すっかり春めいた日が続く4月中旬、浅間山を望む奥軽井沢で開催されたプジョーの試乗会に参加してきました。ハンドルを握ったのは、2008、3008、5008という3台のSUV。最新プジョーSUVのオール・ラインナップです。
プジョーの数字の意味
数字で車格や世代を示すのがプジョーの名づけ方
インプレッションの前に、まず車名の説明をしましょう。プジョーは車名に数字を使うのが伝統です。最初の数字は車格を示し、最後の数字は世代を表します。車格が大きくなるほど、世代が新しくなるほど数字が大きくなります。車格で言えば2008の「2」はBセグメントで、日本車でいえばトヨタのヤリスクロス、ホンダのヴェゼル相当。3008の「3」はCセグメントで、トヨタのRAV4やハリアー、ホンダのCR-V。そして5008の「5」はDセグメントで3列シートを備えており、マツダCX-8などがライバルとなります。
また、2008、3008、5008の末尾の数字である「8」は、最新世代であることを示します。そして、真ん中に00を持つ4桁数字がSUVとなっています。逆に208、308と、ゼロひとつが普通のハッチバックやセダンとなります。こうしたプジョー独自のルールを知ってしまえば、車名だけである程度どんなクルマなのか想像できてしまうのです。とても合理的な命名方法ですね。
プジョーというブランド
世界で初めて自動車を量産したメーカー
次に簡単にプジョーというブランドについて説明します。
プジョーのエンブレムはライオンです。ここにプジョーの歴史のひとつがあります。プジョーの創業は古く、自動車生産よりはるか昔から、コーヒーミルなど鉄製品の製造・販売していました。200年も前の1800年代前半にはすでにライオンのマークを使っていたのです。「ライオンのように強い」というアピールだったのでしょう。そして、1800年代末には自動車生産に乗り出し、1890年に初のガソリン・エンジン車“クワドリシクル”を4台作製します。当時の自動車は手作りによる一点ものが常識でしたから、4台も同じモノを作って販売したプジョーは「世界で初めての自動車メーカー」と呼ばれることになったのです。ちなみに、エンジンはドイツのダイムラー製(今のメルセデス・ベンツ)です。ガソリン・エンジン車を発明したのはメルセデス・ベンツでしたが、自動車ビジネスを最初にスタートさせたのがプジョーだったのです。
プジョーの魅力
デザインの良さとコンサバな実用性の高さ
その後、プジョーのライバルとして、メルセデス・ベンツやフォルクスワーゲンといったドイツブランドや、同じフランスのルノーやシトロエンなどが登場します。しかし、プジョーはライバルに負けることなく、いつしかフランスを代表する大メーカーに成長したのです。個人的にプジョーの強みは、歴史的に終始一貫しているところだと考えています。第一にデザインがよかったこと。次に実用的で保守的でもあったことです。世界最先端の技術を売りにする高級車ではなく、デザインが良くて使いやすい大衆車がプジョーの最も得意とするクルマだったのです。
“デザインが良い”という特徴は、今回試乗した3台のSUVを見れば、誰もが納得できるのではないでしょうか。3台とも、彫刻的というかグラマラスで躍動的な印象を受けます。躍動感は、左右のライトからバンパーに向かって伸びるLEDデイタイム・ランニングライトの存在も効いています。“セイバー(サーベル)”と呼ばれる、このLEDライトがあることで、ライオンのマークを掲げる3台のSUVは、大型のネコ科の動物を彷彿とさせます。また、ディテールは違っているのですが、3台の印象は非常に似通っており、一瞬どれもが同じクルマのように見えてしまいます。強烈で一貫したデザイン・コンセプトのもとに生まれたということであり、それだけデザインの力が強いことを意味します。
3台の印象が似ているのはインテリアも同様です。実際のデザインは3008と5008が同じで、2008が異なりますが、統一されたコンセプトを感じます。ステアリングが小さく、その上から覗き込むようにメーターがあるところや、全体の色合い、シフトノブやスイッチ類などのテイストが統一されているのです。全体として、モダンで身体を包み込むような雰囲気です。3台ともシートは、ホールド性が高くて、手触りが柔らかく、座り心地に優れます。シートのデキの良さは昔からフランス車の伝統であり、最新のプジョーの3台のSUVも、そうした歴史をしっかりと受け継いでいます。
三者三様の個性を持つ3台のプジョーSUV
続いて3台のアウトラインを解説します。3008と5008は、実は兄弟車と呼べる関係です。どちらも、Cセグメントのハッチバックである308をベースにSUVとしたモデルです。3008は2列シートの5人乗りであるのに対して、5008は3列シートの7人乗り。2008は、さらに小さい208をSUV化したモデル。3008と5008は2016年にデビューして、2021年1月にマイナーチェンジを行ないました。2008は2020年9月に発売されています。2008はエンジン車だけでなく、EV(電気自動車)版のe-2008も同時に発売されているのが特徴です。また、3008は2021年1月のマイナーチェンジでシリーズ初のプラグインハイブリッド4WDグレード、3008 GT HYBRID4が追加されているのがトピックです。
ちなみに3モデルとも、衝突被害軽減自動ブレーキやステアリング・アシスト、ACC(アクティブ・クルーズコントロール)などの先進運転支援システムが、しっかりと用意されています。
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