「PCMark10」では8コアが10コアを上回る
続いては総合ベンチマーク「PCMark10」を試してみよう。実施するテストはゲーミング以外の性能を見る“Standard”を選択した。総合スコアーだけでは得手不得手が分かりづらいので、各テストグループ別のスコアーも見ておこう。
PCMark10にもコア数が物を言うテスト(DCCのPOV-Rayなど)はあるが、CINEBENCH R20のように決定的なものではない。このグラフからは、8C16TのRyzen 7 5800Xが10C20TのCore i9-10900Kどころか16C32TのRyzen 9 3950Xをどのテストグループについても上回っている。
コア数や絶対的なクロックの高さよりも、シングルスレッド性能とIPCの高さが鍵となる。Ryzen 9 5900Xがスコアートップだが、費用対効果で考えればRyzen 7 5800Xは飛び抜けて高い。
続けて各テストグループ別に結果をもう少し深掘りしてみよう。
アプリの起動時間やビデオ会議、FireFoxを使ったWebブラウジング性能を見るEssentialテストグループでトップに立っているのはRyzen 7 5800X。Ryzen 9 5900Xよりも上のスコアーを出している理由として考えられるのは、Ryzen 9 5900Xが2CCD構成ゆえにCCDをまたぐような処理発生時のレイテンシーが足を引っ張っているのではないかと推測できる。
前世代Ryzenの中では1CCDのRyzen 7 3800XTがトップに立っている点もこの説を裏付けている。Ryzen 5000シリーズが出るまではクロックの高い第10世代Coreプロセッサーがトップを押さえていたが、Ryzen 5000シリーズに取って代わられた、といってよいだろう
LibreOfficeを使った表計算&ワープロ処理時の性能を見るProductivityテストグループでもRyzen 7 5800Xは非常に優秀だ。Ryzen 9 5900Xはワープロ(Writing)でトップに立っているが、Ryzen 7 5800Xと大差ないレベルにとどまっている。もっとも、処理の重さで言うとむしろ軽めな方なので、軽めな処理にRyzen 7 5800Xがハマっただけとも言える。
Standardテスト中最もCPUパワーへの依存度が高いDCC(Digital Content Creation)テストグループでは、Ryzen 9 5900Xがコア数に勝るRyzen 9 3950Xを上回る性能を見せている。Ryzen 7 5800XもCore i9-10900Kを下しているものの、コア数勝負になりやすいPhoto EditingやRendering and VisualizationにおいてRyzen 9 5900Xに大きく引き離されてしまった。
Rendering and Visualizationでコア数最多のRyzen 9 3950Xが負けている(上から3番目)理由は、このテストでは単純なCGレンダリングの他にワイヤーフレームモデルのアニメーション処理が評価対象となるが、このアニメーション処理においてシングルスレッド性能が重要になるためである。Ryzen 9 3950Xはコア数は十分にあるがアニメーション処理における処理性能は今ひとつだった、ということになる。
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