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「ニューノーマルにおけるオンライン×習慣化テクノロジー」レポート

オンライン英語教育や卒煙プログラム提供者が語る「習慣化」のコツ

2021年04月16日 10時00分更新

 ASCII STARTUPと、オンライン英語学習などの学習事業を手がける株式会社スタディーハッカーは、「ニューノーマルにおけるオンライン×習慣化テクノロジー」と題したセミナーを開催した。

 このセミナーには、なかば強制的なデジタルシフトが起きているコロナ禍において、オンラインを活用した習慣化プロセスを積極的に活用した各種サービスを提供している関係者が登壇。パネルディスカッション形式で、成果を出すために必要となるポイントなどが紹介された。

 セミナーに参加したのは、オンラインフィットネスジム「Boot home」を運営している株式会社Boot home代表取締役社長 宮地俊充氏、医療機関や民間法人に様々な医療サービスを提供している株式会社CureAppの中克宣氏、そして英語パーソナルジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」などの教育サービスを提供する株式会社スタディーハッカー代表取締役社長 岡健作氏の3名。いずれのスタートアップも、内容こそ異なるものの、オンライン形式のサービスを提供する点が共通している。

 宮地氏のBoot homeは、オンラインのパーソナルフィットネスジムを運営し、会員それぞれに個人に合ったトレーニング指導や食事アドバイス、習慣化支援などを行っている。

 中氏は、CureAppの民間法人向け事業のひとつである「ascure卒煙プログラム」を担当。専門教育を受けた医療資格者が、アプリを活用しつつオンラインカウンセリングを行い、最終的にはサポートがなくても禁煙が継続できる状態になるよう導いているという。

 岡氏のスタディーハッカーでは、オンライン英語教育サービスの英語パーソナルジム「ENGLISH COMPANY」や「STRAIL」を運営。行動科学の専門家と共同で英語学習を続ける技術を開発し、習慣形成に重点を置いた英語学習サービスを提供している。

株式会社Boot home 代表取締役社長 宮地俊充氏

株式会社CureApp 「ascure卒煙プログラム」事業責任者の中克宣氏

株式会社スタディーハッカー 代表取締役社長の岡健作氏

レッスンを習慣付けることを重視しプログラムを設定

 パネルディスカッションでは、まずはじめに「オンライン×習慣化の威力を聞く」と題して、それぞれのサービス利用者が継続して取り組めるようにするにはサービスがどうあるべきなのか、という点について話が繰り広げられた。

 今回参加したパネリストが提供している、フィットネスジムや卒煙プログラム、英語学習といったものは、オンラインでなくても継続のモチベーションを保つのが難しい。増してそれがオンラインになると、人と対面することやレッスンの場に行くことがないため、より一層モチベーションの維持が難しくなる。

 そこで、パネリストが提供するサービスでは、モチベーションを高めるのではなく、レッスンを習慣付けることに力を注いでいるという。例えば、歯磨きなどはその作業をモチベーションを高めて継続しているのではなく、小さい頃からの習慣として身に染みついているため、意識せず毎日継続できているようなもの。つまり、レッスンも習慣付ければ、意識せずとも継続できるようになる、というわけだ。

 岡氏のオンライン英語教育サービスでは、「単語を覚える場合、いきなり”1日100個ずつ覚えましょう”とやるとモチベーションが下がってしまう。そこで、最初は単語の本を手に取るだけでいい、といったところから始める」という。取りかかりのハードルを大きく下げることで習慣付けていくことが重要と考えているそうだ。

スタディーハッカーが運営しているオンライン英語教育サービスは、レッスンを習慣付けることに力を注いで運営している

 中氏の卒煙プログラムも同様の考え方とのこと。そのうえで、「カウンセリングを行う指導員とアプリが”伴走”することで、参加者のニコチン依存症の心理的依存に対する離脱症状や不安をサポートすることで、禁煙を習慣化できるように」導いているという。

 ただ宮地氏は、「習慣化も重要だが、その前にユーザーがフィットネスによってどの程度変わりたいと思っているのかもポイント」で、受講者に合わせてプログラムを設定する必要があると説明する。

オンラインフィットネスジム「Boot home」も習慣化を重視した運営だが、「ユーザーがフィットネスによってどの程度変わりたいと思っているのかもポイント」と宮地氏は指摘している

 では、習慣化を実現するプログラムはどのように設定するのか。基本的には、プログラムスタート時にカウンセリングを行い、受講者が望む目標に合わせたプログラムを設定するが、「フィットネスの場合は、プログラムスタート後にフィットネスが楽しくなったりして目標が変わっていく」(宮地氏)ことがあるため、明確な目標を決めるのではなく、目標を育てていくイメージでプログラムを設定しているそうだ。

 また岡氏は、「英語がしゃべれるようになりたいという目標は遠すぎてゴールが見えにくいので、習慣化するためにはハードルの低い目標を立てるのが重要」と考えてプログラムを設定しているという。

 それに対し中氏は、「卒煙には明確な目標があるものの、その動機は人それぞれなので、それに合わせて個別に解決策を決めていく」ことを重視しているそうだ。

習慣化には指導員によるコミュニケーションやサポートも重要

 カウンセリングで個別のプログラムを設定したとしても、それを習慣付けるのはやはり難しく、指導員によるサポートも不可欠だという。

 ascure卒煙プログラムでは、基本的にはアプリを活用したオンラインプログラムのため、指導員とのコミュニケーションを図りつつ信頼関係を構築するところからスタートするという。「コミュニケーションを図りつつ、その人の目的や目標を設定していく。その中で、最終的に行動まで落とし込んでいって観察してあげるのが重要。それも、本人が考えて行動内容を発してもらうのが重要です」(中氏)。

 宮地氏は、「フィットネスの場合、最初はやる気があるので、そこで軌道に乗せていく」そうだ。ただ、ライブレッスンのように予約を入れたので行かなければ、という意識が働かないため、指導員がある程度引っ張ることも必要とのこと。合わせて、体重計で体重を確認したり、体型を写真に撮って変化を実感してもらうことで、嬉しさを実感して習慣付けにつなげているそうだ。

 それに対し、英語のレッスンは少々勉強したからといって目に見えて変化がわかることがないため、成果が見えにくい。とはいえ、「着実に進歩はしているため、そこを見つけて伝えることが重要」と岡氏は指摘する。「レッスンの結果、いい成果がでた、ということをきちんと認識してもらう。これが伴走するときの重要なポイント」(岡氏)とのことで、3ヵ月もすれば成果を認識してもらえ、その後はスムーズに行くことが多いそうだ。

 とはいえ、人によってはプログラム通り行かないこともある。そういったときには、毎日連絡取り合えるアプリを使って日々やりとりするという。「今の自分に何か乗せていくというプラスの習慣化が英語学習。どんな小さいことでもいいのでリアクションをかえすことで刺激を入れる」(岡氏)ことによって、習慣化につなげられるよう手助けを行っているそうだ。

英語学習のオンラインレッスンを習慣化するには指導員によるサポートも重要で、「どんな小さいことでもいいのでリアクションをかえすことで刺激を入れる」ことで習慣化の手助けをしているという

ニューノーマルではオンラインコーチングソリューションが大きく拡がる

 ではそれぞれのサービスはどういったテクノロジーや考え方によって作られたのだろう。

 ascure卒煙プログラムの場合は「医療機関向けサービスで得た知見をもとに、民間向けに提供したときにどれだけ違和感なく使えるか、医者ではできない部分を専門指導員が伴走することでどれだけ変えられるか、というところに注力」(中氏)してアプリを開発したという。ほかに参考にしたアプリなどはなく、ほぼ独自のテクノロジーや知見をベースに開発しているそうだ。

 また、宮地氏のオンラインフィットネスジムは、「長く続ける、自分の身体や健康に長期的に投資したいという考え方」に基づいて設計しているという。ただ、競合の短期集中型サービスを研究して取り入れている要素もあり、それによってやりたいことと設計が崩れたと思った部分もあるため、現在再構築中とのことだ。

「Boot home」は「長く続ける、自分の身体や健康に長期的に投資したいという考え方」に基づいて設計している

 そして岡氏の英語レッスンも、長期的に取り組めることを想定して設計しているという。ただ、提供しているレッスンは3ヵ月間の短期集中型となっていることから、「モチベーションを上げるサービスと思われがち」(岡氏)と指摘しつつ、「その3ヵ月は習慣を身につけるために設定しているもの」とのことで、その3ヵ月間で英語学習を習慣化して、長期で取り組めるようにシステムを構築しているそうだ。

 そして、今後ニューノーマルが当たり前の世界になったあとについては、3社ともオンラインコーチングソリューションがさまざまな分野で採用が拡がっていく、という共通認識を持っているという。合わせて、「人と会えなくなったことで、モチベーションを上げるきっかけが減り、個々のビジネスパーソンのパフォーマンスに大きく差が出てきている。人的接触がないなかで何かを成し遂げることが重要になってくるため、そこをどう乗り越えていくのかが課題になる」(岡氏)とし、それに合わせたサービスの構築が重要になってくるとの見通しを示した。

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