週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

村上恭一氏講演会「新規事業で未来社会を作る」&バーチャル展示会レポート

バーチャルな展示会場を回り、説明員と対話「XR Campus - イベント」に参加してみた

2021年12月14日 10時00分更新

 TISは2021年9月28、29日の2日間、TISのイノベーションハブ「TIS INTEC Group Innovation Hub(TIH)」にてオンラインイベント「新規事業で未来社会を作る」を開催。本イベントは、TISインキュベーションセンターで4半期に1度開催していたピッチイベントとXR事業の推進事業部のPoCをコラボした企画として実施し、1日目は新規事業に関する講演会と、TISの開発するバーチャルイベントアプリ「XRCampusイベント」のPoCを兼ねたバーチャルミニ展示会&ライブが開催された。

 第1部の講演会では、慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任教授 村上恭一氏による講演「Enablersが起業家を育てる」と、TISインキュベーションセンターセンター長の鈴木松雄氏による講演「新規事業について」講演を実施。

講演「Enablersが起業家を育てる」

 村上恭一氏による講演「Enablersが起業家を育てる」では、「なぜ新規事業の分野ではお金が溶けてしまうのか?」をメインテーマに、1)イノベーションと環境、2)コーポレートアクセラレーター、3)イントラプレナーの3つについて、新規事業を成功させるためのポイントを語った。

村上恭一氏。慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任教授/協創&競争サステナビリティ学会理事/価値創造フォーラム21顧問/知的資産活用センター 研究員。

 まず、イノベーションについて。1990年を境に、従来の工場型の社会からネットワーク型の社会に変わっていった。「管理」「分業」「戦略」という3つの経営概念は終わり、もはや方法論ではオープンイノベーションは実行できない。ネットワーク型の社会では、課金方法が変わり、知財への課金をしっかり設計する必要がある。

 イノベーションは、インベンション(発明)×コマーシャリゼーション(商業化) の両輪が必要であり、枯れた技術でもアイデア次第で画期的な商品は作れる。最先端技術の開発よりも、いかにコマーシャリゼーションするかを考えることが重要だ。ある程度、社会経験を積んだ人のほうが、これまでに築いた信頼やネットワーク(コマーシャリゼーション)を活用できる。であれば若手だけでなく、ミドルエイジの起業をもっと支援していくべきかもしれない。

 コーポレートアクセラレーターは、資源のある企業が社外のスタートアップを支援する行為だが、支援というよりも援助になりがちだ。多くのオープンイノベーションは、工場モデルのままで囲い込もうとするために失敗してしまう。オープンイノベーションでは、相互に助け合う関係の構築が必要。コーポレートアクセラレーターは、スタートアップのアイデアに評論するのではなく、コマーシャリゼーションの仕組み側になるとうまくいきやすい。

 アントレプレナーが本人のアイデアで事業を起こすのに対し、企業の既存資源を生かした事業をするのがイントラプレナー(社内起業家)だ。その好例として、村上氏が携わったANAのBLUE WINGプログラム(5名の社会人起業家が世界の社会課題を解決するための航空運賃を支援する仕組み)を紹介。社内起業家が生まれる風土を作るには、組織全体でのホリスティックなアプローチが必要だ。組織のあり方について詳しくは、村上恭一氏著「負圧の組織」(リクルートワークス研究所刊)で述べられているので参考にしてほしい。

講演「新規事業について」

 続いて、TISインキュベーションセンターセンター長の鈴木松雄氏による講演「新規事業について」では、インキュベーションセンターの紹介と、企業が新規事業を創出するための考え方について解説した。

 鈴木氏は、大手通信キャリアで新規事業開発・イノベーション体制の構築に携わったのち、2020年12月にTISに入社。現在TISインキュベーションセンターのセンター長として活動。

 インキュベーションセンターは、Be a Mover チーム(BAM)、コネクターチーム、CVC、DevOpsチーム、国内事業創出チーム、XRチームの全部で6つのチームがあり、オープンイノベーションや企業内の新規事業創出の支援に取り組んでいる。

 情報量はこの10年間で530倍に増え、情報発信スタイルはマスメディアからの一方通行ではなく、SNSなどで多様化した。事業開発もウォーターフォール型からアイデア先行型に変えていかなくてはいけない。また、企業都合による価値の提供ではなく、一般消費者から個別のニーズに応える形に変えていく必要がある。

 しかし経営陣は、市場開拓戦略への焦りや多角化戦略への不安があり、新規事業にはなかなか踏み切れない。そこで、デザイン思考で潜在的なニーズを定量化し、そのデータを示していかに経営陣を説得するかがポイントになる。新規事業を起こすには、ビジネスチャンスのある大きな潮流を探り、細分化した消費者に対応するため、「必要」ではなく「あったらいいな」というニーズを発掘することが大事、とアドバイスした。

バーチャルな展示会場を回り、説明員と対話できる「XR Campus - イベント」

 第2部では、TISの開発したXR技術を利用した新サービス「XR Campus - イベント」のPoCを兼ねたバーチャルミニ展示会を実施。実際に豊洲のTIS INTEC Group Innovation Hubでミニ展示会を開催し、参加者はバーチャルイベントアプリ(PoC版)を使用してリアルタイムで会場に入り、ブースを見て回れる。

 展示ブースは、株式会社インテック先端技術研究所の「ホームオートメーションを支援する家電手帳アプリ」、TIS社内新規事業創出ピッチイベントファイナリストによる「すっごい高セキュリティな個室ブースづくり」、TISインキュベーションセンターの活動を紹介する「新規事業のリアル」、ビジネスマッチングプラットフォーム「bit-finder」、会津オフィスからXR Campusサービスを紹介する「XR Campus@会津」の5つ。また、会場内Jazzステージでは、紗理(Vo.)×河野文彦(Gt.)によるアコースティックミニJazzライブが開催された。

 「XR Campus - イベント」のビューワーアプリでログインすると、イベント会場のマップが表示される。マップ上のブース玉をクリック(タップ)すると、展示ブースに入り、展示を見たり、出展者と会話ができる仕組みだ。

Windows版「XRCampus-Event-Viewer」アプリでログイン後の会場図画面。アプリはWindows、iOS、Androidに対応

ネットワーク家電をスマホで一元管理できる「家電手帳」アプリ

 最初に訪問したのは、インテックの「ホームオートメーションを支援する家電手帳アプリ」のブース。「家電手帳」(https://inetcore.com/kadentecho/)は、複数メーカーのネットワーク家電のリモコン操作と取扱説明書の閲覧をスマホで一元化できるアプリだ。

 ブースには360度カメラが設置されており、見学者はアバターの姿でその場に集まり、出展者のデモストレーションを見ながら質問をしたり、ブース内を見回して展示物を見学ができる。

参加者はアバターの姿でブースを見学。出展者やほかの参加者と会話やリアクションができる

 参加者のアバターは共通で表情がないが、「ハート」「ぱちぱち」のリアクションが返せるようになっている。同じ場所にいるとほかの参加者のリアクションも見えるので、画面にハートや拍手のアイコンが舞うと場が盛り上がって楽しい。

 映像の解像度が粗く、アプリの説明を展示していたパネルやディスプレーの文字が読み取り辛かったのが難点だが、「ブース情報」からテキストの説明を見ることができた。URLのリンクから直接サイトへジャンプできるのは便利だ。

「ブース情報」の説明画面。URL部分をタップするとウェブブラウザーで参照サイトが開く

自宅にセキュアルームを手軽設置できる個室ブース

 次に「すっごい高セキュリティな個室ブースつくりました☆」のブースへ移動。これは、システム開発現場のセキュリティルーム並みの環境をリモートワークでも利用できるようにするための個室ブースだ。多彩なIoTセンシング、監視カメラなどを備え、自宅でも高いセキュリティを実現する。消火装置等も取り付けており、消防法に対応している。

1メートル四方の家庭用セキュアルーム。情報漏洩を防ぐため、監視カメラや各種センサーが設置されている

 個室ブースは狭く、本来なら1人ずつしか入れなかっただろう。狭い場所でも、同時に多人数が見学して説明を聞くことができるのはバーチャルのメリットだ。

小さなブースの中に多人数が入って見学できるのはバーチャルならでは

XRCampusブースは会津会場から出展

 「XRCampus@会津」は、豊洲ではなく、会津オフィス内で出展。大型のイベントは広い会場の確保に悩まされ、遠方の出展者は交通費や商材の輸送コストもばかにならないが、バーチャルなら複数拠点のブースをつないで大規模イベントの開催が可能だ。

「XRCampus@会津」ブースでは「XRCampus-ツアー」と「XRCampus-イベント」のサービスを紹 介

紗理(Vo.)×河野文彦(Gt.)によるJazzライブステージ。ライブはZoomでも同時配信された

 ブース間の移動は会場マップに戻ってブース玉をタップしていくだけなので、効率よくブースを巡回できた。Zoomなどのオンライン会議は顔の正面アップが映し出されるため、お互いに緊張してしまうが、360度カメラの映像は、対面のような自然な距離間で話しやすい。データ容量の負荷などの弱点はあるが、会場に足を運ぶことなく気楽に情報収集できるのはありがたい。オンサイトとオンラインのハイブリッドで開催するイベントが増えているが、ZoomのウェビナーやYouTubeの配信に比べて現場の臨場感を味わえるので、正式リリース後は、ぜひ多くのイベントに導入されてほしい。

■関連サイト

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう