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新社長で飛躍目指す弥生、クラウド会計、事業コンシェルジュ、その先

2023年04月17日 11時00分更新

今回のひとこと

「安定した製品や、使いやすい製品を提供することは当たり前。それだけでなく、ワクワクする製品を提供したい。ワクワクしなかったら弥生の製品ではない」

弥生/前山社長

(弥生の前山貴弘社長)

 クラウド会計ソフト「弥生シリーズ」や、青色申告ソフト「やよいの青色申告」などを開発/販売する弥生が、2023年4月1日から新体制をスタートした。

弥生/前山社長

前山社長と平野会長(右)

 2008年4月から15年間に渡り、社長を務めてきた岡本浩一郎氏は顧問に退き、新たに、取締役執行役員の前山貴弘氏が、代表取締役社長執行役員に就任した。また、2022年10月から社外取締役に就任していた日本マイクロソフト元社長の平野拓也氏が、非常勤の取締役会長に就いた。

弥生/前山社長

 前山社長は、「私自身が公認会計士や税理士を務めてきた経験を活かし、より一層お客様のニーズに寄り添い、ニーズを先取りできるように努めていく」とコメント。「弥生の製品は、多くのユーザーに使用していただいており、安心して、安定して使ってもらうモノづくりをしている。だが、この姿勢が、もしかしたら守りとなり、新たなものを生み出す『筋肉』が使えていなかったり、スピード感がなくなったりしているのではないかという反省がある。安定した製品や、使いやすい製品を提供することは当たり前。それに加えて、ワクワクする製品を提供したい。ワクワクしなかったら弥生の製品ではないという気持ちで、ユーザー目線を重視した良質な製品やサービスを、これまで以上に早く提供していきたい」と抱負を述べた。

目指す経営者の一人がソニー創業者の盛田氏

 前山社長は、1977年9月生まれの45歳。2001年10月にプライスウォーターハウスクーパース(現PwC税理士法人)に入社。2005年9月にはシネマ・インヴェストメントに入社した。その後、2007年1月に弥生に入社し、内部監査室社長付となったが、2011年3月に一度退社。2017年1月にアンカー・ジャパン、2018年7月にデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリーを経て、2020年6月には、再び弥生に入社した。自らを「出戻り社員」と呼んでみせる。弥生に入社後は、執行役員兼管理本部長に就任し、2020年10月に取締役執行役員に就いた。

 また、2005年4月には公認会計士に登録し、同年9月に前山公認会計士事務所を開所して代表社員に就任。2011年6月には税理士の登録をしている。

 「公認会計士や税理士として、数多くの経営者とビジネスを行ってきた経験が、弥生の経営にも生かすことができる。弥生に再入社してからは、経営陣の一角を担い経験を積んできた」。

弥生/前山社長

前山社長(左)と岡本前社長

 前任の岡本氏を、「完璧主義であり、目標にコミットし、課題に真っ先に取り組む実行力を持つ人物」と評し、傍らでその手法を学んできた。

 目指す経営者の一人にあげたのが、ソニーグループ創業者の盛田昭夫氏だ。

 盛田氏の著書などを通じて、「姿を見ただけで、みんながワクワクする経営者」、「どんな困難にも立ち向かっていく経営者」であることを感じたという。

「ワクワクしなかったら弥生の製品ではない」という言葉も、そうした学びから出てきた前山社長流の経営手法だといえそうだ。

ワクワクする製品づくりにはすでに着手している。

「データ同士がつながり、新たな価値を生み出すといった取り組みは、まだ道半ばである。この領域において、ピュアクラウド型の製品開発をスタートしている。完成した機能からリリースする計画であり、2023年中には一部機能をリリースできる」とする。

弥生/前山社長

また、AIの活用にも力を注ぐ考えを示し、「会計ソフトは、ChatGPTなどの対話型AIが活用できる場面が多く、効果が出やすい」と語る。

「すべてのデータがつながり、すべてが自動化される世界が訪れ、人は煩雑な作業を行わずにすむ。正しい内容であることを確認し、必要に応じて内容を修正していく作業が一般化するだろう。これまでにない新たな価値を届けたい」とする。

ワクワクする製品の画は、前山社長の頭のなかにすでに描かれているようだ。

人物像は温和

 社内から聞かれる前山社長の評価は、「温和な性格で、いつもニコニコしている」というものだ。

 岡本前社長も、「チャーミングな人であり、誰からも愛される人物」としながら、「会計の専門家であり、会計に対する愛、会計ソフトに対する愛が強い。いいモノづくりをしていく上で、安心してバトンを渡せる人物である」と語る。

 15年間に渡って弥生の経営を舵取りしてきた岡本前社長は、「山を越え、平坦なところに到達したタイミングで、次の社長にバトンを渡すつもりだったが、山を越えれば、また次の山があり、平坦な地は永久に来ないことがわかった。今回のタイミングは、2023年10月のインボイス制度の開始を控えた大変な1年のなかではあるが、やるべきことをやれば確実に成果を伴う1年でもある。このタイミングが、ひとつの選択肢だと考えた」とする。

 2023年10月にはインボイス制度が開始され、2024年1月には電子帳簿保存法の本格適用を控えている。企業のデジタル化や社会のDX化は、さらに進展するのは明らかだ。事業成長の機会と市場の変革が訪れているなかでのバトンタッチとなった。

 前山社長は、「弥生にとっては大きな商機が訪れ、大きな成長を見込むことができるタイミングであり、2023年度は業務DX化元年になる。お客様に対しては、制度に対応するために投資をするのでなく、デジタル化によって、業務のDX化を推進し、社会を変えることが大切だということを訴求していきたい」とする。

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