「LINKLET」は、ハンズフリーでZoomやMicrosoft Termsによるビデオ配信ができる首かけ型のLET搭載ウェアラブルデバイス。メガネ型やヘッドマウント型のように目や耳を覆わないため、違和感や動きの制限がなく、どこでもネットにつながる。作業者の遠隔サポート、ものづくりのオンライン講座、観光ガイドなどコミュニケーションに便利だ。
コロナ禍の状況下、このありそうでなかったこのデバイスを開発したのは、音声AIスタートアップのフェアリーデバイセズ株式会社。世界での注目を集めるCES 2022 Innovation Awardsでは日本企業で唯一「Wearable Technologies」、「Streaming」、「Digital Imaging/Photography」の3部門を同時受賞している。フェアリーデバイセズ株式会社 代表取締役CEO/CTOの藤野 真人氏、取締役CSOの竹崎 雄一郎氏にLINKLET開発の背景、その先にある目的を伺った。
フェアリーデバイセズは、2007年創業のAIスタートアップ。2012年からディープラーニングを活用した音声認識AIの研究開発に取り組み、2017年からはAIの学習データを集めるためにハードウェア開発も手掛けている。
「スマートスピーカーのような据え置き型だけでなく、動き回れるものがほしい」という現場の声に応えて開発されたのが同社のコネクテッドワーカーソリューション「THINKLET」だった。
THINKLETはAIを搭載し、現場作業の音声・画像データをクラウドに収集・学習、遠隔支援や作業の効率化を目的としたデバイス。作業の自動化、ナビゲーションといったAIによる効率化には、分析に適切なデータが欠かせない。現場DXのためにAIが必要とするデータを効率的に蓄積することを目的に、ハードウェアから設計された。先進的な企業で採用が多いという。
だが、本格的な作業支援AIの構築はまだ先と考えている企業であっても、その第一歩となる声と映像による遠隔支援のニーズは高い。そこでTHIKLETの遠隔作業支援の機能だけを切り出して手軽に使えるUXにしたのがLINKLETだ。
ワンクリック登録だけで、簡単にZoomやMicrosoft Teamsとつながり、ビデオ会議や作業の配信などに利用できる。コロナ禍でリモートの便利さを誰もが知ることになった現状、一般の事業者はもちろん、講師・配信者といったプロシューマー(生産消費者)向けにLINKLETで簡単に使える遠隔支援デバイスをまず世の中に普及させDXを加速させるのが本来の狙いだ。
「AI事業は適切なデータがないと始まりません。遠隔支援という便利なツールを広く使ってもらうことで、自然にデータがたまる状態にしていく。デバイスとプラットフォームが普及すれば、あとからデータを抽出するのは楽ですから」と藤野代表。
すでにエンタープライズ向けのTHIKLETは世界13カ国で導入・PoCの実績があり、量産体制が整っていることから、2022年にはLINKLETの一般販売が開始される見込みだという。
LINKLETは、いわば画面がない首掛け型のAndroidスマートフォンだ。コンセプトは、ハンズフリーで人間の視界に近い形で見ているものが見え、聞こえているものが聞きとれること。
基板設計から自社開発し、背面部分にスマホ基板やバッテリーとスピーカー、アームにマイク、先端に4Kの広角カメラを搭載している。取材で実機を試させてもらったところ、重さは約160gと軽量で肩になじみ、着けていることを忘れてしまいそうだ。
頭部や首ではなく、肩にかけているため、うなずくなど上下左右に顔を動かしても首元はほとんど動かないので、映像の揺れが少なく見ている側も快適だ。落下やズレ防止のために首の前をつないで固定するストラップや、首の後ろで固定できるマジックテープなどのオプションも用意されている。
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