズに調査することが可能である。車載カメラで取得したデータはサーバーへ送られ、AIが判断して管理者に通知。これによって情報確認にかけていた時間の短縮・スムーズな対応が可能となるのだ。

 また、危険度の判別も可能で、これまでは健全な建造物にも点検を行っていたが、このシステムを利用すれば本当に点検が必要なもののみ行うことができ、点検コストの削減にもつながる。

 同社はインフラ構造物の点検業務をおこなっている。森川氏は「最近、道路標識やガードレールなど、小さなインフラの老朽化が深刻化している」とも冒頭に話し、「初動の対応が早くなることで助けられる命もある。普段の点検業務を生かして災害対策をおこなっていきたい」と語った。

車両にカメラを搭載し、AIを活用して撮影した写真から道路及び道路付属物の損傷などを早期発見するためのシステム

 残間氏は「AIでどう老朽化をはかるのか?精度は?」と質問。森川氏は「錆や外から見て判断できる損傷を診断する事が可能。ロボットを活用すれば内部の損傷も判断できる」と、最初はから見て判断できる部分から話した。牧野氏からの「災害があったときにこのシステムを見ていくのか?どういったシーンで使用されるのか」と質問が挙がる。「普段市の車やバスに搭載しておいて、災害が起こった時に役立てるシステム」と、災害が起こった際に正確にものごとを判断する為の「備え」であると強調した。


 以上で6社のプレゼンが終了。イベントの最後に、審査員より受賞者の発表が行われた。

 ガチ鈴木氏は審査結果の発表の前に「登壇者それぞれ、素晴らしいソリューションの発表だった。本当ならば皆に賞を与えたい」と前置きをしたうえで、「地域イノベーション賞」、「防災テック賞」、「最優秀賞」と、3つの賞の発表を行った。

 まず「地域イノベーション賞」はオングリットホールディングス株式会社が受賞。審査員の山田氏は「表層に出てくる課題を解決するだけでなく、点検を効率化する事で経済的にも環境的にも人間的にも解決するというトリプルボトムラインを考慮している。持続可能であり関係構築もとても素晴らしい」とコメントした。

 「防災テック賞」は株式会社アジラ。審査員の牧野氏は「事故を未然に防ぐことには大きなニーズがある」と称賛した。

会場から参加していた山下氏には、実際にパネルが手渡しされた

 栄えある「最優秀賞」は、株式会社Laspyに贈られた。

 授賞理由として残間氏は「皆が感じていた課題を新たな観点から深く掘り下げている。イノベーション的な発想をして実現していくことは非常に大変だが既に取り組みも始めている。これから、誰もが出来ないと思っている事を実現して欲しい」と今後への期待を込めて話した。

「最優秀賞」は株式会社Laspy。リモートでの参加の為、パネルが掲げられた。

 以上でプロダクトピッチは終了。「最優秀賞」を受賞した株式会社Laspyには副賞として、代表インタビュー記事を掲載する。

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