先週ソニーが、独自の立体音響技術である「360 Reality Audio」を国内でも本格的に導入することを発表した。発表では、邦楽コンテンツの充実なども図られていくと考えられる。スマホやタブレットなどの再生機器を主にターゲットとしているとも言われているが、ポータブルオーディオにはどう影響していくのだろうか? またどのような準備が必要となるのだろうか?
紹介動画
アップルの空間オーディオと似た印象だが、性格は異なる
360 Reality Audioは、国内ではAmazon Music HD、海外ではDeezer、TIDAL、nugs.netなどでの配信が開始されている。nugs.netは聞き馴染みがないかもしれないが、ライブ音源を中心に配信展開しているサービスで、MQAも初期に取り込むなど新技術の導入にも前向きなサービスだ。
3次元的な音の広がりを意識したフォーマットということで、アップルの「空間オーディオ」も連想するが、再生機器の動的な位置変化にフォーカスしている空間オーディオとは異なる。例えば、空間オーディオは最新のアップル機材を要求するのに対して、360 Reality Audioでは機器の条件がゆるやかだ。ただし、ソニー製(360 Reality Audio認定機器)ならば、最適化した「よりよいサウンドが楽しめる」というスタンスを取っている。
コンテンツに関しては、空間オーディオはアップル独自フォーマットを要求しない反面、必然的にドルビーアトモスなどを採用している映画コンテンツが主となる。360 Reality Audioでは、独自のエンコードを必要とするため、製作・配信側の対応が必要となるが、音楽などのコンテンツを楽しめることも想定している。nugs.netが取り組んだのもライブの臨場感あふれる再生が可能だからということだろう。
また、音楽プロバイダーでもあるソニーならではなのかもしれない。
いずれにせよ、360 Reality Audioはより広い音楽ファンをターゲットにした技術といえるし、タブレットやスマホでこそ楽しむものだと言えるかもしれない。
標準化されたMPEG-H 3D Audioを利用している
前述のサービスで360 Reality Audioを楽しむための必要条件を見てみると、Amazon MusicではHDサブスクリプションが必要であり、TIDALやnugs.netではHIFIサブスクリプションが必要とされている。ちなみにドルビーアトモス配信でも同じ条件となる。
360 Reality Audioは、オブジェクトベースと呼ばれる仕組みを採用しているのが特徴だ。メタデータとして音の位置情報を持たせ、音楽そのもののデータと一緒にコード化して送る形式だ。ここはドルビーアトモスでも同様だ。
ただし、360 Reality Audioの実体は、ソニーの独自エンコーディングではなく、MP3やLC3の開発などで知られるドイツのフラウンフォーファー研究所が手掛けた「MPEG-H 3D Audio」である。同社にサイトにも、360 Reality AudioがMPEG-Hを採用した技術であることが解説されている。これは標準技術であるため応用範囲は広い。
360 Reality Audioをストリーミングで楽しむための再生機器は一般的なものを使用できる(ソニー製の最新ヘッドホンでは最適化できる)。また、社外製でも認証制度を行っていて、このサービスを楽しむための推奨機器認定をするとしている。すでにいくつかのメーカーが名乗りを上げているようだが、これは最近発表された「Snapdragon Sound」のようなゆるい囲い込み戦略(バッジ認定戦略)を感じさせる。
使用するヘッドホンは問わない、ワイヤレスでもOK
実際に一般的なヘッドホンでも再生が可能かどうか。ag「WHP01K」を用いて、「Artist Connection」アプリで試してみた。いまスマホやタブレットで360 Reality Audioを楽しむには、「Headphones Connect」アプリとこのArtist Connectionアプリを使うといい。再生はArtist Connectionアプリを使い、Headphones Connectアプリはソニー製ヘッドホン用に最適化処理をするために必要となる。アプリはiOS用もAndroid用も用意されている。
ワイヤレスヘッドホンで使うBluetoothはロッシーの伝送だが、スマホまでがロスレス伝送(オブジェクト情報を保持したデータ)になっていれば、デコード自体はスマホで行うので、スマホとヘッドホンの接続にBluetoothを使っても問題ないのだろう。360 Reality Audioはオブジェクトベースという最新の技術を使ってコンテンツ制作やエンコーディングをしているが、一般的なヘッドホンで再生する際には一度2chのPCMにデコードしたものを再生し、さらにBluetoothで伝送する際はこのデータをSBCやAACなどのコーデックに再変換するのだと考えられる。
さて、ヘッドホンをスマートフォンに接続し、Artist Connectionアプリを立ち上げて「360 Reality Audio」を選択すると専用の画面が現れる(画像1)。この5番目が通常の2chステレオ音源であり、6番目が同じ音源を360 Reality Audioで再生できる音源なので比較がしやすい。
実際に聞いてみると、通常の2chステレオ音源では左右(水平方向)に分かれていた楽器の音が、右斜め上など音の位置がわかるように(立体的に)再生される。一般的な機材を使用しても効果はあると感じた。そのため、WHP01Kのような立体感がわかりやすいヘッドホンにも向いていると思える。こうしたオーディオ的に立体感のある機器と、認定機器のどちらが、結局、360 Reality Audioコンテンツをよりよく楽しめるかを評価するのも、オーディオ的に面白いテーマのひとつになっていくかもしれない。
音楽に向けた3Dフォーマットである点が特徴か
とまれ、最後にはじめの問いに答えを出すと、ポータブルオーディオにおける、360 Reality Audioのインパクトというのは、従来よりも空間的な臨場感の高い音楽が楽しめるという点にあることになる。そのためにライブ配信のnugs.netも取り入れているわけだろう。映画だけではなく音楽でも楽しめるというのがポイントとなってくる。
オブジェクトベースのフォーマットに加え、もうひとつのポイントが個人最適化技術だ
どのような準備が必要かという点においては、ヘッドホンなどはBluetoothワイヤレスも含めて、特殊なものは必要ない。可能なら、ソニーの最新機種、あるいは360 Reality Audio認定機種を用意すれば、最適化によって、さらに楽しめるということになる。ただし、ストリーミングで楽しむためにはロスレスプランが必須条件となる。
いずれにせよ、展開はまだまだはじまったばかりであり、今後の流れにも注目していきたい。
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