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「YOXO BOX」令和2年度活動報告会レポート

横浜市スタートアップ成長支援拠点 「YOXO BOX」令和2年度の成果は?

2021年12月07日 09時00分更新

 「イノベーション都市・横浜」を宣言している横浜市のスタートアップ成長支援拠点「YOXO BOX(ヨクゾボックス)」。2021年5月28日、同施設にて、令和2年度の活動報告や、今年度の取組などを紹介するオンラインセミナー「スタートアップ成長支援拠点『YOXO BOX』令和2年度活動報告会」が開催された。

YOXO BOXの現状と令和2年度の総括

 第1部では、まず横浜市経済局新産業創造課の奥住有史氏から、横浜市のスタートアップ支援事業の令和2年度の概要が報告された。

横浜市のスタートアップ支援事業の令和2年度の概要を報告する、横浜市経済局新産業創造課の奥住有史氏

 令和2年度に実施されたイノベーションスクールでは78名の修了者を輩出。令和3年度の募集は6月10日で締め切られているが、こちらも人気のプログラムになっているという。  創業済みスタートアップの成長・発展を支援するプログラムのアクセラレータープログラムは、令和2年度は9社を採択。コロナ禍でDXやオンライン、カーボンニュートラル、IoTといった分野が益々重要となっており、そういった分野に強いスタートアップを重点的に支援したいとのことで、令和3年度は6月初旬から募集がスタートしている。

 事業の拡大を目指すスタートアップが、資金調達やビジネスパートナーを発掘するためのプレゼンテーションイベントである横浜ベンチャーピッチは、これまでに計17回実施。令和2年度は3回実施し、15社が登壇した。令和3年度も通年で登壇スタートアップを募集している。

 令和2年度にYOXO BOXで開催されたビジネスイベントには、のべ2700名以上が参加。週1回ほどのペースで開催しているが、令和3年度も新型コロナウイルスの影響からオンラインを中心にイベント開催を計画している。また、今後の状況次第ではYOXO BOXでのハイブリッド型、またはオフラインでのイベント開催も開始する予定という。合わせて、スタートアップ相談窓口も、オンライン、オフラインで随時受け付けている。

 優れたビジネスモデルや独創的なアイデアをもつスタートアップや中小企業を表彰する「横浜ビジネスグランプリ~YOXOアワード~」では、令和2年度は10社がファイナリストに進出し、最優秀賞、優秀賞、奨励賞、女性起業家賞、学生部門優秀賞などを選出。最優秀賞には賞金100万円が提供される。令和3年度は8月に募集を開始する予定。

 続いて、新規支援メニューについて説明。YOXO BOXで提供している支援メニューとして、令和3年度より加わる新たなメニュー「YOXOマネジメントプログラム」では、IPO(株式公開)やM&Aを具体的に目指すスタートアップを対象として、コーポレートガバナンスやマネジメントに関する講座を実施する。アクセラレータープログラムと合わせてスタートアップを両輪で支援したいとのこと。6回程度の講座を行う計画で、令和3年度8月の募集開始を予定している。

YOXO BOXの支援メニューとして、従来の5つのメニューに加え、新たにYOXOマネジメントプログラムが追加される

YOXOマネジメントプログラムは令和3年度8月に募集開始予定

 令和2年度の実績は、スタートアップの成長支援件数が107件、ビジネスイベント参加者数は2,798名、イノベーション情報発信対象者数は1,714名と、いずれも目標値を大幅に上回っている。また、横浜市の目標についても、スタートアップなどの市内での企業・立地件数が40件、支援企業が受ける資本投資額が42.6億円と、いずれも目標をクリアした。

 こういったYOXO BOXの取り組みが国から評価され、令和2年4月に国のスタートアップ・エコシステム拠点形成戦略「グローバル拠点都市」に選定されたという。最後に奥住氏は「横浜市は、グローバル拠点都市のなかでもめきめきと実績をあげています。これからも国やほかのグローバル拠点都市と連携しながら、さらなるスタートアップ支援を進めていきたいと思っています」と語り、報告を締めくくった。

令和2年度のYOXO BOXの実績は、いずれも目標を大幅に上回った

横浜市の目標についても、いずれも達成

YOXO BOX運営事業者による令和2年度の総括と令和3年度の展望

 続いてYOXO BOXの運営事業者が登壇し、令和2年度の総括と令和3年度の展望を語った。

 まず、YOXO BOXの施設運営を担当する三菱地所の横田大輔氏が、令和2年度を総括。 YOXO BOXの事業目標は、令和元年度に引き続いて目標を達成。アクセラレータープログラムとイノベーションスクールは先に紹介したとおりで、個別支援では支援回数が106回、支援先の資金調達が3億9,500万円、ビジネスマッチングが55件となった。

 YOXO BOXは新型コロナウイルスの影響で2020年4~5月は閉館となり、6月1日から2021年3月21日までは18時までの時間短縮での運営となった。また現在は、パーティション設置などの感染防止対策を実施するとともに、オンライン配信環境を整備して活動を継続している。

 ネットワーク形成では、令和2年度にメンターを5名追加して総勢21名に拡充。また、大学とのネットワーク形成では、令和元年度から開始している横浜国立大学との共同研究を継続しつつ、2020年には慶應義塾大学との共同研究を開始。さらに、中華街や元町など地元の商店街と連携し、スタートアップの力を利用してローカルの力を引き出す取り組みも進めている。YOXO BOXオフィスは、コロナ禍で昨年度はあまり動きがなかったものの、最近動きが活発になってきているそうで、ここを好機ととらえて活動していきたいとした。

 最後に横田氏は、「横浜市に旗を立てていただいたおかげで、3年目にしてコミュニティができてきたと思います。スクール生と地元の街づくり団体が新しいサービスの実証実験を開始したり、横浜に住んでいるベンチャーキャピタリストやベンチャー経営者が独自のプライベートなつながりを持ち始めていたり、メンターのグローバルベンチャーと市内の大学との間でインターンの話が出ていたりと、プログラムの成果以外でもコミュニティの動きが出てきたと思っていますので、これをより強化していき、コミュニティをいかに生態系として機能させてスタートアップが成長できるような形にして行くかが今後の課題だと思っています。そのために、YOXO BOXメンターやLIP.横浜(横浜ライフイノベーションプラットフォーム)、I・TOP横浜(IoTオープンイノベーションパートナーズ横浜)、周辺大学などとの連携や、グローバルネットワーク、スタートアップによるローカル課題の解決、スタートアップが来たくなる環境整備などを進めたいと考えています。そのうえで、コロナの状況にもよりますが、YOXO BOXでのコミュニティマネージャー機能を強化して、よりコミュニティをエコシステムにしていけるような取り組みを作り出していけたら、と考えています」とまとめた。

YOXO BOX施設運営担当の三菱地所 横田大輔氏が、令和2年度を総括

YOXO BOXの事業目標は、令和元年度に引き続き令和2年度も達成

 株式会社アドライト 代表取締役の木村忠昭氏は、2020年度のアクセラレータープログラムについてふり返った。

 令和2年度のアクセラレータープログラムは9社を採択。すでに採択者の成果も出ているとのことで、プログラムをきっかけに横浜市に拠点を変えたり、資金調達などを実現しているという。令和2年度は、メンタリング、マッチング、交流会、ミートアップやセミナーを中心にプログラムを開催。実績としては、プログラム期間中の資金調達が6.05億円、企業などとのマッチングが40件、実証実験実施件数が6件となっており、プログラム後も進展しているという。そのうえで木村氏は「いろいろな形でスタートアップの方々にプログラムを活用していただいて、PRや事業推進の機会にしていただきたい」と述べつつ、令和3年度について「昨年度に続いてアクセラレータープログラムの中でオープンイノベーションの要素をさらに打ち出して展開して行く予定です。より多くの地場を中心とする企業に入っていただけるよう調整していますので、横浜を中心に事業を拡大したい起業家や、事業会社と連携してオープンイノベーションで事業を作っていきたいスタートアップの応募をお待ちしています」と締めくくった。

2020年度のアクセラレータープログラムについてふり返る、株式会社アドライト 代表取締役の木村忠昭氏

令和2年度のアクセラレータープログラムの結果、資金調達が6.05億円、企業などとのマッチングが40件、実証実験実施件数が6件の実績を達成

 関内イノベーションイニシアティブ株式会社 代表取締役の治田友香氏は、令和2年度のYOXOイノベーションスクールについてふり返った。

 これまでの実績では、第1期、2期、3期とエントリー数が減っているが、これは適正な受け入れを行っているとして見て欲しいとしつつ、過去1年半で135名が修了し、コミュニティができつつあるという。受講生は30~40歳代が多く、関内、みなとみらいをつなぐ人たちが顕在化しているとし、その点を今後も強化したいとした。また、3期では学生の参加が顕著で、さらに女性比率も増えており、よい傾向だと指摘。このほか、YOXOアクセラレータープログラムにスクール修了生が採択されるなど、実績も目立ってきているという。

 最後に治田氏は「集まった人たちにYOXO BOXを活用していただいたり、目指すことを発信したりするようなコミュニティを作っていきたいと思っています。いろいろな仕掛けを考えていますので、ぜひ参加してください」と述べた。

令和2年度のYOXOイノベーションスクールについてふり返る、関内イノベーションイニシアティブ株式会社 代表取締役の治田友香氏

YOXOイノベーションスクールは、過去1年半で135名が修了し、コミュニティが形成されつつある

 YOXO BOXでのイベント運営を担当している角川アスキー総合研究所のガチ鈴木は、令和2年度にYOXO BOXで開催したイベントを総括した。

 令和2年度は、YOXO BOXで50件のイベントを開催し、累計参加人数は2798名であった。ただ、令和2年度はコロナ禍によって人が集まるイベントは実施できず、すべてが無観客での実施となった。そのため、目的のひとつである交流がほとんど行えなかったとしつつも、その点を悲観しているわけではなく、新たな動きを取り入れて活動してきたと説明。

 たとえば、コミュニティの垣根を越えるつながりを作っていくためにYOXO BOXからイベントを通して声を発信してもらいたいと考え、発信系のセミナーやミートアップイベントなどを開催。このほかにも、グローバル拠点都市としての発信イベントとして、海外展示会出展や海外展開のセミナーを開催するなど、積極的にイベントを実施してきたと説明した。

 さらに、YOXO BOXに関わってYOXO BOXをハブとして活動をつなげていく、をテーマとして、「YOXO BOXフェス2021オンライン」を2日間、8セッションにわたって開催し、YOXO BOXの情報発信としてヨコハマ・イノベーターズ・ハブの運営や横浜ベンチャーマップの作成・公開なども行った。

 そのうえで令和3年度は、引き続きコロナ禍が続く見通しのため、YOXO BOXに来場者を集めてミートアップ的なイベントを実施するのはもう少し先になるとの見通しを示しつつ、セミナー系のオンラインイベントを実施していくことになるとした。そのうえで、YOXO BOXにエンジニアを呼び込みたいと考え、イベントを通して仕掛けていきたいと話した。

角川アスキー総合研究所のガチ鈴木は、令和2年度にYOXO BOXで開催したイベントを総括

令和2年度はYOXO BOXで50件のイベントを開催し、累計参加人数は2,798名に達した

 株式会社plan-A 代表取締役 プロジェクトデザイナーの相澤毅氏は、地域ネットワークというテーマでの活動報告を行った。

 相澤氏は「グローバル拠点都市として、なぜ横浜なのか、なぜ関内なのか、というところを考えました」としつつ、それぞれの地域によってそれぞれの性質があることを踏まえつつ、それぞれの地域におけるスケール感を前提として、何をするべきか、という動きを調査したという。

 調査は非常に多岐に渡っており、内容を細かく紹介するのは難しいとしつつ、第1次産業、第2次産業、第3次産業それぞれに横浜市には強みがあり、それぞれにどういった可能性があるかを把握できたと説明。また、YOXO BOXのある横浜市中区、みなとみらい地区は広域から通勤者を吸収しており、横浜市の核になっているとし、YOXO BOXはハブとして機能させやすい立地にあると指摘。さらに、コロナ禍でなかなかオフラインで集まれないからこそ、あえてオンラインで面としてネットワーク形成ができないかと考えて、令和2年度に関内地域のコワーキングスペース運営者の座談会を3回実施した。

 そのうえで、横浜については産業の集積と衣食住の関係があり、地元主要企業と近年のスタートアップの関係を可視化する必要があり、そういったなかでも横浜は歩きやすい街のネットワークがアドバンテージとしてあると指摘。また関内についてはリアルコミュニティやコロナ禍におけるビジネスのオンライン化、横浜をフィールドとしたスタートアップやスモールビジネスの活性化などが重要であると指摘した。

 最後に「地域でコミュニティやネットワークを形成するには時間がかかるし慎重に進める必要がある一方で、エコシステム形成では地域における連動が非常に大事であり、そうでなければサステナブルではない。そこで2021年はエリア、地域との連動をいっそう強化しエコシステム形成を推進していく企画を進めています。そのうえで関内地域のYOXO BOX事業が根付いていく重要な年度になっていると考えて、地に足をつけた形で進めていきたいと考えています」と総括および令和3年度の展望を述べた。

地域ネットワークというテーマでの活動報告を行う、株式会社plan-A 代表取締役 プロジェクトデザイナーの相澤毅氏

膨大な調査資料を示しつつ、横浜や関内地域の強みや今後の方向性を説明

 有限責任監査法人トーマツ横浜事務所の村田茂雄氏は、運営を担当しているYOXO BOXの相談窓口を総括した。

 令和2年度では、窓口相談者数が42件あり、述べ支援回数が126回、専門家相談者数が6件あった。その結果、ビジネスマッチングが55件、資金調達が3.95億円(投資額1.85億円、融資額2.1億円)という実績を達成。

 相談事例としては、弁理士による知財戦略の相談や、弁護士による事業譲渡における法律相談、社労士による雇用契約書作成アドバイス、コンサルタントによるビジネスモデルのブラッシュアップや販路拡大、資金調達のアドバイスなどを行ったという。

また、昨年度は横浜ベンチャーピッチを3回実施し、令和3年度も3回実施予定とのこと。各回5者ほどの登壇企業のピックアップを考えているそうで、ぜひ登壇に応募してほしいと述べた。

 最後に「YOXO BOXがきっかけで横浜ならではの横のつながりが広がったのは大きいと思っています。合わせて、思いを持ち熱意を持っている方なら相談窓口への相談は何でも歓迎です。お気軽に相談を申し込んでいただければと思います」と述べて総括を締めくくった。

YOXO BOXの相談窓口を総括する、有限責任監査法人トーマツ横浜事務所の村田茂雄氏

令和2年度には、弁理士による知財戦略の相談や、弁護士による事業譲渡における法律相談、社労士による雇用契約書作成アドバイス、コンサルタントによるビジネスモデルのブラッシュアップや販路拡大、資金調達のアドバイスなどを行った

 最後に、横浜市経済局 新産業創造課長の高木秀昭氏が登壇し、次のように述べて報告会は終了した。

 「横浜市では、『横浜クロスオーバー YOXO』を旗印として、企業や大学と連携して横浜の街ぐるみでオープンイノベーション、スタートアップ支援、新ビジネス創出のエコシステム形成を目指す『イノベーション都市 横浜』の政策を進めています。YOXO BOXは新しいプレーヤーを生み出す拠点です。アクセラレータープログラムではビジネスプランをブラッシュアップして、チーム力を高め、資金調達に成功して、新しいサービスをローンチして成長させているスタートアップも出てきています。イノベーションスクールでは、1年半で135名が修了しました。ビジネスで社会を変えたいという熱い思いを持ったみなさまがディスカッションで盛り上がり、そういった人たちと会えるという評価をいただいています。また、プログラムの修了生やイベント参加者の横のつながり、待ちのみなさんとのコミュニティ形成も着実に進んでいて、われわれも手応えを感じています。今年度も運営事業者と連携して、さらにこの動きを加速させたいと考えています。その上で今年はグローバル色を出していくとともに、他エリアとの連携も進めていきたいと思います。さらに、2021年3月に設立された『横浜未来機構』との連携も進めていきたいと考えています。スタートアップのみなさまにはYOXO BOXの施策を活用いただきたいですし、スタートアップを支援するみなさまもネットワークに加わってもらえると幸いです」

報告会の最後に挨拶した、横浜市経済局 新産業創造課長の高木秀昭氏

■関連サイト

  • ヨコハマ・イノベーターズ・ハブ(YOXO BOXサイト)
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