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第45回NEDOピッチ「デジタルコンテンツ ver.」レポート

技術の進歩が生む新領域「メタバース」への潮流

2022年03月25日 12時00分更新

 日本はコンテンツ大国であると言われて久しい。たしかにアニメや漫画、ビデオゲームなどのエンターテインメント分野では確かに世界をリードしていると言っても過言ではない位置にいる。しかし現実的には映画もゲームも中国や米国の企業が市場を席巻しており、それらの流通プラットフォームを含めて日本は本来持っているポテンシャルを活かしきれていない。

 さらにここにきてデジタルコンテンツの世界で注目を集めているのがメタバースだ。FacebookがMETAに社名を変更したことでもわかるとおり世界中の企業が注目している分野であり、VRヘッドセットなどのハードウェアを含めて欧米ではすでに数多くの企業が参入を進めている。しかしここでも日本企業は出遅れ感が否めない。

 2021年12月7日に開催された第45回NEDOピッチでは、デジタルコンテンツver.と題して、メタバースを中心に新たな視点からデジタルコンテンツビジネスに挑むスタートアップ5社が集まった。世界最先端のコンテンツ産業の動向が垣間見えるピッチイベントの様子を紹介する。

メタバースを産み出す技術要素

 5社のスタートアップからのピッチに先立ち、株式会社角川アスキー総合研究所 主席研究員の遠藤諭氏が、最近盛り上がりを見せているデジタルコンテンツ分野の構成要素をサマライズした。

株式会社角川アスキー総合研究所 主席研究員 遠藤 諭氏

 インターネットの登場以降、2000年くらいから低消費電力・高性能CPUが登場するに併せてスマホ、および各種センサーやIoT技術が発達してきて、それがデジタルツイン・ミラーワールドと呼ばれるメタバースへと進化しようとしている。それらはクラウドコンピューティングの普及やAI・ブロックチェーン技術の登場、あるいはVR/MR/ARデバイス・アプリが一般店舗でも販売されるという環境変化によって玉突き的に発生してきた。

 この動きはデバイス、ソフトウェア、インフラ、サービスの4つの方向から来ている。デバイスは量販店でも入手可能になったヘッドセットやスマホに搭載されたセンサーによる空間認識機能の向上が非常に重要なポイントとなっている。ソフトウェアでは3Dアプリ開発プラットフォームが進化するとともに、2D画像から3D画像を生成する技術が生まれた。リアルワールドをそのままデジタル化することが可能になってきたといえる。

 インフラ分野では現実にあるものや情報のコピーをデジタル空間に生成するデジタルツインや、それを都市や世界全体に拡大したミラーワールドといった概念が現実化しつつある。例えば国土交通省による都市の3D化プロジェクト「Project PLATEAU」などが挙げられる。これらは単なる3Dデータではなく、コンピューターと人間が空間を共有する通信的なインフラと見做すことができる。

 既にVR Chatやメタバースプラットフォームcluster、METAのVR空間コラボツールHorizon Workroomsなど、メタバース技術を用いたサービスが登場してきている。これらによって社会的な受容性が高まってきていることも近い将来におけるメタバース市場の発展を期待させる。エンタメだけではない、次のフェーズのデジタルコンテンツビジネスは、すでに始まりつつある。

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