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WOODシリーズ最上位機、クアルコム最新のAdaptive ANCにも対応

aptX Adaptiveで96kHz伝送できる、Victorの完全ワイヤレス「HA-FW1000T」

2021年10月20日 11時00分更新

豊かで温度感のある、心地よい表現

 短時間であるが音質を体験できた。手持ちのスマホがiPhone 8であったため、AACでの接続にはなるが、素の状態での音質に加えて、K2テクノロジーを活用した際の音の変化などを体感できた。

 まず基本的な音調については、ビクターサウンドを標榜するだけあり、高品位である。また、この機種でしか出せない音だと実感させるものになっている。傾向としては全体にウォームで低域の豊かさがある。低域の量感はあるが、過度な強調はなく全体に中庸で整った帯域バランスだ。広いレンジを保ちつつ、高域にとげとげしさがなく、やさしく柔らかくまとめている。ボーカルの聴こえが繊細で、アコースティックなサウンドとの相性が非常によい仕上がりになっていた。

フェイス部は木製となっている。

 低域については大口径ドライバー採用という点を生かし、しっかり前に出しているが、エレキベースの最低音よりは少し上の帯域にピークがあり、キックなどの再現は少し抑制されている印象だった。30Hz、40Hzといった低い音域は、音源によっては制作時の管理があまりなされていない領域となるため、節度を持った再現にしているという説明も受けた。

明瞭感が増すK2テクノロジーの効果

 K2テクノロジーをオンにして同じ曲を再生すると、高域がよく伸びる。結果、倍音の成分がより明確に前に出て、音全体がクッキリ・ハッキリとした再現になることを確認できた。Amazon Musicでハイレゾ配信されているJANIE JANSENの「12STRADIVARI」を聴いた。バイオリンの音色には温度感があり、標準でも包まれるような感覚があり味わいぶかいが、K2テクノロジーをオンにするとこれに高域の張りが加わって、鮮明でクリアな聴こえになる。バイオリンの持つ複雑な音色や演奏のニュアンスなどが前に出てきて、曲全体の見通しがよくなった。

 バイオリン演奏は特に分かりやすいが、クラシックではなくYOASOBIなどJ-POPの楽曲でも、全体に声や演奏のクリアさが増すため、メリットが多くある印象を持った。

軸が比較的長いタイプの製品になっている。

 またケースの手触りの良さも印象的。ふたの部分は若干下の部分より薄くなっており指がかりになるが、ここを開け閉めすると、パコっととしたデッドニングが効いた高級車のドアを閉めるような音がする。この感覚が気持ちよく、高級感を感じさせる理由になっていると思った。

 またハウジング部にあしらわれている蓄音機と犬のマークもかわいらしく、この製品の出自や世界観をうまく演出している。

おなじみの犬の絵があしらわれた金属製ケース

こういう音を待っていたという人は必ずいる

 色彩感豊かで、温度感があり、しかしながらこもり感や不明瞭さが感じさせない。このあたりのチューニングが絶妙な機種だ。価格的にはバング&オルフセンやゼンハイザーなど、海外高級機と同クラス帯となるが、これらにはないビクターらしい音を実現しているのには好感が持てる。中音域の余裕感やほぐれ感によってリラックスして聴ける点が特によい。こういった音が好きな人にはオンリーワン的な価値を持つ機種と言えそうだし、筆者のように完全ワイヤレス機でこういう音を楽しみたかったと思う人も多いはずだ。

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