真空管アンプらしい爽快感ある音色と、広く緻密な音場感
音質については、自宅で聴きなれているELAC「VERA BS403.2」と組み合わせて確認できた。BS403.2は4Ωのスピーカーで、それなりに駆動力の高いアンプが必要だが、小型のA-10SG TUBEでも十分な再生ができると感じた。
A-10SG TUBEの持ち味としてはまず、真空管らしい滑らかで清涼感のある音色が挙げられる。ハイルドライバーを採用したBS403.2は50kHzまでとワイドレンジな再生が可能だが、とがりがなくやわらかな質感の高域が特徴のひとつ。このスピーカーの傾向ともよく合う。
また、セパレーションにも優れている。スピーカーのセンターにボーカルがきちんと定位する感覚や音場の広さを味わえた。ダイナミックスも広く、オーケストラのフォルテの盛り上がりはもちろんだが、弱音でも細かな音がつぶれず、強と弱の対比がしっかりしている印象だ。音を絞っても、低域などがやせすぎないのもメリットだろう。
低域はやや緩めな感じだが、全体の調和感は乱さない点は好印象。もともとELACのスピーカーは低域が緩めに傾向があり、ここを出すためには、そこそこのクラスのガッツのあるアンプを用意する必要がある。小型サイズのコンポであることを考えれば十分健闘していると言っていいのではないだろうか。
オリジナルスピーカーも同時開発
GREEN FUNDINGでは、A-10SG TUBEとベストマッチするとして「C-SP615」というオリジナルスピーカーも用意されている。A-10SG TUBEと平行開発したもので、A&C Audioが制作した直径6cmのフルレンジユニットを採用している。サイズは幅160×奥行き170×高さ295とコンパクトで、フィンランドバーチ合板を用いたキャビネットは、往年のイギリス製スピーカーを思わせるようなたたずまいがあってなかなか高品位だ。
ユニットの振動板はすべて手作りとのことで、中心部が中空になった独特の形状にして強度を出しているそうだ。素材としてはアルミで、日本の工場で職人が加工している。やや武骨な印象もあるが、機械生産ではない、手作業ならではの味が感じられる形状だ。
また、スピーカーユニットの振動が箱に伝わって音を濁すのを防ぐため、フローティング構造にしている。さらに内側に向かった反力を打ち消すための重り(デッドマス)も持つ手の込んだものだ。大量生産が基本の一般的なスピーカーユニットではコスト上できない、こだわりあるつくりだ。
フルレンジゆえ、周波数帯域は55Hz~15kHzと狭めだが、フロントバスレフポートを備え、低域もかなり豊かに再現する。
A-10SG TUBEとの組み合わせでは、小口径・フルレンジの再生ということもあり、やはり定位感の良さが際立つ。サイズもコンパクトなので、デスクトップ再生や1m以内の距離でのニアフィールド再生にチャレンジしてみるのも面白いかもしれない。
女性ボーカルなどではさわやかな音色感と、ハッキリとした輪郭感が両立しておりなかなか好印象だ。声のニュアンスもよく伝えてくれる。VELA BS403.2の鳴りとの比較では、よりエッジがはっきりとした印象。注意深く聞くと、わずかに金属的な鳴きが載っているように思えるが、耳障りな印象はない。低域の量感があるため、ポップスなどの再生ではBS403.2よりも、音の重量感を感じると思えた面も。
能率は80dBとかなり低めで、耐入力も15Wまでと低い。単品スピーカーとしては、独特な仕様になっているが、A-10SG TUBE開発時のリファレンスにしたそうでマッチングの良さは折り紙付きだ。また、ニアフィールド再生で感じた、空間表現の良さは2m程度離れたファーフィールドの再生でも十分に感じられた。
自宅にはハイエンドのSACDプレーヤーやUSB DACもあるが、テストでは、ソース機にアマゾンの「Echo Link」を選択してみた。A-10SG TUBEとC-SP615のコンパクトさを生かしつつ、ストリーミングからハイレゾまでデジタルソースにも幅広く対応できるので、机の上でも、テレビラックなどに置く場合でも悪くない組み合わせではないだろうか。TI製DAC&オペアンプ採用で、やや密度感のあるEcho Linkの音が適度にほぐれる点もいいかもしれない。
GREEN FUNDINGでは、A-10SG TUBEとC-SP615がそれぞれ10万9800円で支援を受け付けている。早割・超早割での割引もあるので、興味がある人は早めにサイトを確認してみてほしい。
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