国内最大級のドローンの展示会「Japan Drone 2021」が、6月に幕張メッセで開催された。
主催は一般社団法人日本UAS産業振興協議会(以下JUIDA)で、共催はコングレ。ドローンの実機や関連するソリューションが展示されたほか、「ドローンの社会実装」をテーマとした講演も催され、会場を一周しただけでドローンのトレンドがわかる、大規模な展示会となった。
展示会と合わせて、複数のカンファレンスも実施された。その中で、JUIDA、中野区、国立研究開発法人建築研究所、一般社団法人日本建築ドローン協会の4者が、中野区をフィールドとして、ドローンを活用した建築点検を実施することも明かされた。
変わりゆく中野区、老朽建築の調査にドローンを活用
カンファレンスは、中野区議会議員・博士(工学)の加藤 拓磨氏がモデレーターとなり、中野区企画部構造改革担当部長の石井 大輔氏、建築研究所 材料研究グループ 主任研究員の宮内 博之氏、日本建築ドローン協会 会長の本橋 健司氏、JUIDA 常務理事の岩田 拡也氏がパネリストを務めるかたちで進行した。
石井 大輔氏(中野区企画部構造改革担当部長)は「中野区は現在、再開発を進めているが、区役所とサンプラザの再開発をこれから進める予定。中野区がこれから大きく変わっていく中で、街の安全性をどう高めていくのかが課題。中野区には木造住宅の密集地域もあり、大規模な災害が起こると、建築物が倒れたり、倒壊して、緊急用道路が寸断される可能性もある」と話す。
合わせて、「ドローンを活用した調査では、安全性の確保や、交通関係者、道路関係者の理解が得流ことも重要。今回のプロジェクトでは、中野区のメインの役割はフィールドの提供になるが、各所と協力関係を結んでいきたい」ともコメントした。
宮内 博之氏(建築研究所 材料研究グループ 主任研究員)は、「建物調査には、すでにドローンが活用され始めている。用途に合わせて、目視できるノーマルなカメラだけでなく、赤外線カメラを搭載することもできる。建造物の調査でドローンを活用する場合、調査に合わせた要求条件や、空間に合わせた適切なドローン選びが大切。最終的には、基準化や標準化、専門人材の育成が必要になってくる」と、建築現場におけるドローン活用について述べた。
建築現場におけるドローンの活用については、本橋 健司氏(日本建築ドローン協会 会長)も「高層ビルの調査をするときは、非常に高い場所まで足場をかける必要がある。これがすごく大変なので、調査にドローンが使えないかというアイディアは、建築分野ではずっと持っていた。我々(日本建築ドローン協会)は、建築分野でのドローンの利用を推進している団体だが、各団体との協力を意識しながら、プラットフォームを作っていきたいというのが(協会の)趣旨にもなっている」とコメント。
Japan Drone 2021を主催するJUIDAでは、ドローンに関するライセンスの発行を手がけている。JUIDA認定スクールで講習を受け、JUIDAが定める科目を修了した操縦士に「操縦技能証明証」を、さらに人航空機の安全運航管理に関する基本知識とリスクアセスメントを習得するなど、一定の基準を満たした操縦士には「安全運航管理者証明証」というライセンスを発行。
2021年には、「プラント点検」と「森林測量」の、より専門性の高いライセンスの発行も開始した。これらは、それぞれプラント点検と森林測量に特化したドローンの操縦技能を習得していることを示すものだが、岩田 拡也氏は、「今後は、建築分野に特化したドローン操縦ができるライセンスを発行し、操縦士を輩出していきたい」と話したほか、「全国のJUIDA認定スクールでは、自主的にドローンが活用できるシーンに掛け合って、就業のサポートをしているが、JUIDAとしても、建築業界で、建築分野に特化した操縦士を、業界で活かしてもらう橋渡しがしたい」ともコメントした。
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