WHILLは近距離モビリティの新モデル「WHILL Model C2」を9月21日から予約販売開始した。購入の場合、本体価格は47万3000円。介護保険を利用したレンタルでは月額2700円。
高齢者を主なユーザーと想定しているWHILL Model C2(以下、WHILL)は免許やヘルメットなどが不要の電動車椅子だ。WHILLは通常、福祉用具は介護保険の適用を受けた上で介護系の流通事業者を通じて借りるのが一般的。しかし、歩行困難を抱える高齢者は約1000万人といわれており、介護保険の利用者数よりも多い。そこでWHILLは直販をはじめとする販路拡大を行なうことで、介護保険利用者以外でも気軽に利用でき、高齢者の買い物や通院などの外出をサポートする。
WHILLは、インホイールモーターを後輪に2個装着。特徴的なのは同社独自のオムニホイール(全方向タイヤ)前輪。その場で横方向にも動けるオムニホイールとリアタイヤ操舵により、回転半径76cmという驚異的な小回りを実現するほか、段差も乗り越えられる。
新モデルの主な変更点は、走行性能やユーザビリティーを向上。新開発のリアサスペンションの採用による乗り心地向上を図ったほか、コントローラー部分の操作性の改善、走行距離の拡大、テールライトの位置変更などが行なわれた。
新型リアサスペンションは衝撃吸収性を高めており、約5㎝の段差の乗り降りや凸凹のある路面でも快適に走行できる。コントローラーとスイッチは片側に集約し、軽い力で操作できるようにしたという。コントローラーは左右のどちらにも付け替えることができる。
走行距離は従来モデルの16kmから18kmへと伸長。テールライトはアーム後端に移動させ、背もたれにデイバッグをかけた状態でもライトが見えやすくなった。さらに、跳ね上げ可能なアームの回転中心軸を変更することで、横から座ることも可能。ベッドや椅子などから真横に移乗する際にスムーズとなった。
WHILLの気になる最高速度は時速6km/h。約10度までの坂が登坂可能だ。最大荷重は115kgとしている。ちなみに充電時間は5時間ほど。本体をある程度まで分解すれば、普通自動車のトランクに入れることも可能だ。気になるのは万が一のこと。東京海上日動からは自動車の任意保険に似た「WHILL専用保険サービス」(年間1万8000円)が用意されている。故障時などは、年4回まで無料で要請できる24時間のロードサービスを実施している。安心して利用できる環境はすでにある、といってよいだろう。
操作は5段階のスピードリミッターで最高速度を設定。あとは操作レバーで行きたい方向へ進むだけ。操作レバーは軽く、親指の力だけで動き出す。もちろん離せばすぐに停車する。驚きは小回りの良さで、自分の頭を軸につま先が動く感覚は、普段椅子を回転させているのとほぼ同等。屋外はもちろん、屋内利用において、この小回りの良さはうれしいだろう。乗り心地に至っては車椅子とは雲泥の差。車椅子なら後ろから押して貰わないと超えられそうにない段差も何なく乗り越えられるし、なにより衝撃が少ない。
驚きはそれだけではない。このWHILLはスマホでも操作可能なのだ。たとえば利用者の指先が不自由でも、介護者が車椅子を押すことなく操作できる。アプリ操作は操作レバーと同様で、画面をタップし続けている間動作するようになっている。現在はiOSのみだが、Android版も開発しているという。
このWHILLの発展型が、羽田空港国内線第1ターミナルの人搬送自動運転システムとして稼働しているという。こちらはなんと自動運転対応モデルで、座って画面をタップするとカメラを使って搭乗ゲートまで走行。自走して所定の位置まで戻る。同様のシステムはダラス・フォートワース国際空港(アメリカ)、アブダビ国際空港(アラブ首長国連合)およびウィニペグ国際空港(カナダ)、ジョン・F・ケネディ国際空港(アメリカ)などで実証実験済みとのこと。
高齢化社会に伴う車椅子に留まらず、単距離パーソナルモビリティとしてWHILLは注目すべきアイテムといえそうだ。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります