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24時間レースで勝ったクラウンは運動性能と居住性をバランスさせた高級セダン

2020年10月22日 12時00分更新

ステアリング切っただけ曲がるクラウンの衝撃!

 中国でのノックダウン生産や香港への輸出はありましたが2代目以降のクラウンは国内専用車という立場を貫いてきました。グローバルはレクサスに任せるという施策で、クラウンは100km/hという制限速度の中での乗り心地や快適性、運動性能を追求してきたために「ゆるい、切れ味が悪い」などという評価を浴びせられることになります。

 これまで味わったことのあるクラウンではステアリングを切ってから少しボディーがアウト側に傾いて、その傾きによってタイヤがグリップして曲がっていく感覚でした。なのでステアリング操作から数テンポ遅れて曲がり始め、とてもコーナーリングを楽しむというものではありません。13代目をチューニングしたクラウンにも乗ったことがありますが、ボディー剛性が足りないところへバネレートの高いスプリングと減衰力の高いショックアブソーバー、つまり固い足回りを無理やりつけているので乗り心地が悪い。サスペンションセッティングをいくら頑張っても、ボディーがゆるければ効果が薄いということになります。

 しかし、この15代目のクラウンはプラットフォームを新世代のTNGAとし、硬くて軽いボディーを得ることでサスペンションが正確に動き、ボディーが大きく傾くことなくタイヤに荷重がかかり、路面をガッチリ掴んでいきます。ステアリングを回した分だけクラウンは感覚的に狙った方向に向きを変えていき、その時の姿勢変化も軽微。この「感覚的に」という部分は非常に優れていて、様々な電子デバイスで無理やり狙ったラインにクルマを載せていくというものではなく、コーナーに対してオーバースピードでなければ「このラインをとりたいな」と思いながらステアリングを切ると本当にスッと鼻先がその方向に向いてくれるのです。

 15代目クラウンは剛性を徹底的に高めたボディーにより、サスペンション設定を根本から見直したことで、本当の意味での乗り心地と運動性能の両立が可能となった初めてのクラウンと言えます。高速道路の制限速度が120km/h時代を迎えた今、ユーザー層の若返りをはたすためにはグローバルなベースラインとしての性能や機能が必要で、それをやり遂げ大きく変革したということなのです。

セダンとクーペのクロスオーバー

 15代目クラウンのスタイルはそれまでのクラウンと大きく変わった部分があります。それはサイドウィンドウをCピラーにも設けたシックスライトウィンドウとし、なおかつリアクォーターを流れるように傾斜させたクーペルックとしたところです。

 おりしもヨーロッパ系ミドルサイズセダンは4ドアクーペブーム全盛期で、クラウンもその流れに乗ることで若々しさを得ようとしています。もともと4ドアクーペは1980年代後期から90年代初頭という日本のバブル経済期にトヨタが「カリーナED」や「カローラセレス」などで展開したスタイルで、2010年代にセダン市場が成熟したヨーロッパで積極的に取り入れられるようになったスタイルであり、今4ドアクーペを採用することは30代には目新しく50代には懐かしというダブルの効果を生むこととなりました。なのでクラウンにステータスを求める40~50代にも意外と受け入れられやすいスタイルだったのです。

 このスタイルをとりながらもリアシートでの頭上スペースはかなりのもので、クラウンが伝統的に持っているフォーマルサルーンとしての特性も十分に発揮できているということになります。

 4910mmの全長と2920mmというホイールベースによってごまかされやすいのですが、実は全高が1455mmとわりと高く、その分室内高も十分に確保できているのです。またホイールベースの長さのおかげで足元もかなり広い。2920mmというホイールベースは7人乗りのミニバンにも匹敵する長さで、それを5人乗りのセダンに割り当てているのですから狭いわけがないのです。

 もちろんトランクもかなり広く確保されています。クラウンには伝統的に4人分のゴルフバッグを積むという課題があるため、90リットルクラスのスーツケースであっても2つは余裕で積めるのです。

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