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【連載】起伏に富んだ豊かな自然と、古代の歴史が残るまち~Vol.2 栄区(本郷さかえ)~

2021年06月24日 10時00分更新

 こんにちは。Yocco18の遠藤です。

 6月2日の横浜開港記念日を過ぎ、いよいよ夏が近付いてきました。

 まち歩きではすっかり汗をかく季節になりましたね。

 さて、横浜18区それぞれをモチーフにしたキャラクターたちが地域の魅力を発信する「Yocco18」の連載コラム、第2回は横浜市栄区を紹介したいと思います。

 おさらいですが、Yocco18は『身近な地域を知り、楽しむ』をテーマに、港や観光地だけじゃない横浜の身近な地域の魅力を伝える活動をしている市民発のプロジェクトです。筆者の遠藤は、趣味である地域研究やまち歩きを通して地域の特徴を反映させたYocco18のキャラクターをデザインしています。Twitterでは毎日情報を発信しているので、ご興味のある方はぜひチェックしてみてください。

 それでは、Yocco18の栄区キャラクター・本郷さかえを紹介します。

第2回 Yocco18栄区キャラクター「本郷さかえ」

 Yocco18・栄区キャラクター「本郷さかえ」のプロフィールはこちら!

●“起伏に富んだ豊かな自然に囲まれた、いたち川沿いののどかな街で生まれ育つ。真面目で几帳面な女の子。正義感が強く、困っている人をみたら放っておけない性格。
●社会に強い関心を持つ優等生タイプだが、やや完璧主義でイレギュラーに弱いところがある。アウトドア派なので自然の中で過ごすのが好き。
●趣味:蛍鑑賞、ハイキング、自然観察、歴史(考古学が好き)、弓道、サーチウォーク”

 横浜南西部に位置する栄区といえば、区内を横断する「いたち川」や、横浜市内最高地点のある上郷など、起伏に富んだ豊かな自然が特徴的なまち。

 Yocco18のキャラクターの中では、海や川を想起させる「青」や「水色」が似合うキャラクターが多い中、本郷さかえは全体的にアースカラーでまとめています。ダイナミックな地形や埋蔵文化財の研究拠点など、「土」や「地層」をイメージした力強い大地の茶色をキーワードにデザインしています。

 なお、栄区の誕生は1986(昭和61)年。区としての歴史は横浜市の中では新しい方ですが、現在でも古代の史跡が多く残されているなど、まちを歩くと歴史が身近に感じられる区でもあります。

栄区といえば「いたち川」。川沿いを歩けば、イタチを見ることができるかも!?

「本郷さかえ」の名前の由来

 まずは名前の由来をご紹介します。

 姓の本郷は、かつて存在した「本郷村」からとっています。本郷村は、現在の栄区の区域の大部分(主に東側)を占めていた村で、現在もJR根岸線「本郷台駅」の駅名などにその名が残されています。

 また、戸塚区から分区して栄区が誕生する以前、現在の区役所の前身にあたる出張所の名称は「戸塚区役所本郷出張所」でした。そのためか、現在の区名を公募により決定する際も、住民から最も支持された候補は「本郷区」だったようです。(なお「栄区」の得票数は4番目でした)。

栄区の中心に位置する古民家のある公園、「本郷ふじやま公園」。本郷は公園名や小中学校の名前で使われているほか、住所としては「本郷台」も存在する

JR根岸線の本郷台駅は栄区内にある唯一の駅にして、栄区役所の最寄り駅でもある

 鎌倉郡に属していた本郷村は、1889(明治22)年に笠間、小菅ケ谷、公田、桂、中野、鍛冶ケ谷、上野の各村が合併して誕生しました。なお、戸塚区に隣接する栄区の区域の西側はかつて豊田村でした。

わかりやすく、名前は区名から

 名前は区名のとおり、「さかえ」です。

 栄区の区名の由来は、“本郷、豊田の両地区の共栄を期し、新しい区として未来に向けて、大きく栄えていくことを祈願し、明るく、華やかなイメージのある、簡潔で、語調もよい区名を決定した”(栄区ホームページより抜粋)とあります。

 栄区の全地域が、ともに栄えていくことを願って付けられた区名ということですね。

「素敵な名前の『栄区』は、全国でも横浜市だけだよ!」

お団子のツインテールは「あーすぷらざ」がモチーフ

 ここからは、デザインの由来について紹介していきます!

 まず、お団子のツインテールが特徴的な髪型は、「神奈川県立地球市民かながわプラザ(愛称:あーすぷらざ)」の建物がモチーフになっています。 「あーすぷらざ」は、地球市民学習(地球規模の課題解決)や国際平和、多文化共生への理解を深めることを目的とした公共施設です。地球をイメージした円形のエントランスや、球体の展示コーナーなど、近未来風の建物が特徴的です。

本郷台駅の近くにある、神奈川県立地球市民かながわプラザ「あーすぷらざ」

本郷さかえの赤いラインの襟元も、あーすぷらざをモチーフにしている

市内最古の石橋「昇龍橋」モチーフのバンダナ

 頭にかぶっているバンダナは、いたち川に架かる「昇龍橋」がモチーフ。

 造られたのは明治中期~大正4年以前とされており、横浜市内に現存する最古の石造りの橋になります。また、橋を渡った先には石段が残されており、かつてその先には「白山神社」がありました。昇龍橋は白山神社の参道として架けられた橋です。

「昇龍橋」はアーチ形の石橋。神奈川の橋100選にも選ばれている

足元のレッグウォーマーは「横浜のグランドキャニオン」の地層がモチーフ

 「荒井沢市民の森」へと続く「洗井沢川小川アメニティ」。その近くには、通称「横浜のグランドキャニオン」と呼ばれる大きな断崖があります。本郷さかえが身に着けている茶色のレッグウォーマーは、断崖から見られる地層をモチーフにしています。

「横浜のグランドキャニオン」は真下から見ると迫力満点。このような地層が見られるのも栄区の魅力

エプロンは「鍛冶ケ谷」の鍛冶職人から!

 身に着けている紺のエプロンは、鍛冶職人をモチーフにしています。

 古くからの地名である「鍛冶ケ谷(かじがや)」は、鎌倉時代、武具や農具を作る鍛冶師が多く居住する職人のまちでもありました。そのため、「鍛冶ケ谷」と呼ばれるようになったそうです。

「鍛冶ケ谷市民の森」。古墳のひとつ、宮ノ前横穴墓群も保存されている

「鍛冶ケ谷市民の森」の尾根道はとても開放的

 また時代はさかのぼり、上郷では古代の大規模な製鉄遺跡である「深田製鉄遺跡」が存在しました。遺跡周辺の地面にはたくさんの砂鉄が含まれており、その砂鉄を溶かして鉄を作っていたそうです。その証拠に、この周辺では現在でも鉄を作った際にできる鉄くずを掘り出すことができるようです。また、当時は製鉄所で働くたたら師も多く住んでいました。

上郷高校の近く、「深田製鉄遺跡」があったとされる場所の周辺。縄文時代の住居跡「上郷猿田遺跡」もある

 古代から中世にかけてこのような歴史があることからも、本郷さかえは職人気質と言えます。

区の花「キク」のアクセサリー

 エプロンのひもについているのは、栄区の区の花「キク」をモチーフにしたアクセサリーです。

 区の花の「キク」は、1991(平成3)年に、区民の方の応募により決定しました。

栄区の区の花・キク。それにちなみ、栄区菊花大会などの菊花展も行なわれている(上記写真2枚は新井裕之さんご提供)

自然の中で過ごすのが好きなアウトドア派!

 本郷さかえはYocco18の中でも一番の「山ガール」。

 「横浜自然観察の森」があるため、自然の中で過ごすことが大好きです。横浜自然観察の森は、磯子区や金沢区にまたがる市内最大面積を誇る緑地帯の一部として保全され、日本で初めての自然観察の森として1986年にオープンしました。

 また、横浜市内最高地点(海面からの高度:159.4m)は上郷町にあります。周辺の尾根道は、横浜自然観察の森や鎌倉天園へと続くハイキングコースになっており、ちょっとした登山気分を楽しむことができます。そのため、ハイキングが趣味のアウトドア派なキャラクターです。

横浜市内の小学校の自然学習で訪れることが多い「上郷 森の家」も栄区

横浜市内最高地点は鎌倉市との市境、大平山の尾根沿いにある。なお、大平山の山頂は鎌倉市に位置する

 また、ハイキングが趣味の本郷さかえは健康意識も人一倍。

 栄区は高齢化率が31%と、横浜18区の中では最も高いですが、要介護認定率は17.5%と市内で最も低く、健康に過ごしている高齢者が多いことがわかります。また、横浜市の「健康に関する市民意識調査(2016年)」では、一か月の自分の健康について「健康である」「どちらかというと健康である」と答えた人の割合が横浜市内で最も高かった(86.8%)のも特徴です。

※高齢化率は2021年3月31日時点の年齢別人口(住民基本台帳による)の栄区を参照。また、要介護認定率は横浜市令和3年度介護保険実施状況より、2021年5月のデータを参照。

「ホタル鑑賞」が趣味!

 プロフィールのイラストにも描かれているように、栄区では区内の小川や市民の森などで野生のホタルを見ることができます。

 横浜市の中でも、野生のホタルの群生地として有名なのが「瀬上市民の森」。中心には瀬上池があり、瀬上池へつながる「瀬上沢小川アメニティ」は、横浜を代表する蛍の鑑賞スポットになっています。

ホタルの見ごろは毎年5月~6月。瀬上市民の森のほかにも、栄区では荒井沢市民の森などでも見ることができる

「埋蔵文化財センター」から、古代の歴史が大好き!

 栄区には、横浜市ふるさと歴史財団が運営する「埋蔵文化財センター」があります。旧野七里小学校の建物を利用した同館は、市内の出土品や発掘調査の研究資料が展示されている横浜の隠れた歴史発見スポット。また「栄区郷土資料室」も併設されており、栄区のかつての農村の暮らしなどを知ることができます。

野七里にある「埋蔵文化財センター」。誰でも見学することができる

 また、興味があるのは古代の出土品だけではありません。

 「定泉寺」にある「田谷の洞窟」は、全長1.5kmにおよぶ洞窟内の壁に、300体を超える仏像や仏画が彫刻されています。火を灯した1本のロウソクを持ちながら洞窟を進んでいくため、地底の冒険気分が味わえるスポットとしても有名です。

正式名称は「田谷山瑜伽洞(たやさんゆがどう)」。鎌倉時代に真言密教の修禅道場としてつくられたといわれている

 以上のことから、本郷さかえは地元の歴史に触れ、調べることが大好きです。

正義感が強く、困っている人をみたら放っておけない性格

 正義感が強い性格は、神奈川県警察官を目指す人たちが通う「神奈川県警察学校」があるためです。

 また、栄区はWHO(世界保健機構)地域の安全向上のための協働センターが定める『国際セーフコミュニティ都市』に認定されており、“安全・安心都市”のブランドを発信する取り組みに力を入れているまちでもあります。そのため、彼女自身もみんなが安心・安全に過ごせることを理想としており、困っている人は放っておけない性格です。

栄区役所にある「セーフコミュニティ」のコーナー。栄区は国内で7番目の登録にして、政令指定都市の区では全国で唯一の認定を受けている ※写真は2014年に撮影

街中でもセーフコミュニティの文字を見ることができる

まちや社会に強い関心を持つ優等生!

 栄区は自治会町内会の加入率が横浜で一番高く、また各選挙における投票率も横浜市内の中で最も高い傾向を示しています。そのため、政治や住民自治への参画意識が高い社会派のキャラクターとして描いています。

まとめ

 長くなりましたが、本郷さかえの説明は以上です!

 栄区はダイナミックな自然と遺跡が多く残るまちとして紹介しましたが、それ以外にも見どころはたくさんあります。今回は紹介できませんでしたが、武士の都・鎌倉に隣接しているため、鎌倉の歴史や文化の影響を色濃く受けたまちでもあります。鎌倉の鬼門にあたる場所に建てられた「證菩提寺」や、鎌倉周辺に見られるお墓の「やぐら」など、まだまだ多くの歴史的なスポットがあります。

 本郷さかえと一緒に、栄区の身近な自然と歴史を楽しむまち歩きにぜひ出かけてみてください!

 それでは、次回もお楽しみに!

※補足
Yocco18は有志により運営している市民発のプロジェクトです。本プロジェクトおよびキャラクターと横浜市(行政)の事業とは一切関係がございません。
Yocco18についてのご質問・お問い合わせはYocco18ホームページ(https://www.yocco18.com/)よりご連絡をお願いいたします。

参考文献および参考URL
横浜市市民局 『横浜の町名』 (1996年)
横浜市栄区役所地域振興課 『栄区郷土史ハンドブック』 (2008年)
横浜市栄区役所区政推進課 『さかえの見どころ!ガイドブック』 (2008年)
横浜市栄区役所区政推進課 『栄区紹介リーフレット「横浜 さかえ」』 (2021年2月)

横浜市栄区役所
https://www.city.yokohama.lg.jp/sakae/
神奈川県立地球市民かながわプラザ「あーすぷらざ」
https://www.earthplaza.jp/
横浜市役所 令和3年度介護保険実施状況
https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/fukushi-kaigo/koreisha-kaigo/toukei-tyousa/default20210406.html
横浜市役所 健康に関する市民意識調査
https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/yokohamashi/tokei-chosa/ishiki/kenko/survey.html
公益財団法人 横浜市ふるさと歴史財団「埋蔵文化財センター」
https://www.rekihaku.city.yokohama.jp/maibun/
神奈川県警察学校
https://www.police.pref.kanagawa.jp/mes/mes80000.htm

筆者プロフィール
遠藤 望(えんどう のぞみ)
Yocco18(横浜18区ブランディングプロジェクト) 代表/キャラクター原作

地理学×横浜愛×イラストでまちづくり
学生時代より地域に関心を持ち、横浜のまちづくりや商店街振興などの地域活動に広く携わる。大学では地理学を専攻し、地域愛着をテーマに研究を行なう。横浜中華街や日本大通りのまちづくり組織やデザイン会社での勤務を経て、現在はフリーのデザイナーおよびイラストレーターとして活動中。2019年に 「横浜18区ブランディングプロジェクト」を立ち上げ、横浜のローカルの地域の魅力を発信。2020年4月には、オリジナルの横浜18区キャラクターを活用した地域活性化プロジェクト「Yocco18」をスタートさせ、Twitterを中心に毎日情報を発信している。
Yocco18のキャラクターは自身が高校生の時(2010年)にデザインしたものを活用。横浜18区役所めぐりが趣味。横浜市西区出身。

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