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画面UIの意匠権取得での狙いやメリットとは

アプリなどのGUIそのものも保護対象に 法改正後の「画像意匠」の動向紹介(使いどころ、影響)

2021年12月15日 09時00分更新

意匠登録の狙いとメリットについて

 以上のような形で、画面UIの意匠権取得をすると、どのような狙いやメリットが得られるのか、考察します。

(1)プロダクトにおける画面UIについて、ユーザに対して訴求力のある特徴がある場合に、競合他社の模倣を抑止し、適切な保護を図ることが可能

 SaaSのようなWebサービスを提供するにあたり、サービスを提供する企業では、ユーザにとって使い勝手の良いインターフェースを提供するため、ユーザフレンドリーな画面デザインを創作している現状があります。企業では、このような画面デザインの創作に多額の資金を投下して、よりよい画面デザイン開発が行われています。このような画面デザインに対して、競合他社の模倣を防止し、適切な保護を得ることを狙っていると考えます。

 例えば、前出の「食べログ」のスマートフォンアプリのUIや、「DELISH KITCHEN」のレシピ動画を選択するUIの場合、画面上の構成要素の配置を異なるものにすることも可能ではあると思います。しかし、取得した意匠権のような画面配置の構成にすることで、ユーザフレンドリーな画面デザインを(他社の模倣を防止して)独占的に提供することを可能にし、顧客優位性を得ることを狙っているものと考えます。

 また、例えば、前出の「経路誘導用画像」の意匠のような分野において、より視認性の高い色彩等の意匠を創作した場合、そのようなデザインを(他社の模倣を防止して)独占的に提供することを可能にし、顧客優位性を得ることを狙っているものと考えます。

(2)特許権と組み合わせることで、技術に対する権利保護を補完して画面UIの独占実施権を取得し、競合他社の模倣を抑止し、適切な保護を図ることが可能

 新たなWebサービスを提供するにあたり、競合他社の模倣を防止するため、特許出願を検討することはよく行われています。このとき、同時に意匠登録出願も同時に進めることにより、Webサービスの技術的側面と、デザインの側面の両方について独占権を取得することを狙っていると考えます。また、例えば特許権取得のプロセスで特許権取得が困難になった場合、意匠権を取得することで、デザインの側面だけは独占権を取得することを狙っていると考えます。

 例えば、前出の株式会社TKCは、会計・税務・監査の情報システムについての特許権を13件取得しています。これらの特許権を補完する形で、画面UIについても独占権を取得することで、特徴的な画面UIの独占的な提供を可能にすることを狙っているものと考えます。

(3)アイコン用画像については、商標権と異なる形での権利化を図ることが可能

 今回取り上げたようなアイコン用画像は、商標登録をすることで、存続期間については半永久的に保護を図り、具体的には競合他社の模倣を防止することも可能です(今回取り上げた意匠権は25年)。ただし、商標登録をする場合、商品・役務(サービス)を指定する必要があり、保護を得る商品やサービスの対象が限定されます。そのため、特にイメージキャラクターのように、具体的な商品やサービスとの結びつきが明確ではない場合、画像意匠の意匠権を取得することで、用途を限定されずに各種商品やサービスに対して使用することが可能となる点で有効であると考えます。

今後の画面UIの意匠について

 最後に、今後の画面UIの意匠の動向について、考察します。

 現時点において、画像意匠を対象とした係争事例はありません。また、意匠登録出願は特許出願と比較すると出願件数も少なく、多くの企業が画像意匠を活用していると言えるような状態でもないと考えます。

 ただし、一度係争事例が出て、画像意匠の有効性が認識されるようになれば、今後一層の意匠登録出願がなされるものと予想します。

特許庁の知財とスタートアップに関するコミュニティサイト「IP BASE」(https://ipbase.go.jp/)では、必ず知るべき各種基礎知識やお得な制度情報などの各種情報を発信している

著者紹介:IPTech特許業務法人

2018年設立。IT系/スタートアップに特化した新しい特許事務所。(執筆:佐々木 雅之)

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