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飲食店オリジナルメニューの仕込みや加工を少ロットからネット注文できる「ロカルメオーダー」

 スパイスコード株式会社は、日本のフード産業のDXを促進し、サプライチェーンの最適化に取り組む2019年創業のフードテックスタートアップ。製品第1弾として2020年3月にネット食品OEMサービス「ロカルメオーダー」をリリース。食品工場をネットワーク化し、仕込みに時間がかかる煮込みやオリジナルソースなどの食品製造がネットで発注できるというもので、現在100種類を超える食品を大手外食チェーンや居酒屋、高級フレンチなどに提供している。2021年2月8日には2億円の資金調達を達成。同社代表取締役の中河 宏文氏に、「ロカルメオーダー」開発の背景、少量多種のOEMを可能にするための仕組みについて聞いた。

スパイスコード株式会社 代表取締役 中河 宏文氏

外食産業のサプライチェーンをDXで最適化

 日本の飲食業界は、低い労働生産性と人手不足の環境下で、長時間労働が常態化している。レストランの厨房は営業時間外も早朝から深夜まで仕込みに追われ、身体を壊して辞めていく人も少なくないそうだ。少子高齢化による人手不足に加え、働き方改革で社会の意識も変わり、これまでのような過酷な労働環境は許されなくなっている。

 中河氏がフード業界のDXに取り組むきっかけは、中河氏の妻の野崎 翠氏が料理人で、飲食業界の実態を知ったのが始まりだ。野崎氏は、2015年度イタリア料理コンクールで女性として市場初優勝し、JALの機内食監修、多数のTV出演など華やかな実績をもつが、実際の現場は非常に過酷だったという。

 現場が長時間労働を強いられる原因は、日本の飲食業界の生産性の低さにある。飲食店は規模の大小にかかわらず、それぞれ独自のこだわりを持ち、複雑な工程で時間のかかる料理を素材の下ごしらえからすべて内製するのが基本。しかし、仕込みに時間が取られて、新メニューの創案や従業員教育に取り組めず、従業員のモチベーションも売り上げも高められないという悪循環に陥ってしまう。量産された業務用加工食品を使えばコストは下げられるが、伝統の味は損なわれてしまうし、店のオリジナルレシピをOEMするには、大量注文しなければコストが見合わない、という壁があった。

 外食各店のこだわりの味を少量からOEMできるようにするためにスパイスコードが考えた解決策が、全国に点在する食品加工工場をネットワーク化して飲食店とつないでオンラインで受発注できる仕組みだ。少量ずつの発注でも複数の業者から依頼を受ければ工場の稼働率が安定するので、食品加工工場側にもメリットがある。

 「ロカルメオーダー」はスマホアプリからサンプルを申し込むと、セントラルキッチンと食品加工工場でサンプルを製造し、最短3週間でサンプルが届く。試食後に正式に発注となり、最短2ヵ月での納品が可能だ。

ロカルメオーダーの注文の流れ

 OEMといっても単純にお店のオリジナルレシピを工場に伝えれば、すぐに同じものが再現できるわけではない。厨房の料理人と工場の作業員の知見やノウハウの違いや、調理設備や工程の違いがあり、この差異をすり合わせるための翻訳作業が必要だ。また、そのままのレシピを工場の製造ラインに乗せると、再現性と経済性が合わない場合もある。スパイスコードは、工場の情報やメニューに用いられる原料などをデータ化し、案件に応じて、その加工を得意とする工場を探し、最適な価格で高品質な味を再現するためのシステムを構築している。

 現在、大手飲食チェーン、大衆居酒屋のジリオン、高級フレンチのひらまつなどがソースや煮込みなど、加工度の高いものを中心に利用しているという。導入企業からは品質と価格の安さに加えて、現場の負担が想像以上に減ったと好評で、クチコミでほかの飲食店へも広がっているそうだ。ジリアンの例では、初回は3種類のソースからスタートし、2020年秋には10商品、現在は30商品近くまで発注が増えている。また大手飲食チェーンでは、コストダウンのために自社所有セントラルキッチンを閉めて、ロカルメオーダーへの移行を進めているとのこと。

 現在は、首都圏を中心に10社の食品加工工場と契約。品質を担保するため、各工場に足を運び、設備や工程をチェックし、どの工場で何が作れるのかを定量的に計測し、データベース化している。今後は契約工場を全国へと拡げていくとともに、食品工場と飲食店だけでなく、生産者や流通を含めた飲食業界のサプライチェーン全体の最適化を図るのが目標。現在は、食品工場の売上に対して数%を手数料として利益を得ているが、将来的には、サプライチェーン全体の最適化から削減されたコストを利益とするビジネスモデルへ移行していきたいという。

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