週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

ESS Technologyが新開発DAC「ES9033Q」を発表、768kHz/MQA対応のモバイル用途向け?

2021年04月19日 15時00分更新

 少し前の連載で、現在のDAC IC市場はESS系とAKM系に二分されるという旨の記事を書いたが、その一方の雄であるESS Technologyから、新しいDAC IC「SABRE ES9033Q DAC」が発表された。

 ES9033QはPCMで最大768kHzのサンプリングレートを入力可能で、さらにMQAにも対応するなど最新のスペックを有している。MQA対応はA&Futura SE200で採用された「ES9068Q」に内蔵されたMQAレンダラー機能が知られているが、ES9033Qも同様の機能を持つと考えられる。

 注目すべき点は2V(いわゆるラインレベル出力)のドライバーを持っているということだ。ブロックダイアグラム図では右下方にDA出力の後段として採用されているのがわかる。

ブロックダイヤグラム

 これはどういうことか。DAC ICは単なる一つのICに過ぎない。オーディオの中で、デジタル信号をアナログ信号に変換するモジュールとして機能するためには、ほかにもたくさんの周辺回路が必要になるのだ。例えば、DAC ICは本来電流を出力するものだが、オーディオ回路では電圧の差を信号として認識しているため、どこかで電流を電圧に変換する必要がある。

 これはDAC ICの設計によっても異なっている。高性能DAC ICの代表として取り上げられることが多いバーブラウンの「PCM1704」は、DAC IC以外にもたくさんの周辺回路が必要で、電圧変換の精密な設計が求めらえることが知られている。こうしたICでは、IC単体だけではなく周辺回路を含んだコストがかかり、システムとしてはより高価で大規模なものになってしまう。それゆえに据え置きのハイエンド向け製品となるのだ。

 ESSは高性能のDAC ICというだけではなく、こうした周辺回路のワンチップ化にも積極的な会社だ。DAC ICがラインレベルの出力までできるなら、システム全体をコンパクト化できる。おそらくES9033Qは、こうしたワンチップ化を進め、モバイル製品への搭載に向いた系列のチップであると思われる。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事