週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

【連載】見える人(晴眼者)と、見えない・見えにくい人の絆

 日本テレビ系で毎週水曜よる10時から放送中の「恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~」は、弱視の高校生が主人公のドラマです。その舞台に横浜市立盲特別支援学校が使われています。本校は、およそ130年の歴史ある学校です。視覚に障害のある幼児児童生徒への教育活動を行なっています。

 まったく見えない全盲の人と、見えにくいロービジョンといわれる弱視の人がいますが、本校では在学者の多くが弱視です。この弱視について、本校公認キャラクター「しもん」と、弱視の職員で「みゆき」と「まちこ」の3人が弱視あるあるについて話をしていきます。

 ドラマの放送と同様に、残すところあと2回となりました。第9回は、「パラリンピックのスポーツ以外にもあります! 視覚障害者スポーツ!についてです。」

もしもお目めに合いましたら、読んでみてください。

 前回の記事はこちら
【連載】事前準備が肝心かなめ! 楽しくお出かけ♪

※過去の連載記事はこちら:「恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜」ロケ地・横浜市立盲特別支援学校より弱視あるある

しもん:見えにくくなると運動不足になりがちだよね。

みゆき:中途で見えなくなって盲学校に入学した人が、「スポーツはあきらめた」って言葉を聞くたびに泣きそうになる。

まちこ:スポーツすることをあきらめないで欲しいね。

しもん:今年は東京2020パラリンピックが日本で開催され、知らない障害者スポーツもたくさんあったと思ったなー。

みゆき:うちの学校からも聖火リレーに選ばれて走る予定だった生徒さんがいるよね。

まちこ:実際にはコロナの3密防止で走れなかったけど、トーチを学校にいただきました。

東京2020パラリンピックトーチ

しもん:ドラマの空ちゃん(主人公・ユキコの友達:田辺桃子)もマラソンしてるよね。

みゆき:「絆」っていうロープを持って走るんだけど、伴走者と走者の息を合わせるのが難しいんだよね。

まちこ:「絆」は、介助者のひじを持って歩く「手引き」と違って、ひじから情報が伝わってくるわけじゃないから、息をピッタリ合わせてもらえたら、本当に一人で走っている気分になれる。

しもん:見えなくなってもそんな感覚で走れるのはすてきだね。盲学校でも走っている人いるの?

まちこ:学校の周りを走っているよ。坂ばっかりできついんだけど。

みゆき:視覚障害者はマラソン人口多いよね。

しもん:東京パラリンピックでマラソン走っている人見たよ。

みゆき:そうそう、女子で金メダルとったり、56歳でメダルとったりしてたよね。

まちこ:男子も、銅メダルとったんだよ。

しもん:盲学校も大会なんかあるのかな?

みゆき:普通に市民マラソン大会に出たりしてるよね。

まちこ:そうそう、チームで練習して駅伝大会にも出るよ。

しもん:伴走してくれる人そんなにいるの。

まちこ:たくさんいるけど、もっと増えて欲しいな。

ジョギングやマラソンをする際、「絆(きずな)」というロープを持って、伴走者と走者の腕の振りを合わせて走ります

しもん:生まれつき弱視のみゆきは何かスポーツはしてたの?

みゆき:中学の時バレーボール部だった。

まちこ:どうしてバレーボール部を選んだの?

みゆき:バスケットボールは大きいけど、体育館の色に同化するから除外。

しもん:確かに

みゆき:テニスと卓球はボールが小さいから見えない。

まちこ:そうだね。

みゆき:そのころやっていた「アタックNo.1」のアニメが好きだったから、バレーボール部に決定。

しもん:チャレンジャーだね。

みゆき:でもアタックを打てたことがなくて、悔しかったな。

まちこ:片目で距離感ないのに空中に浮いたボールをジャンプして打つのは至難の業だね。

みゆき:だけどみんなが協力してくれたからいい思い出だよ。

しもん:ところで、うちにも部活があるよね。

まちこ:そうなの。それではまだパラリンピックの種目に入っていないけれど、うちの盲学校で部活がある2つのスポーツをご紹介します。

しもん:ひとつめはフロアバレーボール。

みゆき:盲学校に入学して、フロアバレーボールに出合えて初めて、アタックを打つことができたよ(感動)。

まちこ:床を転がすからボールを目で追えるし、転がる音を聞くことができるね。

みゆき:床からネットまでの高さは30cm。

しもん:ネットの下を転がすスポーツなんだよね。

みゆき:前衛3人、後衛3人の6人制。

まちこ:前衛はアイマスクをして、音と声を頼りに動く。

しもん:後衛はボールと前衛の位置を考えながら指示を出し、動く。

まちこ:バレーボールをボウリングを投げるようなフォームでアタックします。

みゆき:目の見える人たちも、前衛ではアイマスクをして一緒に楽しんでいます。

しもん:ちなみに横浜市立盲特別支援学校はフロアバレーボール発祥の地です!!

130周年記念 「フロアバレーボール発祥の地・横浜」モニュメント

フロアバレーボールの様子

しもん:ふたつ目はサウンドテーブルテニス。

みゆき:鉄の小さな球が4つ入った音のするピンポン球を使って、卓球台の上を転がします。

まちこ:ラケットはラバーが貼られていない板を使い、音が出るようにします。

しもん:卓球台の縁が少し高くなっていて、ピンポン球が落ちないようになっているんだ。

みゆき:スマッシュして相手のコートの縁の壁に当てて、ピンポン球が台から落ちなかったらポイント。

まちこ:強く打ちすぎたり、横にそれるとピンポン球が落ちてしまうので失点。

しもん:アイマスクをすれば誰でも楽しめるスポーツ。

サウンドテーブルテニスの様子

みゆき:障害者スポーツはどれも晴眼者と協力し合って絆が深まるものばかりです。

まちこ:障害者スポーツをもっともっとみんなに知ってほしいね。

 まだまだ3人、いやっ2人と1羽の話は続きます。

 次回も読んでいただけたらうれしいです。

 もしも、お目めに合いましたら。

「恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~」

 日本テレビ系で毎週水曜夜10時から放送中。

 勝ち気だけど恋には臆病な盲学校の女の子・赤座ユキコ役の杉咲 花さんと、喧嘩上等だけど根は純粋なヤンキー・黒川森生役の杉野遥亮さんによる新世代ラブコメディー!

文/横浜市立盲特別支援学校専攻科
「みゆき」と「まちこ」のイラスト/関口 千秋
「しもん」のイラスト/横浜市立盲特別支援学校

プロフィール
しもん:横浜市立盲特別支援学校、略して市盲が名前の由来。校章の幸福の青い鳥がご先祖様。公認キャラクター就任1年目。
まちこ:13歳で網膜色素変性症(色変)と診断。徐々に視野狭窄が進行。黒猫をめでながらお酒を飲むのが大好き。
みゆき:生まれつき弱視。右目は緑内障で13歳の時失明。ハンドミルでコーヒーを入れてその香りと共にチョコレートを楽しむのが習慣。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事