16:9ではなく、縦方向が大きめのディスプレイを採用
多くのノートPCが映像メディアに合わせた16:9のディスプレイへと移行する中、最後まで4:3のディスプレイを採用し続けていたレッツノート。その後、ワイド画面へと移行した後でも、16:10のように縦方向が長めとなるディスプレイを採用することが多かった。
「縦方向に長くしているのは、ビジネス系文書の見やすさ、表計算での表示領域の広さといった部分を重視しているためです。12.1型モデルでいえば、2009年のCF-W8までは4:3だったのですが、CF-S8へと切り替わるタイミングで、16:10のワイド画面へと移行しています」(白神氏)
LVシリーズでは16:9が採用されるといった例外もあるが、多くの機種は16:10以上の比率で縦長となっている。
3:2画面の採用は、2017年発売のXZシリーズから。その後、QVシリーズで3:2比率のディスプレイが採用されている。14型モデルとしては、FVシリーズが初の3:2ディスプレイ採用モデルだ。
「今までの14型モデルは、腰を据えて使う大型モデルという位置づけだったのですが、FVシリーズは狭額縁デザインとすることで小型化を目指しました。これなら、モバイル用途でも使えますから、作業視認性の高い3:2ディスプレイを採用することにしました。最終的に、14型モデルながらアスペクト比16:9の13.3型クラスの横幅サイズ、LVシリーズと比べ体積で約28%もコンパクトになっています」(白神氏)
縦長のディスプレイを採用したことのメリットは、表示領域が広くなることだけに留まらない。本体の縦方向に余裕ができたため、パームレスト部を広く取れ、ホイールパッドも大型化できるようになったのだ。
FVの狭額縁デザインについても、少し触れておこう。
本体写真を見てもらうと分かるのだが、とくに左右がかなり細くなっている。間を詰めるとそれだけ液晶までの距離が短くなり、衝突に弱くなってしまう。そのため、狭額縁化しながら頑丈性を確保するのは、かなり苦労があったのだという。それでも、この狭額縁化によって本体サイズを小さくでき、そのぶん重量を軽くできたというのが大きな収穫だ。
狭額縁と言っているが左右に比べ上下、とくに上部のベゼルはあまり詰められていない。この理由は明快で、カメラやマイク、そしてWi-FiやワイヤレスWAN用のアンテナを画面上部に装備するためだ。
「他社のモデルですと、アンテナ性能を犠牲にして上下も狭額縁化するか、そもそもワイヤレスWANのアンテナを搭載しない(ワイヤレスWANモデルをラインナップしない)となりがちです。FVシリーズではWi-FiもワイヤレスWANも繋がりやすく、途切れにくくするため、アンテナ性能に影響しないギリギリのサイズを確保することにしました。そのため、現時点では左右のみ狭額縁となっています」(田中氏)
Wi-FiやワイヤレスWANの繋がりやすさというのは実際に使わなければわからない、スペックからは読み取れない部分。ある意味、ホイールパッドの使い勝手と似た話だろう。
こうした部分もしっかりと考慮し、手を抜かない姿勢が、レッツノートの信頼につながっている。
誤入力を低減させる独自形状「リーフ型キーボード」
レッツノートは小さい本体でも打ちやすいキーボードを実現するため、隣接するキー同士の間隔は、横19mmを確保※。通常のモバイルパソコンと比較し、キーボードエリアを広く確保しているため、ミスタッチを減らすことができる。更に「リーフ型キーボード」の採用だ。
※一部キーを除く。
これは2010年のCF-J9から採用されたもの。ホームポジションから指を動かすとき、キーの角に指が引っ掛かると、誤入力の原因になってしまう。これを低減するため、角を丸くしているというのが特徴だ。
これによって本当に誤入力率が減るのか──実際にデータをとってみたところ、約10%ほど低減しているのが確認できたという。
「指が通るところのRを大きくしたら打ちやすくなるのではないか、というアイディアを実現したのが、リーフ型キーボードです。毎日何万字もキーボードを打っている人達に協力してもらい、通常のキーボードと打ち比べてもらいました。その結果、明らかに指の引っ掛かりが減り、誤入力が低減していることが確認できました」(田中氏)
もうひとつ、キーボードでこだわっているのが、2mmというストロークだ。最近ではPCの薄型化が顕著で、それに伴いストロークの浅いキーボードも増えてきている。
「ストロークが浅くなると底打ち感が強くなり、疲れやすく感じてしまう人もいます。こういったユーザーの声が多く届いていることもあり、レッツノートでは心地よく打鍵できる2mmストロークにこだわっています。もちろん、ストロークが深くなると本体が分厚くなってしまうという点で不利ですが、そこは使い勝手の面を重視しています」(田中氏)
最近のノートPCは、キーボードへのこだわりがある機種も多く、各社が打鍵感を競っている状況だ。先のストロークもそうだし、キーキャップの形状についても多くのものがある。とはいえトレンドもあり、その代表的なものが、キーが1つずつ独立しているアイソレーションキーボードとなる。
これは、キーとキーの間隔が広がるため誤入力しにくい、隙間が埋められているためゴミが入りにくい、キーボードの剛性を高めやすいといったメリットがある方式だ。今ではほとんどのノートPCがこの方式を採用しているといっても過言ではないだろう。
しかしレッツノートの多くは、以前からのキーが隣接するキーボードを採用し続けている。これは、アイソレーションキーボードでは、どうしてもキーが小さくなってしまい、打ちにくく感じてしまうからだという。安易にトレンドに流されず、使いやすさを第一に考えているという部分に感心してしまった。
といっても、アイソレーションキーボードを採用しているモデルもある。
「QVのような2in1モデルでは、アイソレーションキーボードを採用しています。これは、画面を180度回転してタブレット型にすると、手で持ったときにキーの隙間に指が入り込み、キーキャップが外れてしまう、ということがあるからです。ただ、少しでもキーを大きくする工夫や、リーフ型を採用するといったあたりは、他のレッツノートのキーボードと同じです」(田中氏)
キーボードを見ていて気付くのが、Fnキーが左右どちらにも用意してあること。これは、レッツノートは必ずしも机に置いて使うだけではなく、椅子に座りながら膝の上に置いて、電車に揺られながら、立ったまま、歩きながらなど、様々なシーンで使われることを想定しているためだ。
こういった、一般的ではない使い方をする場合、Fnキーがどちらか一方にしかないと、わざわざ持ち替えたり、一旦床にPCを置いて操作することが必要になる。その手間を省き、素早く操作できるように用意しているとの話だった。最近では使う機会は減っているが、片手で「Ctrl + Alt + Del」キーが押せるよう、「Fn + Backspace」に機能が割り当てられているというのも、その名残だ。
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