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往年の銘器に名を連ねるA-10の思想を継承し、真空管サウンドを~「A-10SG TUBE」を聴く

2020年11月08日 15時00分更新

真空管と半導体をハイブリッド使用したA-10SG TUBE

真空管アンプの魅力は続く

 エレクトロニクスの分野において、真空管は役割を終え、過去のデバイスになってしまったが、オーディオや楽器の用途ではいまだに一定の需要がある。

 真空管アンプというと、滑らかさや温もりといった言葉が用いられがちだが、現代の真空管アンプは、そういったレトロな印象とは異なり、音の立ち上がりが速く、高解像度かつ透明度の高いサウンドを提供するものが少なくない。

 考えてみると、真空管アンプは使用するデバイスの数や種類が半導体アンプに比べて圧倒的に少ない。例えば、三極管を用いたシングル構成アンプの回路図は非常にシンプルだし、半導体アンプでは複数の部品を組み合わせて実現しなければならない部分も真空管1本で済んでしまうことがある。

 オーディオの世界では、よくシンプルでストレートな回路がいいと言われるが、半導体アンプでは特性を良くするため、非常に多くの部品が用いられ、複雑な配線が引き回されているのが実際だ。これとは対照的に、真空管アンプはシンプルな構成になっている。

A-10SG TUBEのフロント部はLEDでライトアップされており、内部の真空管が透けて見える。デザイン性も高い印象だ。

 また、真空管というデバイスはハイスピードかつハイスルーレートである。曲者は出力トランスのほうで、真空管アンプの出音のかなりの部分が出力トランスに依存している。出力トランスは重量があり大型。シンプルなぶん、小型のものが多い真空管アンプの中にあって、容積のかなりの部分を占めている。

 真空管アンプには高い電圧をかける必要があり、半導体アンプに比べて電力の消費が大きい面もある。また、聴感上の歪み感は少ない(奇数倍の周波数の歪みが少ない)が、低域の制動力という面で譲る面がある。このあたりは出力トランスの特性も関係している。

A-10SG TUBEが内蔵する真空管。

 一長一短はあるが、しっかりした電力を供給し、適正に駆動した真空管アンプの音は自然で美しく感じる。また、真空管を差し替えてちょっとした音のカスタマイズも楽しめる、趣味的な要素も魅力的に思える部分だ。

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