複数台契約や通話し放題など
先端を進みすぎてたPHS
1995年から始まったPHSが、ついに今月いっぱいでサービスを終了する。開始当初はNTTパーソナル、アステル、DDIポケットの各グループがしのぎを削っており、携帯電話より安く維持できることから、若者の間で人気が爆発。女子高生の間での愛称「ピッチ」が浸透するなど、携帯電話のシェアを脅かす存在となった。しかし、その後シェアが伸び悩み事業者は次々に撤退。DDIポケットがウィルコムと改名して孤軍奮闘を続けたが、そのウィルコムも2010年に実質的に破綻。その後、イー・アクセスと経営統合して、企業としてのウィルコムは消滅した。
筆者はPHS歴約15年なのだが、ウィルコムからPHSに入ったので非常に寂しかったのを覚えている。そんなイー・アクセスも同社のブランド「イー・モバイル」がブランド統合で「Y!mobile」になり、会社名もイー・アクセスからワイモバイルに変更された。そしてワイモバイルはソフトバンクモバイルに吸収されてソフトバンクに……。このようにPHSの歴史は波瀾万丈だったのである。新しモノ好きが多いASCII編集部でも、昔は持っている人が何人かいたが、気がつけば筆者とスマホ総研ボスのオカモトの2名だけになってしまった。
さて、そんなPHSも2018年3月いっぱいで新規受付が終了し、当初の予定では2020年の7月でサービス終了のはずだった。新型コロナウイルスの影響で終了時期が延期されたものの、とうとう2021年1月31日で個人向けサービスは終了する。ソフトバンクに問い合わせてみたが、これ以上の延期はなく、今月いっぱいで終了するのは間違いないとのこと。オンラインでの移行受付は15日で終了しているので、31日までは実店舗のみで移行手続きを行なうそうだ。
PHSユーザーは移行か去るか辞めるかの3択
ここからが本題。PHSが終了するにあたって、ユーザーの選択肢は3つ。Y!mobileのスマホプランに移行するか(機種変更)、MNPで出て行くか、解約するかだ。なお、現在移行キャンペーン中で、事務手数料や解約料は無料になっているので、もう使わないという人は何もする必要はなく、31日を過ぎれば自動的に解約となってサヨナラになる。ただし、ホームアンテナを借りている人は返却しよう(返却先はY!mobileのサイトにて)。
MNPはスマホがないとできないので、カスタマーセンターに電話するか実店舗に行って発行してもらうしかない。これは結構メンドクサイ。そこでオススメなのが機種変更だ。
今はPHS移行キャンペーンで、様々な端末が一括0円で手に入る。オンラインでの受付は終わっているが、それぞれの店舗でも一括0円端末を用意しているそうだが、店舗によっては在庫次第のようだ。なお、一括0円になっているのは以下。
- iPhone SE(第2世代) 64GB
- Xperia 8
- Android One S6
- Android One X5
- かんたんスマホ2
- かんたんスマホ
- DIGNO ケータイ3
- AQUOS ケータイ3
- Simply
このラインナップを見ると、iPhone SEとXperia 8に人気が集中しそうだ。なお、筆者はiPhone SEにした。
プランは「スマホベーシックプラン S/M/R」のいずれかに加入が条件となる。元々PHSは通話にしか使ってなかったので、筆者はSにした。基本料金は月2680円で、6ヵ月間は新規割で700円が割引かれる。通話は「スーパーだれとでも定額」の1100円が次回機種変まで無料なので付けておこう。通話の時間と回数を気にしなくていいのは心強い。さらにデータ増量オプションも月500円が1年間無料になるので加入。スマホベーシックプラン Sのデータ容量3GBに1GBが加わり、月4GBの運用ができる。
筆者はDSDV対応のAndroidスマホにY!mobileのSIMを挿して、片方にデータ通信専用SIMを装備。通話と通信を分けている。だったらY!mobileのSIMは「ケータイベーシックプランSS」(通話のみ月934円)でもいいじゃないかと思ったのだが、どうせなら保険として4GBは持っておきたいという貧乏根性が出てしまった。あと通話プランじゃiPhone SEは対象外だったし……。
「@pdx.ne.jp」や「@willcom.com」といったウィルコム時代のメールアドレスが引き継げるのもありがたい。今となってはほとんどキャリアメールは使わないかもしれないが、それでも過去の思い出とともにスマホという新天地に移動できるのはうれしいものだ。
なお、現在のスマホベーシックプランは2年契約もないし解約料もない。PHSから移行したけどやっぱりほかのサービスに魅力を感じればMNPでの転出も可能だし、解約もオンラインできる。一括0円の端末は途中でMNPしても解約しても、とくに残債やペナルティーは残らないとのことなので、そのまま手元に残る。
またウィルコム末期に実施されていた「もう1台無料キャンペーン」で複数回線(最大3回線)持っている人は、3回線とも移行可能とのこと。ひとつはiPhone SE、2台目はXperia 8、3回線目はAQUOSケータイ3なんてこともできるし、3回線ともiPhone SEにして、iPhone SE3台持ちなんて荒技もできる。なお、実店舗でもPHS移行キャンペーンは開催しているが、端末代金はすべてが0円とは限らないので、事前に店舗のサイトなどで確認しておこう。事務手数料はオンラインと同じく無料だ。
Y!mobileは2月から新プラン「シンプル S/M/L」が始まる。こちらはスマホベーシックプランから通話放題をなくし、5Gに対応するもので、データ容量はSが3GB、Mが10GB、Lが20GBと、Lのみ増量されている。通話はあまりしないという人はプラン変更してもいいだろう。
このように、ほぼメリットしかないPHSの移行だが、何度も言うように今月いっぱいなので、iPhone SEなどが欲しい人は1日でも早く移行しよう。月末は恐らくお店が混み合うので(コロナの影響もあり)、行けるときに行っておこう。31日をすぎると自動解約となるので、端末が無料でもらえないばかりか、電話番号もなくなってしまうのでMNPすらできなくなってしまう。
もし解約するなら、PHS最後の日の日付が変わる瞬間に通話をし、電波が切れるのを見届けて(聞き届けて?)ひとつのテクノロジーの終焉に立ち会ってはいかがだろうか。
移行時の注意点 その1
IMEIロックに気をつけろ!
ソフトバンクやY!mobileは、SIMロックのほかにIMEIロック(制限)というものがある。これはiPhone専用のSIMと、NFC対応のAndroidスマホ、NFC非対応のAndroidスマホ、という3パターンが存在し、契約時に選んだ機種によって変わる。今回の例で言うと、iPhone SEで契約したSIMをAndroidスマホで使うことができない。なので、使う端末に合わせて契約しよう。
iPhoneのSIMをAndroidで使えるようにするには、Y!mobileのショップに持ち込んでSIM交換をしてもらう必要がある。これで「n101」というマルチに使えるSIMに交換してもらえる(オンラインショップでは受付ていない)。ただし、手数料(3000円)が発生する。これでiPhoneでもAndroidでも普通に使えるようになる。なお「n141」のSIMをiPhone以外に挿すと、通話はできるがネットワークにアクセスできないという状況になる(3Gの表示は出る)。
移行時の注意点 その2
メールアドレスを引き継げるが……
ウィルコム時代のメアドを引き継げるのだが、ソフトバンクの「S!メール」(MMS)として、になる。筆者は通話回線をY!mobile、、データ回線をDMMモバイルにしているのだが、メールを受信するにはY!mobileのSIMに切り替えてデータ通信をしないといけない。非常にメンドクサイので、たまにチェックするくらいにして、徐々にこのメアドはフェードアウトさせていこうかと思っている。せめてWi-Fi環境でアクセスしてくれるとありがたいのだが……。
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