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往年の銘器に名を連ねるA-10の思想を継承し、真空管サウンドを~「A-10SG TUBE」を聴く

2020年11月08日 15時00分更新

NEC A-10の設計思想を受け継ぎ、真空管ハイブリッドアンプに

 前置きが長くなったが、真空管アンプはいまだ魅力を持つものと言える。そんな「真空管が持つ、本来の音を楽しませてあげよう」というコンセプトで開発された製品が、港北ネットワークサービスの「A-10SG TUBE」だ。現在、クラウドファンディングGREEN-FUNDINGで出資を募っている。

A-10SG TUBE、PS-12VR、奥に見えるのがC-SP615。

 製品はConclusionというブランド名で展開している。しかし、古くからのオーディオファンであれば、「A-10」という言葉にピンと来る人がいるかもしれない。A-10と言えば、1983年に初代機がリリースされたNECの銘機だ。

 1990年代にかけて複数の製品が登場したが、このA-10シリーズすべての開発に関わった、萩原由久氏が設計にかかわったのがA-10SG TUBEだ。「NECがHi-Fiアンプの開発をしていた」という点にあまりピンとこない人が多いかもしれないが、1980年代は家電を手掛ける企業のほとんどが高級オーディオのラインアップを持っていた。NECもそのひとつで、いまでもファンの記憶に残る製品となっている。ちなみに、A-10シリーズは1990年代前半にAUTHENTICに継承され、AUTHENTICは画面全体から音が出るSoundVu搭載液晶ディスプレーなども開発している。

幅・奥行きとも手ごろなサイズで、設置しやすい。市場で少なくなったハーフサイズコンポであり、貴重な存在。

 A-10SG TUBEは、幅250mm(ハーフサイズ)のコンパクトな筐体ながら、電源の質に非常にこだわった製品となっており、本体にはなんと3系統もの電源入力端子を持っている。これらは左右それぞれのチャンネルのアンプと真空管に対し、電力を供給するためのものだ。

背面。電源入力端子は3系統もある。アナログ入力は2系統で、フロント部のスイッチで切り替えるシンプルなものとなっている。

 構成としては、真空管「12AU7(ECC82)」と、ST microelectronics製の半導体アンプ「E-TDA7396」を組み合わせたハイブリッド方式。真空管を使った増幅はせず、アンバランス信号をバランス信号に変換する部分に用いている。純粋な意味での真空管アンプではない。ただし、真空管アンプ特有の音色感を楽しめる。また、増幅部に半導体を使うため、出力トランスも不要で、ここが筐体のコンパクト化に貢献しているそうだ。

筐体は3点支持。金属製のスパイクで接地面を抑えている。

スパイク部のアップ

 標準で付属するのは、12V/3A出力のACアダプター3個だが、より高音質を求める人は、別売の「PS-12VR」(DC12V/3Aのリザーブ電源)も使用できる。真空管用の電源は12V専用だが、左右のアンプ駆動用には「PS-14VR」(DC12V/3Aのリザーブ電源)も使える。PS-14VR使用時は、標準の15W+15W(4Ω)出力に対して、21W+21W(4Ω)の出力ができる。

 また、PS-12VRとPS-14VRのケースは、A-10SG TUBE本体と同じ高さ(96mm)に揃えられており、並べて置いた際の見栄えも考慮されている。幅は120mmなので3つ並べると幅は50cmほどとなる。奥行きはA-10SGより若干(7mmほど)長い270mmだが、A-10SGの背面はケーブル接続用端子などが出っ張ることもあり、あまり気にならない。

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