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弥生は財務会計ソフトだけの会社なのか

2021年10月25日 09時00分更新

資金調達や税理士の紹介、合併などの支援を

 そして、今年度は、第2弾以降のサービスを開始する。

 2021年11月に提供を予定している「資金調達ナビ」は、その名の通り、事業者の資金調達に関わるサービスを提供するもので、「資金調達手段を検索」「資金調達を学ぶ」「専門家に相談」を用意。「資金調達を学ぶところからスタートし、会計データを利用したオンラインレンディングを含む銀行融資や、補助金などの行政からの支援策などを含めた調達を横串で検索し、検討できる」という。

 さらに、2021年12月には「税理士紹介ナビ」、2022年には「事業承継ナビ」をそれぞれ提供する予定であり、弥生が目指す「事業コンシェルジュ」の確立を急ぐ考えだ。

 中小企業や個人事業者向け会計ソフト市場をリードする弥生の岡本社長が、今後の課題としてあげているのが、「社会システムのデジタル化」である。

 「これまでは、紙を前提として、その一部を電子化(Digitization)してきたが、これでは業務は大きく変わらず、、行政側にはメリットがあっても、事業者側には業務効率化につながらず、メリットを実感できない。今後は、デジタルを前提とすることで、業務のあり方そのものを見直すデジタル化(Digitalization)を目指すべきである。大事なのは電子化ではなく、デジタル化である」と語る。

デジタルで年末調整が変わる

 岡本社長が指摘する「電子化」から「デジタル化」への流れを促進するために、鍵になるのが2023年10月に導入が予定されているインボイス制度である。

 これに向けて、弥生では、2つの取り組みを加速させている。

 ひとつは、弥生が中心となって、2019年12月に発足した社会的システム・デジタル化研究会(Born Digital研究会=BD研究会)を通じた取り組みだ。SAPやOBC、PCA、MJSが参加。確定申告制度や年末調整制度などのデジタル化を提案。具体的には、標準化された電子インボイスの仕組みの確立と、中長期的には、確定申告制度や年末調整制度、社会保険の各種制度などについても、業務プロセスを根底から見直したデジタル化の推進を目指している。2021年6月には、政府に対して、年末調整制度に特化した形での提言も行っている。

年末調整はデジタル化でこう変わる。

 「年末調整は戦後に生まれた制度であり、コンピュータがない時代の仕組みである。デジタルを前提とした新たなやり方を作ることが必要であり、その実現に向けたロードマップを作成し、着実にすすめていくことを提言した。発生源で情報をデジタル化し、リアルタイムで収集することにより、年末に集中する事業者の業務負荷を大幅に削減することが可能になる」と述べた。

 もうひとつの取り組みが、2020年7月に発足した電子インボイス推進協議会(EIPA)の取り組みである。BD研究会の提言を踏まえて、弥生のほか、インフォマート、SAP、OBC、スカイコム、TKC、トレードシフト、PCA、マネーフォワード、MJSの10社が発起人として設立。日本国内で活動する事業者が、共通的に利用できる電子インボイスシステムの構築を目指し、電子インボイスの標準仕様の策定、実証、普及促進を目指すという。

 「当初の想定を上回る121社が正会員として参加している。電子インボイス制度に対する危機感が高いことの表れである」としながら、「円滑な電子インボイス送受信を実現するために、可能な限り、ひとつの標準仕様でカバーするとともに、受領者が後工程をデジタルで処理できるよう、構造化されたデータにする必要がある。これにより、デジタル化によって圧倒的な業務効率化を実現することができる」とする。それに向けて、まずは、事業者が法令である「適格請求書等保存方式」に対応できるように推進するという。

 電子インボイスを契機に、請求、支払、入金消込までをデジタルデータで扱うことで、業務効率化を実現できるという。「これまではEDIによって大手企業や一部の業界内で利用されていた環境が、中小企業や個人事業者にも広がり、誰でもが利用できる」とする。

 だが、誰でも利用できるためには、標準化が必要だ。「EIPAでは、他の国際規格との比較検討を行った結果、日本標準仕様のベースとしてPeppol(ペポル)を採用するべきと結論に達した。インターネットを基盤とした通信の仕様も含めた包括的な仕組みであり、電子インポイス制度が開始される2023年10月時点で、誰でもが確実に利用でき、日本の商慣習に対応できる柔軟性、中小零細企業でも利用できるコストでの実現性といった点でも課題の解消ができると判断した」という。これも2020年12月には、政府に提言を行い、当時の平井卓也デジタル改革大臣からは、「これは、デジタル庁のフラッグシッププロジェクトになる」との発言があったという。今後の推進が注目されるところだ。

 さらに、2021年6月には、日本で実現すべき主な要件を法令上、業務上の観点からも、それぞれ課題を提示。さらに、電子インボイス制度の導入にあわせて、多くの業務変更が必要となることも指摘している。「日本では月末での合算請求書が一般的だが、これは紙の請求書を郵送していたことに起因している。デジタル化されれば、海外のように都度請求書にシフトすることになるだろう。それに伴って、業務の見直しが必要になってくることも重要な要素だ」と述べた。

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