QLC NANDのSSDは脱HDDを目指したもの
パソコンのストレージとして、SSDを利用するのはもはや当たり前の時代になってきている。HDDに比べてアクセス速度が速く、ファイルを読み書きする時間が抑えられることで、動作がかなり軽快になったのは、みなさんもご存知のとおりだ。
とはいえ、HDDに比べてSSDは高価なため、なかなか大容量のものを利用するのは難しく、動画や写真などを大量に保管する場所としては、まだまだHDDを利用するというのが現状だ。
そんななかで、より大容量でHDD並の価格を目指したSSDの開発が進められている。それが、2018年ごろに登場したQLC NANDを採用するSSDだ。
従来のTLC NANDを採用したSSDとは何が違うのか、2007年からSSDの製造に取り組み、そのためのNANDも開発してきたMicronのIT環境技術を牽引する責任者である江間泰紀さんにお話を伺った。
価格を抑え容量をアップするための進化
まず、簡単にNANDの歴史を紹介しよう。NANDとはフラッシュメモリーの構造の1つで、高い集積度で安価に大容量化できるのが特徴。SSDをはじめとしたストレージに採用されている。
初期のNANDは、1つのセルに1ビット保持するSLC(Single Level Cell)だったが、2011年に1セルに2ビット保持するMLC(Multi Level Cell)が登場。さらに2016年には1セルに3ビットを保持するTLC(Triple Level Cell)が出てきた。
1セルに多ビット保持することで、同じ面積に書き込める容量が増えるため、必然的に容量単価は抑えられる。反面、読み書きする速度は遅くなってくる。
「保持しているデータはセルに入っている電荷の量を測って、“1”か“0”を判断しています。SLCの場合は電荷があれば“1”、なければ“0”なので、判断しやすいのですが、MLCになると、セルのなかに例えば25%まで電荷が詰まっていたら“01”、50%まで詰まっていたら“10”というように判断して、4通りを認識するようにしています。TLCだとさらに細分化して判断して8通りを判断するため、必然的に遅くなってしまいます」(江間氏)
また、NANDの場合は書き換え頻度が高くなると、電荷が保持できにくくなる現象が発生し、正確に情報を記録できなくなるセルが生じる可能性がある。書き換え可能回数の上限は多ビット化するごとに落ちてきているものの、1セルあたりの書き換え頻度もその分落ちてきているため、全体的な耐久性としては大きく劣化はしていない。
一方、2018年に登場したQLC(quadruple level cell)は、1セルに4ビット保持できるもの。1ビット増えれば容量が増えるわけで、コストを抑えつつより大容量化が期待できるのだが、先述のとおりTLCに比べても読み書き速度は遅くなり、書き換え可能回数の上限も落ちることになる。
「このあたりはNANDの特性上いたしかたないところですが、TLCが登場した当時もMLCの耐久性より劣ることが指摘されていました。しかし、いまはそのことを問題にする人はいないのではないでしょうか」(江間氏)
TLCはインターフェースの改善も相まって、速度面も飛躍的に向上している。TCL NAND SSDとQLC NAND SSDは、NAND以外ほとんど使用しているパーツは変わらないので、今後より進化していくことが期待できる。
「CrucialのSSD製品は、エンタープライズ業界でも定評のあるMicron製のNANDを使っており、保証期間は5年です。これは、それだけ故障しないという自信の現れでもあります」(江間氏)
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