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RDNA 2世代の新ミドル「Radeon RX 6600」はワットパフォーマンスでRTX 3060を圧倒

2021年10月13日 22時00分更新

ワットパフォーマンスを検証する

 ここまでの検証で、RX 6600はRX 6600 XTとRTX 3060の中間に位置することが多いことが分かった。CU数やクロックがRX 6600 XTから下げられているため特別不思議な結果ではない。だが最後にAMDの主張するワットパフォーマンスについて検証しておきたい。AMDはワットパフォーマンスの高さを主張するグラフ(前掲)の中で電力の計測方法を明らかにしていない。NVIDIAの場合「HWiNFO」等で「GPU Power」なる項目を見ればそのカード全体の消費電力(Total Board Power:TBP)がかなり正確に分かるAPIを整備しているのに対し、AMDはGPU自体が消費する電力とTBPの“間の”電力しか取得できないAPIしか持たない。

 そこで今回はNVIDIAのビデオカード専用消費電力計測ツール「PCAT」を利用し、各ビデオカードのTBPを正確に取得してみた。次のグラフは「Far Cry 6」「Assassin's Creed Valhalla」「Rainbow Six Siege」「Cyberpunk 2077」「DEATHLOOP」において、ゲーム中それぞれ同じ場所に1分立ち続けた時のTBPの平均値と、計測時の平均フレームレートだ。解像度はフルHD、レイトレーシングはなし、画質などの条件は前述のベンチマーク時と揃えている。

ゲーム中のTBP比較

上のグラフ計測時の各ゲームにおける平均フレームレート

 同じシーンを同じ画質設定で表示させても、全てにおいてRTX 3060のTBPが大きい。さらにゲームによってもTBPに違いがあり、Rainbow Six SiegeとCyberpunk 2077は高く、Far Cry 6やDEATHLOOPは全体に低めに出た。Assassin's Creed ValhallaについてはRTX 3060とRX 6600 XTがほぼ同レベルであることから、GeForce系でフレームレートが出ないのはゲーム側でGeForceのアクセルを踏み切れてないのではないかという推測が出てくる。

 ここで圧倒的にTBPが低いのが今回の主役であるRX 6600である。DEATHLOOPを除くゲーム4本において130W程度に収まっており、電源ユニットに優しいGPUであることが分かる。

 そして、このTBPを計測時の平均フレームレートで割った「TBP 1ワットあたりの平均フレームレート」を算出したのが次のグラフとなる。

各ゲームにおけるTBP 1ワットあたりの平均フレームレート

 こうして比較するとRDNA 2のワットパフォーマンスはAmpereを圧倒していることが分かる。5タイトル中3タイトルでRX 6600 XTがトップだが、Rainbow Six SiegeではRX 6600が単独トップとなった。DEATHLOOPではRX 6600よりもRTX 3060のワットパフォーマンスが辛勝しているが、この解釈が難しい。先のDEATHLOOPのフレームレート検証ではRTX 3060がRX 6600 XTよりも高い平均フレームレートを出していたが、このワットパフォーマンス検証に使ったシーン(ベンチマークで通過するルート上にある)ではRX 6600 XTの方が上回っている。

 マップを動き周った時のTBPを計測した方が実際の利用シーンを反映しやすいが、フレームレートやTBPのブレを抑えられる定点観測状態での計測とした。DEATHLOOPで使ったシーンがたまたまRadeonにとってフレームレートの出やすい部分だったのかもしれない。

お詫びと訂正:掲載当初、「各ゲームにおけるTBP 1ワットあたりの平均フレームレート」の表記に誤りがありました。該当部分を訂正すると共にお詫び申し上げます。(2021年11月13日)

まとめ:ワットパフォーマンスは現役最強レベルだが、流通量に懸念あり?

 以上でRX 6600の検証は終了だ。フルHDゲーミングのためのGPUというRX 6600 XTのコンセプトを殺さずに、上手くスケールダウンしてRTX 3060と張り合える所に着地できたGPU、といった感じだ。RTX 2060が担ってきたDXR対応GPUのエントリーモデルというポジションを、RX 6600が見事に奪った形だ。

 冒頭で述べた通り、RX 6600は国内販売価格どころか北米におけるMSRPの通告もない状態でのレビューとなったが、RTX 3060が現在6万円台スタートで7万円近辺がボリュームゾーンであることを考えると5万円台前半(注:筆者が雑に想像しただけの価格)なら最高に嬉しいといったところだろう。

 これ以降は筆者の完全な推測となる。筆者がなにより懸念しているのはRX 6600の流通量はRX 6600 XTよりも少ないのではないか? ということだ。その理由の筆頭はレビュー用カードの量で、今回はRX 6600 XTよりも数が少なく、他メディアと共用になった(全体で何枚かまでは分からない)。数が出ることを想定した製品ではこれまでなかった施策である。さらに今回メディア向けに配布された資料にも一切MSRPの類が記入されていなかったことがこの推測を補強する。

 これまでライバルRTX 30シリーズよりも安いことを盛んにアピールしていたAMDが、なぜ最安価なはずのRX 6600で価格をアピールしないのか? 昨今の半導体供給事情も相まって、MSRPがアピールできない状況におかれていると考えている。

 さらにAMD(TSMC)の7nmノードの歩留まりが良いならば、CU28基のRX 6600のストックが思うように貯まらず、結果的に流通量が少なくなるのでは、という推測も出てくる。あくまで推測だが。

 ここまでの話は筆者の妄想で終わって欲しいが、RX 6600は仮想通貨マイニングからの引き合いも強そうな点は書かねばならない。NVIDIAのようなハッシュレートリミッターは搭載しておらず、かつBTC価格も右肩上がりである。中国における仮想通貨規制はあるもののまだマイニング熱は収まらない。RX 6600を見かけたら迷わず購入する位の気概でないと、手にすることは難しいのではないだろうか。

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