女性ボーカルが鮮明でアニソン再生にもよい
音の印象はオールBAのマルチドライバー機に似ていて、とても整ったサウンドである。ダイナミック型とのハイブリッドモデルにありがちな低域過多な感じは少ない。
帯域バランスはいわゆる日本人好みな音造りで、低域よりも中高域にポイントが置かれているようだ。中高域がキラキラとして鮮明であり、女性ポーカルが生き生きと楽しめる。声は明瞭感があり口元がよく見えるように鮮明だ。一方で低音域はタイトでパンチがあるが控えめである。
こうした作りこみのイヤホンは珍しくはないが、AK ZERO1が個性的なポイントは音の立体的な広がり方にあると感じた。細かな音が徐々にフェードアウトしたり、少しずつ重りあったりする様が見事で美しい。これは声の重なり合った部分でひときわ高く感じられた。
このあたりの特徴的な再現には、もしかすると平面型ドライバーが生かされているのではないだろうか。AK ZERO1においては中域のBAドライバーが主役で、ダイナミックドライバーがそれを支える伴走プレーヤー、そして平面型ドライバーが音のスパイスの隠し味といった役割を持っているように思える。
女性ボーカルと空間再現に強い点から、AK ZERO1の得意とするジャンルはアニソンやその周辺音楽だと思った。試聴していて特に感動した曲は志方あきこ「Turaida(神の庭)」だ。独自の言語を構築して自分の世界を構築するシンガーだが、ささやくように重なるハーモニーからさらにささやくようなメインボーカルがかぶっていく部分ではぞくっとした。こうした感性的な表現に長けているイヤフォンだと思う。
別売りの「AK PEP11 MMCX 4.4mm」をSE180のバランス駆動で使用すると、大きな音質の向上を感じた。PEP11は標準ケーブルと線材は同じであり、個性が変わることなくよりスケール感が上がり豊かな音楽になる。音が広がるタイプのイヤホンなのでバランスの効果が大きいと思う。差が大きいのでAK ZERO1には4.4mmバランスケーブルの使用をお勧めする。
AK ZERO1は音の帯域バランスから、Campfire Audioの「Andromeda」など高域に特徴があるイヤホンが好きな人も要チェックだと思う。またアニソンが好きな人には、好みの声優さんの声をより感動的に聴かせてくれる福音となるかもしれない。
個人的には平面型ドライバーをメタルケースに格納する設計手法に興味を感じた。SE180やSP2000Tで試行している金属ケースを用いた電気回路のアイソレーション(絶縁)手法を想起させるためだ。Astell & KernがDAP開発で長く培ってきたノウハウがイヤホン設計にも生かされているとしたら面白いと思う。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります