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プジョーの新型SUV一気乗り! EVもラインナップされて猫足も健在

2021年05月05日 12時00分更新

3008の走り
プラグインハイブリッド化でパワーと4WDの安心を得た3008

 試乗インプレッションで最初に紹介したいのが、今回のマイナーチェンジで追加された「3008 GT HYBRID4」です。このモデルは3008シリーズ初となるプラグインハイブリッドで、しかも4WDです。現在のプジョーのSUVはFF(前輪駆動)を基本とします。それに対して、3008 GT HYBRID4は前輪だけでなく、後輪にもモーターを配置することで4WDとしています。前輪は最高出力200馬力の1.6リッター4気筒ガソリン・エンジンと110馬力のモーター、後輪は112馬力のモーターを搭載します。システム総合出力300馬力/最大トルク520Nm。13.2kWhのリチウムイオン電池を搭載して、最高64㎞(WLTCモード)のEV走行を可能とします。

 最初に舗装路を走らせたのですが、システム最高出力300馬力&最大トルク520Nmは伊達ではありませんでした。とんでもなく速いのです。CセグメントのSUVとしては、必要十分以上の動力性能です。でも、足回りが固められているわけではないので、ワインディングを飛ばすようなキャラクターではありません。そのかわりに段差を乗り越えるときのショックは少なく、ロールも自然で穏やか。乗り心地の良さが前面に出ています。高速道路を快適に移動できるのが狙いでしょう。トランスミッションのトルクコンバーター部にモーターを換装し、クラッチでコントロールするアイシン製ハイブリッドシステム「E-EAT8」のスムーズさも印象的でした。エンジンの稼働音は小さく、パワートレインがあまり主張しないというキャラクターです。

 また、1輪が浮いてしまうようなタイトコーナーもある急峻な坂道を走らせても、非常に安定しています。急坂を一定速度でゆっくり下る、ヒルディセントコントロールもありがたい装備です。キャンプやスキーなど、足元の悪い場所に安心して向かうことができるのが魅力です。

 デザインの良い実用的なSUVという土台に、PHVのパワフルさと4WDの安心感をプラスしたのが3008 GT HYBRID4でした。価格は565万円。1.6リッターのガソリン車と2リッターのディーゼル車の価格は397万6000円~473万6000円。エンジン車より100~150万円ほども高いのですが、内容を考えると価格は妥当なのではないでしょうか。それほど3008 GT HYBRID4の走りは満足感が高かったのです。

5008の走り
3列シートのファミリーカーらしい、5008の安心の走り

 続いては3列シートの5008。試乗は最高出力177馬力/最大トルク400Nmの2リッター直列4気筒ディーゼル・エンジン車の5008 GT BlueHDi。8速ATのFFモデルです。価格は5008シリーズで最も高い501万6000円です。走らせてみれば、力感は2リッターのディーゼル・エンジンとしては及第点。速いわけではありませんが不足もありません。エンジン音は控えめで、存在感の主張も小さなもの。また、コーナーのロールはゆっくりとしており、まったり&のんびりという言葉がお似合いです。3列シートに家族と荷物を満載して気分よく旅するのが狙いなのでしょう。同乗者を不安にさせない、落ち着いた動きに終始します。かつて“プジョーの猫足”と呼ばれたしなやかさは、最新の5008からも感じとることができました。

 また、ウッドチップを敷き詰めてデコボコ道として疑似オフロードを走らせても、FFの5008でも意外とすんなりとクリアできます。トラクションとブレーキを電子制御することで、高い走破性を実現するアドバンスドグリップコントロールがよい仕事をしているのです。アクセル操作にあまり気を使わなくても、スタックなしでコースをクリアできました。

 人と荷物をたくさん積むファミリーカーと、デザインや乗り心地の良さなどのプジョーの魅力が融合するSUV。それが5008でした。

2008の走り
一体感ある走りが楽しい2008

 最後に試乗したのが2008です。最高出力130馬力/最大トルク230Nmの1.2リッター3気筒ガソリン・ターボ・エンジンに8速ATを組み合わせるFF車です。試乗車は上級グレードの2008 GT Lineで価格は338万円。エントリーの2008アリュールは299万円です。

 乗り込んですぐに気づくのが「3008/5008と比べると、ひとまわり室内が狭い。そして質感も全体にランク下」であることです。デザインのテイストは同じなのですが、やはり車格の違いは明白です。外で見ると、上位2モデルとの差はあまり感じませんが、乗ってみるとやはり2008が小さいということがよくわかります。全長4302㎜のBセグメントの小さなSUVというわけです。また、パワー感も上位2台ほどあるわけもありません。

 では2008がダメかというと、それもまた違います。速いわけではいのですが、クルマが小さいということで一体感があって、運転が楽しいんですね。コーナーに向かってブレーキングをして、ハンドルを切り込んでいく。コーナーを抜けた後にハンドルを戻しつつ、アクセルを踏んで加速してゆく。そうした、動きひとつひとつが思いのままで、運転する実感、走らせる楽しさがあります。3気筒のエンジン・サウンドは、けっして気持ちよいとは言えませんが、8速ATとのマッチングもよいのでしょう。欲しいときに、欲しいだけの加速力を提供する、扱いやすさがあります。

 また、足回りも腰の強さを感じさせつつも、つっぱらない、しなやかなもの。まさに“プジョーの猫足”です。こうした小さくて運転の楽しいクルマこそ、プジョーの得意とするところでしょう。走りを楽しみたいというのであれば、3モデル中、最もオススメとなります。

【まとめ】プジョーの伝統と魅力を端々に感じる試乗

 フランスを代表する自動車メーカーであり、古い歴史を誇るプジョー。いつの時代も、優れたデザインを持つ実用的なクルマで人気を集めてきました。その最新のSUVである、2008、3008、5008を試乗してみれば、やはりプジョーの伝統の通り、素晴らしいデザイン、実用性の高さが備わっていました。そして2008はプジョーの走りの楽しさ、3008 GT HYBRID4は先進さと快適さ、5008にはファミリーカーとしての高い実力を見ることができました。

 輸入車といえばドイツ車ばかりがクローズアップされがちですが、フランス車という別の魅力ある選択肢も存在します。輸入車購入を考えているのであれば、プジョーのようなフランス車を試してみるのもよいのではないでしょうか。ドイツ車とは違う、楽しみを見つけることができるはずです。

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筆者紹介:鈴木ケンイチ

 

 1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。

 最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。


 
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