例年秋に最新モバイルCPUを搭載して登場するXPS13シリーズは、その「回しっぷり」の良さで、常に新CPUのベンチマークモデルとして注目されている。そんな2020年秋モデルのXPS13(9310モデル)を試用できたので、紹介しよう。
毎秋登場する、世界最速のデルのフラッグシップなのだ
Dellのコンシューマー向けノートにはInspironとXPSのラインがある。フラッグシップのXPSシリーズのラインアップはXPS13、XPS13 2-in-1、XPS15、XPS17の4機種で、まずはXPS13と2-in-1がモデルチェンジして、Tiger Lakeを搭載した。ボディの基本設計はIce Lakeを搭載した春モデルの9300と同じである。
最新XPS13=9310モデルの最大の特徴はなんといっても第11世代コア=Tiger Lakeを搭載したことだ。最新のコアプロセッサーとともに、内蔵するインテルIris Xe グラフィックスによる、速度の向上が期待できる。
また、インテルが提唱するEVOプラットフォームにも一部モデルを除き、準拠しているので、速度だけでなく、バッテリーの持続時間や高速起動、高速充電も期待できるのだ。
最強セットはi7-1165G7+32GB+1TBに4Kディスプレイ
11月5日時点でDellのWEBサイトでオーダーできるシステム構成は、CPUは1種類で「i7-1165G7」のみである。i7-1165G7は、4コア8スレッド、動作周波数1.20~2.80GHZ、ターボブースト時4.70GHz、グラフィックス最大周波数1.30GHz、TDP12~28Wである。
デルのアナウンスでは、今後上位の「i7-1185G7」も登場する予定で、動作周波数は最高3.00GHzに、ターボブースト時4.80GHz、グラフィックス最大周波数は1.35GHzとなる。両CPUともに内蔵するのはIris Xe グラフィックスで、実行ユニットは96個、最高周波数のみ異なる。
新XPS13のメインメモリーは4267MHz LPDDR4xを16GBまたは32GB搭載するが、オンボードなので、後から増設はできない。余裕があれば上を狙おう。
ストレージはM.2 PCIe NVMe SSDで、512GBまたは1TBの2種類である。こちらはスロットに実装されているので増設可能だが1スロットしかないので交換となる。
ディスプレイも2種類で、13.4インチFHD+(1920 x 1200)のノンタッチ、非光沢、500Nitと、UHD+ (3840 x 2400)のタッチ、反射防止、500Nitから選ぶことになる。いずれも縦横比16対10の縦長デザインで、HDR400をパスした、高コントラスト、高精細ディスプレイだ。ディスプレイのボディ面積比率は91.5%の超狭額縁である。
さらに選択枝としては、マイクロソフトの「Office Home & Business」の有無、そしてボディーカラーでブラックまたはホワイトキーボードが選べる。価格は20万2980円から27万8980円(税抜・送料込み)だ。
ボディサイズはスペック上では、前モデルの幅296mm×奥行き199mmから幅295.7mm×奥行き198.7 mmへと0.3ミリずつ小さくなっているが、表記上の違いで、変化はない。厚みは14.8mmで変わらず、重量もノンタッチで1.2キロ、タッチで1.27キロとこれも変わらない。
インターフェイスも外見上は変わらない。左右にタイプCが一つずつと、マイクロSDカードスロット、ヘッドフォンコンボ端子と全く同じだが、Ice LakeからTiger Lakeへの変化として、Thunderboltが3から4へとバージョンアップしている。
デザインはIce Lakeを搭載した春モデルの9300と同じである。詳しくは春の記事(下記リンク)を参照してほしい。
Ice Lake搭載の春モデル(9300)に比べて
CPUは112%、3DMarkは180%に高速化
「i7-1165G7」のスペックは、前述のとおり、4コア8スレッド、TDPは12~28W、動作周波数1.20GHz~2.80GHZ、ターボブースト時 4.70GHzである。
今回比較する、前モデルのXPS13(9300)は「i7-1065G7」を搭載していた。4コア8スレッド、TDPは12~25W、動作周波数1.00GHz~1.50GHZ、ターボブースト時 3.90GHzである。
デルのパワーマネージャーのサーマル設定は「超高パフォーマンス」で実施した。モニタリングアプリによると、このモードではi7-1165G7は28W動作となる。
新機種のTiger Lake=i7-1165G7のCinebenchは、R15で884、R20で2121となった。Ice Lake=i7-1065G7搭載の春モデルでは811と1886だったので、約9~12%の速度向上ということになる。モニタリングアプリで見てみると、最高ではターボブーストが利いて4.7GHzで動作している。
内蔵グラフィックはi7-1165G7は前述のとおり、Iris Xe グラフィックスで、実行ユニットは96で動作周波数は1.30GHzである。i7-1065G7は、Iris Plusグラフィックスで実行ユニットは64で周波数1.10GHzだ。
新XPS13の3DMarkの結果は、TimeSpyで1709、FireStrikeで4878、NightRaidでは16382が出た。前モデルでは962と2727、10955だったので、約50~80%も高速化している。ユニット数は50%増し、加えてクロックの向上も効いているようだ。
ちなみにTiger Lakeのこの数字は、GeForce GTX1050の値に近い。Ice LakeはMXを超えたと騒いだが、Tiger Lakeは2年前のGTXの速度まできたことになる。
テストを連続して実行するとファンが全開になるが、かなり静音の部類で、静かな部屋なら聞こえるが、カフェやオフィスでは気にならない。キーボード部の温度上昇も「暖かい」レベルで、うまく冷却されている。
内蔵SSDは、前モデルではDiskMarkのマルチシーケンシャルのリードが2984でライトが945だったが、今回は3242と2786と、特に書き込み速度が3倍の速度に向上している。
バッテリーの容量は新旧ともに52Whである。最も高いパフォーマンスで、輝度最高で3時間31分動作した。前モデルでは同条件で3時間26分だったので、若干省エネになっている。ただし、これは、WEBサイトを巡回し続けるものなので、3Dゲームなど、Tiger Lakeの能力を全開で使う場合は、当然Ice Lakeよりバッテリーは持たないはずである。とはいえ、この条件で3時間以上動作すれば、モバイルノートとしては合格である。
チャージについては消費と同条件で動作しながらで、50%まで57分、70%まで88分、90%まで122分かかった。ACアダプターはタイプC接続の45W出力なのでこれくらいになる。ファストチャージをONにして、電源OFFなら、もっと早くなるし、持ち歩かないなら100Wのチャージャーを使えばいい。EVOのシールがあるので、「30分以下の充電で、フルHDで4時間の使用が可能」なはずである。
さすがXPS伝統の回しっぷり、i7-1185G7を待つのか?
毎年、新CPUをいちはやく搭載し、そのうえ最高速度をたたきだすXPS13シリーズだが、今年のTiger Lakeも今回の値を破るのは、おそらくこの後発売となるi7-1185G7搭載のXPS13なのである。いずれにせよ、特にグラフィック速度が欲しいユーザーはTiger Lake搭載PCを狙うべきなのだ。個人的には、画面が16対9よりも縦長なところも、とても気に入っているし、先代で改善されたキーボードもいい。Tiger Lakeを搭載したXPS13は、やはり最強モバイルノートなのである。
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