週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

日立製作所の東原敏昭社長兼CEO

世界には制約があり、限りがある、大量生産/大量消費時代で社会を持続させるには?

2020年11月09日 13時00分更新

第3の選択肢、新たな社会イノベーション

 ひとつめの手段は、すべての人が節約好きになるという方法。「一定の効果は見込めるかもしれないが、豊かになりたいという人間の欲望を抑え込み、77億人が考えを変えることは不可能だと」と否定する。

 ふたつめは、技術によって、持続可能な社会を実現する方法。エコ製品を開発し、再生可能エネルギーの発電効率を極限まで高めるといったように、テクノロジーが解決するという道筋だ。だが、これについても、「十分可能性はあるが、結局、これまでと同じような発展を目指していては、いずれ限界を迎える」と、これも否定した。

 そこで、東原社長兼CEOが示したのが、「新たなイノベーション」である。「制約ある環境において、豊かな社会を実現するイノベーション。それを、日立では社会イノベーションと呼んでいる。そのビジョンを紹介したい」と述べた。

 ここで示したのが、鉄道運行の事例である。

 「これまでの社会では、時刻表を見て、ホームに行き、電車の到着を待っていた。鉄道会社は、乗客がいなくても、電車をダイヤ通りに運行しなくてはならなかった。だが、社会イノベーションによって、ホームに人が増えてくると、電車が到着する間隔が短くなるといった運行が可能になる。コンサートが終わったばかりの最寄りの駅には、頻繁に電車がやってくる。逆にホームで待つ人が少なければ、電車の運転間隔は長くなり、資源が無駄にならない。待っている人にとっては、少し不便だが、環境のことを考えれば少しぐらいは待つことができるだろう」

 東原社長兼CEOが、「人間にも、環境にも優しい」と表現する、この鉄道運行システムは、すでに、日立がデンマークのコペンハーゲンで実証を進めているものだ。

 データがつながり、システムがつながることで実現する「社会イノベーション」の姿である。

 「このシステムを使えば、人間の少しの我慢で、最も多くの人を、最も小さなエネルギーで運ぶことができる」

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事