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町田とベトナムから世界一を目指す!行動認識AIのアジラに人材戦略を訊く

2021年02月02日 12時00分更新

 日本人とベトナム人によって共同設立された株式会社アジラは、いまや行動認識AIにおいて世界有数の技術を持つスタートアップです。

 現在では日本とベトナムだけのみならず、世界各国のエンジニアから注目を集めています。

 本記事では同社代表取締役社長兼CEOである木村大介氏とベトナム法人CEOであるグエン・タイン・ハイ氏に、優秀な人材が集まる魅力的な組織を作り上げる秘訣を伺いました。

写真左:アジラ 社長兼CEO 木村大介氏 写真右:マスクド・アナライズ

ベトナム法人CEOであるグエン・タイン・ハイ氏(写真左下)はリモートにて参加いただきました。
また、他社員の方々も参加いただいております。

起業に至るまでの経緯

マスクド: NTTグループやぐるなびでITエンジニアとして活躍されてから、アジラを起業されましたね。

木村:前職ではビッグデータの解析プロジェクトを統括していましたが、当時の日本にはデータサイエンティストがほとんどいませんでした。

 海外から人材を探すことになり、2013年頃にベトナムに出向き、アジラの共同創業者となる(ミスター)ハイと(ミスター)タイに出会います。

 そこでお酒を飲んで三人が意気投合し、義兄弟の契りを交わしたのが始まりです。

マスクド:三国志における「桃園の誓い」みたいですね。

 当時はオフショア開発先としてアジアでITエンジニアが増えていましたが、なぜベトナムを選んだのでしょうか。

木村:ベトナムの北部にあるハノイのエンジニアは、アルゴリズムやコンピューターサイエンスに強いのが、大きな理由です。

 対してベトナム南部のホーチミンだと、マーケティングやユーザーインターフェースに強く、異なる特徴を持っていますね。

 2014年頃にディープラーニングが登場して、ハイとタイと私の三人がベトナムで試行錯誤をしながら、「凄い技術だからぐるなびでも活用したい」とぐるなびの社長に直訴しました。

 しかし社長からは「飲食店に資する施策ならともかく、テクノロジードリブンでは通らない。やりたければ自分で起業してみろ」と、発破をかけられたんです。

 そこでハイに相談したら「一緒にやりましょう!」と言われて、日本とベトナムでアジラを共同創業しました。

 共同創業した理由は、ベトナムにはまだスタートアップに出資するエコシステムがなく、オフショア委託先ではなく対等なパートナーとして、お互いが成功できるモデルに挑戦したかったからです。

マスクド:日本とベトナムの共同創業では、遠隔地だけでなく文化や商習慣の違いもあります。

 ニ拠点展開で苦労したことはありませんか?

木村:ビジネス面はハイが、日本側に合わせてくれてやりやすかったです。

 一方で技術開発だと、日本人とベトナム人のエンジニア同士で衝突もあり、苦労しました。

 日本人は自分を抑えて組織に合わせますが、ベトナム人はどちらかというと自信家で自分の意思はっきり主張しますし、日本のような長時間労働を良しとせず、時間通りに終わらせようとします。

 こうした文化の違いはありますが、エンジニアとして自己 PRが上手な点などを見習うようにしていますね。

 日本人社員も影響を受けるようで、大手メーカーからアジラに転職した社員も、入社半年ながら忖度なしではっきりと物申すようになりました。

マスクド:お互いが刺激を受けながら成長していく、好循環になっていますね。

 昨今は新型コロナウイルスの影響で日本とベトナムの往来は難しいですが、どのような影響がありますか?

木村:当初は私がベトナムに訪問できず、意思疎通が進まずに研究開発のスピードが落ちるのではと懸念がありました。

 エンジニアに「これはできない」「世界中でやっている人がいない」と言われても、私が対面で「だからこそやる意義がある」と叱咤激励して、お互いの意見をぶつけあってでも、議論しなければ開発は進みません。

 もっとも意見がぶつかることがあっても、3日後には友達になっていますが。 私がベトナムに行けない時期は、ベトナム拠点のハイや一条と毎日何度も密にコミュニケーション取りながらリモートで私の意思を汲み取ってくれて、ベトナム側に展開してくれるようになりました。

ハイ:アジラはベトナムと日本に拠点がありますが、一つのチームとしてうまく運営しています。

 未知の技術や最新のトレンドに挑戦する環境なので技術的な壁はあっても、組織の壁は作りません。
 フラットな組織でお互いに意見を出し合うので意見がぶつかることもありますが、誰が困っていたらすぐサポートしてくれます。

 それがアジラで働く面白さだと思いますよ。

アジラ流の人材育成と採用

マスクド:人材育成はどのように進めていますか?

木村:決められた育成カリキュラムはありません。

 お客様が求める価値をどうやって作るかが重要なので、そのために試行錯誤を出来るかどうかですね。

ハイ:ベトナムも同じで、インターンでも開発プロジェクトに参加しながらOJTで学んでいきます。

 AI開発には正解や仕様書がないので、自分で考えて手を動かせる人が伸びていきますね。

マスクド:人材採用に苦労するスタートアップはありますが、アジラ様はいかがでしょう。

木村:幸いにして弊社は認知度もあって、Wantedlyの注目度ランキングでもおよそ3万5000社中の250位ぐらいです。

 応募者に弊社を選んだ理由を聞くと、「社員紹介の記事を読んだ」という人が多く、これは社員が本音をそのまま記事にしているのが人気なのでしょう。 他にも、私のTwitterを見て「社長が面白そう」「人材募集を知った」という人もいますね。

マスクド:人材採用後には、評価が課題となります。

 特にエンジニアは営業のように成果が可視化出来ず評価は難しいですが、納得できる評価体制はどのように構築していますか

木村:日本は顧客と案件を管理するプロジェクトマネージャーが多いので、売上などの指標がわかりやすいです。

 逆にエンジニアが多いベトナムでは、評価が難しくなりますね。

ハイ:ベトナムではエンジニアの評価について、OKRという目標設定をベースにして、私とエンジニアが入念に話し合います。

 私は共同創業者ですがエンジニア出身なので、技術におけるKPIや難易度の評価について、共通の価値観で話せますから。

 これらを踏まえて、プロジェクト終了後に成果を反映して、エンジニアが納得できる評価を実現しています。

マスクド:将来、組織が拡大すると、意思疎通などが難しくなります。

 社風や社内文化を維持する上で、懸念はありませんか?

木村:アジラはまだ創業期なので、早い段階から20代の若手をマネジメントや経営に参画させて、私とアジラのスピリットを継承できるようにしたいです。 自分の代わりに活躍できるように新陳代謝を進めて、同じスピリッツをもった、新アジラを作りあげてほしいです。

 それに組織や事業は拡大させるばかりでなく、いわゆる「集中と選択」も必要です。

 もしも結果を出せなければ、ドラスティックな決断が求められるでしょう。

 スタートアップである以上、こうした局面も避けられないと思います。

ハイ:ベトナムでも同じようにアジラにおけるミッション・ビジョン・バリューを、全員で共有する事が大事だと考えています。

 そしてベトナムでも、いたずらにエンジニアの人数を増やさないようにしています。

 なぜならアジラが目指すのは、より高い価値を生み出すことであり、人を増やすことではありませんから。
 あくまで組織運営や仕組み作りを、重要視しています。

行動認識AIで世界一を目指してSDKを展開

マスクド:最後に今後の展望についていかがでしょう。

木村:アジラのゴールは行動認識AIで世界一を目指すことです。

 行動認識AIでは誰にも負けたくないので、私の代では無理でも、その意思を引き継いでずっと挑戦し続けたいです。

 現時点では世界トップクラスですが、今年の世界的なコンペでの「MOT Challenge」などで、世界一を狙っていますよ。

 直近の成果としては、アジラが開発した行動認識AIを、SDKとしてリリースします。

 こちらは「早い・安い・上手い」をモットーに、各種イベントにも出展するので、ぜひ体験してほしいです。

リモートにて取材に参加いただいたベトナム拠点のメンバー集合写真

まとめ

 本取材を通じてアジラが持つ魅力として、技術力の高さや世界一を目指す社風、日本とベトナムのフラットな組織だけでなく、木村氏やハイ氏を始めとした共同創業者の想いも伝わってきました。

 アジラで活躍するのは国籍や性別や人種の壁を超えて多様性を重んじる人材だそうです。

 直近ではベトナムやアジアだけでなく、インド・北米・ヨーロッパからも応募があり、東京都町田市から行動認識AIで世界一を目指す、アジラの将来が楽しみです。

著者プロフィール
空前のAIブームに熱狂するIT業界に、突如現れた謎のマスクマン。
現場目線による辛辣かつ鋭い語り口は「イキリデータサイエンティスト」と呼ばれ、独特すぎる地位を確立する。
"自称"AIベンチャーを退職(クビ)後、ネットとリアルにおいてAI・データサイエンスの啓蒙活動を行なう。
将来の夢はIT業界の東京スポーツ。
著書『AI・データ分析プロジェクトのすべて』(技術評論社刊)が好評発売中(増刷決定しました!)。

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