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Zen 3世代のAPU「Ryzen 7 5700G」「Ryzen 5 5600G」はPCパーツ高騰時代の救世主なのか?

2021年08月03日 22時00分更新

グラフィック性能は前世代とほぼ同じ

 続いては内蔵GPUの性能検証に入るが、まずは「3DMark」でグラフィック描画のパフォーマンスを検証しよう。今回は“Fire Strike”“Time Spy”のみを使用する。

「3DMark」Fire Strikeのスコアー

「3DMark」Time Spyのスコアー

 いずれの結果においても、ビデオカードを載せたRyzen 5000シリーズが総合スコアー(青のバー)およびGraphics(オレンジ)において高い値を示している一方で、Ryzen 5000Gシリーズのそれは低い。Ryzen 5000Gシリーズでもバーが伸びているのはCPUに負荷が集中する物理演算テスト(グレー)のみだ。

 ここでRyzen PRO 4000Gシリーズと5000Gシリーズを比較すると、物理演算テストの結果は5000Gシリーズの方が伸びやすい(CPU1コアあたりのスコアーが高い)ものの、総合スコアーはほとんど伸びていない。Ryzen 7 5700GとRyzen 7 PRO 4750G、Ryzen 5 5600GとRyzen 5 PRO 4650Gというペアで総合スコアーを比較すると、最大でも3%しか伸びていないのだ。

 Ryzen 5000Gシリーズの設計は基本Ryzen 4000Gシリーズと同じであり、内蔵GPUがVegaコアのままで、CU数も据え置きであることを考えれば当然の結論といえる。さらに旧世代に対する総合スコアーの伸びはRyzen 7 5700Gの方がRyzen 5 5600Gよりも鈍いが、これはRyzen 7 5700Gでは内蔵GPUのクロックが僅かに引き下げられている点と連動している。

 ここまでの結果からRyzen 3000GシリーズからRyzen 5000Gシリーズに乗り換えるメリットは確実にある。その一方でRyzen PRO 4000GシリーズからRyzen 5000Gシリーズへの設計的差分が小さいため、特にグラフィック性能では乗り換えるメリットはほとんどない(CPUパワー重視ならメリットはある)。前述のAMD自身Ryzen 4000GシリーズをDIY市場に出さなかった理由を裏付ける結果となった。

フルHD&最低画質ならイケそうな「Rainbow Six Siege」

 では実ゲームを利用したグラフィック性能検証に入ろう。まずは「Rainbow Six Siege」で試す。APIはVulkanとし、解像度は内蔵GPUの性能を考慮しフルHDに限定。画質は一番下の“低”と、筆者のビデオカード検証で毎回使っている“最高”+レンダースケール100%設定の2通りとした。主に見るべきは前者、つまり最低設定での結果であり、既存のビデオカードとの性能比較については後者(最高設定)を使うとよいだろう。

「Rainbow Six Siege」Vulkan、1920×1080ドット、最低画質設定でのフレームレート

「Rainbow Six Siege」Vulkan、1920×1080ドット、最高画質設定でのフレームレート

 元々軽めのゲームに軽量APIであるVulkanの効果が加わったため、ビデオカードを利用するRyzen 5000シリーズのフレームレートの高さに眼を奪われてしまうが、画質“低”であればRyzen 5000Gシリーズでも60fps以上はキープできる。

 ただ、Ryzen PRO 4000Gシリーズも数fps下がるものの同レベルのパフォーマンスを出せており、ここからも3DMarkの結果の正しさを裏付けるものとなる。Ryzen 5 3400GからRyzen 5 5600Gへ乗り換えたとすると約13%平均fpsが上がる計算になるが、2世代(最低画質)で13%向上はやや微妙なところだ。

 これ以上のパフォーマンス向上を期待するのであれば、VegaではなくRDNA、可能であればRDNA2世代の内蔵GPUになる、あるいはCUが純増するAPUを待たねばならないだろう。

 また、最高画質設定ではフルHDだと60fpsを割り込むため実用的ではないことも確認できる。

「Apex Legends」でもフルHDでは厳しい

 続いては「Apex Legends」で検証する。画質は前述の通り最低設定と最高設定の2通り、フルHDのみで検証する。射撃訓練場における一連の動作をした際のフレームレートを「CapFrameX」で測定した。また、起動オプションで144fps制限を解除する引数(+fps_max unlimited)を指定している。

「Apex Legends」1920×1080ドット、最低画質設定でのフレームレート

「Apex Legends」1920×1080ドット、最高画質設定でのフレームレート

 Apex LegendsにおいてもRyzen 5000Gシリーズのグラフィック性能はRadeon RX 5600 XTの4分の1程度であることが確認できる。最低画質設定だとRyzen 7 5700Gなら平均60fpsにかなり近づくことができたが、30fpsを割り込む瞬間がたびたび発生するため、まともに遊ぶのは厳しい。

「VALORANT」では5000Gシリーズの伸びが凄い

 Rainbow Six SiegeやApex Legendsでは苦い結果が続いたので、思い切り描画の軽い「VALORANT」で試してみよう。こちらも画質最低と最高(アンチエイリアスはFXAAではなくMSAAx4を選択)の2通り。射撃場で一定のコースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で測定した。

「VALORANT」1920×1080ドット、最低画質設定でのフレームレート

「VALORANT」1920×1080ドット、最高画質設定でのフレームレート

 予想通りVALORANTならRyzen 5000Gシリーズで十分に高いフレームレートが得られる。最低画質ならRyzen 7 5700Gで平均284fps、Ryzen 5 5600Gでも平均281fpsまで出ている。ここで注目したいのはRyzen PRO 4000Gシリーズとの対比だが、3DMarkを筆頭にRainbow Six SiegeやApex Legendsでは“内蔵GPUの世代やCU数が変わっていないから性能はほぼ変化なし”だったものが、VALORANTではRyzen 5000Gシリーズのフレームレートが“最低画質設定に限り”30%程度伸びている。

 ただ最高画質設定にすると差がなくなる点から、描画負荷が極めて軽い状況ではCPU側のクロックやL3キャッシュの量等が効いていると推測できる。逆に描画負荷がある程度高くなるとコア数が効いてくることが示唆されている。

「Orks Must Die! 3」でも少々辛い……

 少し目線を変えて、最近リリースされた「Orks Must Die! 3」でも試してみた。画質は“LOW”“ULTRA”設定とし、ステージ“隠された波止場”を5分プレイしたときのフレームレートを「CapFrameX」で測定した。

「Orcs Must Die 3」1920×1080ドット、最低画質設定でのフレームレート

「Orcs Must Die 3」1920×1080ドット、最高画質設定でのフレームレート

 このゲームはVsyncをオフにしても60fps制限がかかるため、RX 5600 XTを装備したRyzen 5000シリーズの突出感がなくなったが、Ryzen 5000Gシリーズを筆頭としたAPU勢のフレームレートもそれほど高くない。

 LOW設定ではRyzen PRO 4750GがRyzen 7 5700Gよりもわずかに高い平均フレームレートを出しているが、手動計測であることに加え、5700Gの方が微妙にGPUクロックが低い事などを考えるとこういう結果が出ても不思議ではない。Ryzen 5 5600GとRyzen 5 PRO 4650Gについても、わずかにRyzen 5 5600Gの方が高いがこれも誤差みたいなものだ。

FSRもちゃんと機能した「Anno 1800」

 以上の検証からRyzen 5000GでPCゲームを遊ぶには描画負荷の軽いものを画質低設定で遊ぶ、といった工夫が必要になることがわかった。しかし、AMDは先日FSR(AMD FidelityFX Super Resolution)というGPU負荷を下げる技術を解禁した。これは特定のGPU設計に依存しないアップスケール技術であるが、これは当然APUの内蔵GPUでも利用できる。

 まだFSRに対応しているゲームが少ないのがネックではあるが、今回は安定した検証が可能、かつ発売済みゲームのひとつ「Anno 1800」を利用して検証する。APIはDirectX 12とし、画質“低”“最高”の設定においてFSRなしの場合とFSR“高品質”(他のゲームで言うQuality)を追加した時のフレームレートを比較する。ベンチマーク機能を利用し、全シーケンスの平均フレームレートを比較した。

 結果を吟味する前にFSR“高品質”設定について言及しておこう。AMDはAPUではFSRは“パフォーマンス優先”(Performance)設定を想定しているようだが、あえて筆者は“高品質”とした。その理由としてはフルHDでパフォーマンス優先設定だと印象派の絵のごとく幻想的なボケが出ままくる(Ryzen 5000Gシリーズの開発コードが“Cezannne”だからそれも一興かもしれない)ため、あまり実用的とは言えない。

 そのためある程度の画質を担保できる“高品質”とした。このあたりの画質比較については、「4KではFPSの向上が絶大!「AMD FidelityFX Super Resolution」の効果を大検証」を参考にされたい。

「Anno 1800」DX12、1920×1080ドット、最低画質設定のフレームレート

「Anno 1800」DX12、1920×1080ドット、最低画質設定でのフレームレート

 Anno 1800でもRX 5600 XTのフレームレートの4分の1程度のフレームレートにとどまっているが、FSRを有効にすると30%程度フレームレートが伸びる。APUでもFSRは有効なことが確認できた。ただ画質“低”ではアップスケール元の画質が悪いため“中”程度にしたうえでFSRを追加するのが妥当なところだろう。

「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ」ベンチでも試してみる

 描画の軽めな「ファイナルファンタジーXIV」はRyzen 5000Gシリーズでどの程度動くのだろうか? 今回は先日公開された同ゲームの公式ベンチを利用して計測した。画質設定は“標準品質(ノートPC用)”と“最高品質”とした。スコアーの他にレポートで取得できるフレームレートも比較する。

「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ」ベンチマーク、1920×1080ドット時のスコアー

「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ」ベンチマーク、1920×1080ドット、最低画質設定でのフレームレート

「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ」ベンチマーク、1920×1080ドット、最低画質設定でのフレームレート

 まず、標準品質設定時のスコアーに注目すると、Ryzen 5000GシリーズはRyzen PRO 4000Gシリーズより300〜400ポイント高く、Ryzen 5 5600GはRyzen 7 4750Gよりも優位に立っている。

 しかし、最高品質設定ではRyzen 5 5600GやRyzen 7 4750Gよりも下回っている。これはVALORANTと同様に描画負荷が軽い時はCPUのより強力なRyzen 5000Gシリーズが優位だが、描画負荷が上がるとCPUコア数の差が効いてくる。

 ただ標準品質設定でも平均フレームレートは40fps台と低く、今のPCゲーム基準でいくとあまり快適とは言えない(「暁月のフィナーレ」ベンチ上の評価は“やや快適”だが)。Ryzen 5000GシリーズでFF14を遊びたいのであれば、さらに解像度を下げるという工夫も必要になる。

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