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FF市販車最速の称号を持つメガーヌR.S.は街乗りでも痛快無比の走り

2021年06月12日 12時00分更新

愚かな血を抑えることができないラテンの走り

リアバンパー中央部に設けられたエキゾーストエンド

 スタートボタンを押すと、野太い音が室内に響き渡ります。これはライバルにはない音で、アクラボビッチのマフラーに違いないと思い尋ねてみると、なんと内製パーツというから驚き。しかもアクティブバルブ付きというから、街中ではソコソコ静か、そこそこ走りだすとイイ音が楽しめるというわけ。これはイイ!

まずはSaveモードで走りをチェック

 近年のルノー車は、MULTI-SENSEといって車両セッティングを細かく自分好みに調整できるのですが、プリセットされているSave、Sport、Raceのうち、まずはSaveから走り始めることにしました。

 この段階ですでに、一般的なクルマのスポーツモードと同等か、それ以上のハイレスポンスに驚き。ルノーはまったくもってセーブする気がないことを感じさせうれしくなります。こうでなくちゃ!

スポーツモードにチェンジ!

 とはいえ、メガーヌR.S.を購入したユーザーがデフォルトとして選ぶのはSportモードであることは言うまでもなく、さっさと切り替えて、本格的に走りだすことに。この手のモード切替をすると、アクセルレスポンスが向上し、ATのシフトタイミングが上まで回す傾向になります。その点は多分に漏れずメガーヌも同じ動きですが、痛快さが他社の比ではなく、少なくともシビック TYPE RのRモードと同程度がそれ以上。痛快無比とはまさにこのことで、クルマ好きなら、絶対に頬が緩むハズ。

メガーヌR.S.

 走りの面で20馬力の差を見出すことは難しいのだけれど、前期型と比べてトルクの立ち上がりが早まった様子。とにかくクルマが前へ前へと進みたがる、そんな印象です。このエンジンなら、ライバルに引け目を感じることはないハズ。

メガーヌR.S.

 ルノーらしく、足の良さは特筆すべきもの。もともと前期型も足がよかったのですが、さらにしなやかさが増したようで、前期型をドイツ的というなら、後期型はフランス的な味付けの印象。よくフランス車の足を「猫足」と表現しますが、これはもともとプジョーに対しての形容。ですが、その言葉しか出てこないほど、しなやかでスタビリティが高く、荒れた路面やギャップが怖くない。ドライバーに勇気を与えてくれる、そして楽しい気持ちにさせてくれる、運転が上手くなった気にさせる、実に罪な足。このルノーのセッティングの上手さに、最大の賛辞を送りたいと思います。

 300馬力というパワーと、最高の足回り。そして素晴らしいエキゾーストノートが、ドライバーに流れる愚かな血を沸騰させ、アクセルを踏みたいという本能的欲求を抑えることができません。300馬力というパワーは、電子制御のおかげもありますが、楽しくコントロールできる美味しいポイントで、必死ではなく、楽しくスポーツドライビングが楽します。このラテン的なノリは、ドイツ車や日本車にはない魅力。人生を楽しむことに長けたお国柄で生まれたクルマゆえの味付けなのでしょう。

メガーヌR.S.

 コーナーリングスピードが速いのも、メガーヌR.S.の特筆すべきところ。4コントロールと呼ぶ四輪操舵システムのお陰で、想像以上に切れ味が鋭く、そして安定してコーナーが旋回できます。ちなみに車速・操舵角・操舵速度から演算して後輪は同位相、逆位相と、その角度を切り替えるのですが、そのクセを考えながら走ると、より速く走ることができそう。ちなみにスポーツモードでは60km/h、レースモードでは100km/hで低速では逆位相、高速では同位相に後輪が動きます。

 シャシースポールが搭載するデフは、同社がR.S.デフと呼ぶブレーキをつまむタイプ。これがシャシーカップになるとトルセンLSDとなり、踏んで曲がるタイプに。4コントロールとトルセンLSDのコーナーリングはぜひ体験してみたい! きっとグイグイっとフロントが引っ張ってくれる走りが楽しめるハズ! 

RACEモードのメーターパネル。トラクションコントロールがオフになっているほか、衝突被害軽減ブレーキ機能もカットされる

スロットルペダルの動きも変わる

 とどめがレースモード。いわゆる電子制御がすべてオフとなる、最速仕様です。アクセルレスポンスは俊敏さを増し、さらに言えば、排気バルブも完全開放。AT時のシフトアップポイントも6500回転からレブリミットの7000回転へとチェンジします。

メガーヌR.S.

 「最近のホットハッチは全然ホットじゃない!」とお嘆きの人は、この走りを体験してみてください。人によっては手に負えそうにないと尻込みすること間違いナシの激辛っぷりで、一度体験したらやめられないとまらない。ルノーさん、こんなモードを用意していいんですか? もっとも、このモードを一般道で使うのは危ないので、あくまでも自己責任で、というのは言うまでもありません。

 さて。本気のスポーツハッチゆえ、走り楽しさにフォーカスしがちですが、普通に走ればジェントルなファミリーカーに変貌するのがメガーヌR.S.のよいところ。その時も4コントロールが姿勢制御に貢献し、ゆっくり操作すれば横揺れの発生が低減するします。いつでも、どこでも、誰もがハッピーになる、やっぱりフランスというお国柄から生まれたクルマですね。

【まとめ】ラストの純ガソリンエンジン搭載メガーヌR.S.になるかも?

フロントグリルにさり気なく置かれたR.S.のエンブレム

 その昔は多かったコンパクトカーのスポーツグレード。ですが、ライバルのシビックTYPE Rも終売するなど近年その姿は消えつつあります。ルノー・ジャポンの広報によると、欧州では脱炭素の流れが加速しておりガソリンエンジン車に対する税金が高く、おそらくこのメガーヌR.S.が最後の純ガソリンエンジン搭載モデルになるのでは? とのこと。

メガーヌR.S.のプライスリスト

 脱炭素社会への転換ということで、メガーヌR.S.のような「ガソリンを燃やして、力と官能を生み出す」内燃機関の時代の終わりが見えつつある今、最後のガソリン車としてメガーヌR.S.を手に入れて生涯楽しむのはアリなのかもしれません。そう考えると、一生モノのクルマが、464万円で購入できるのは破格ではないでしょうか。

メガーヌR.S.

 そして、メガーヌR.S.が日本市場に登場して4年目。このタイミングでマイナーチェンジが出るということは、数年で終わり、という可能性も否定できません。そして、たとえ長寿モデルになったとしても、おそらく2030年にこのクルマを購入することはできないでしょう。ライバルの終売や後継モデルの存在が見えないことを思うと「欲しい時が買い時」「買わずに後悔より買って反省」が今時のスポーツカーの買い方なのです。

メガーヌR.S.

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