週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

アップル異例の「順番入れ替わり」、それでも「プロセッサー自前開発」で強みを見せる

 今年のアップルの「秋イベント」が特殊であることは、誰の目にも明らかだろう。iPhoneよりも他の製品群の方が先に発表されたのだから。

 これはある意味で特殊事情でもある。だがその中でもアップルが軸にした技術的要因がある。それこそが「半導体設計の自前主義」。そこに着目すると、今回の発表のイメージも変わって見えてくる。

激安「第8世代iPad」の裏にある「枯れたA12」の活用

 もっともわかりやすいのがiPadだろう。

 今回発表された「第8世代iPad」はとにかくコストパフォーマンスがいい。昨年発売のiPad Airと変わらないパフォーマンス・デザインでありつつ、最廉価モデルの価格は2万円下がった。ストレージを128GBにしても、昨年版iPad Airの「64GBモデル」よりさらに1万円安い。

 その背景にあるのは、SoCが「A12 Bionic」である、という点だ。A12 Bionicは2018年にiPhone XS世代が登場する際に発表されたSoCだが、今やアップル製品のベースラインといっていい。大量生産されるiPhone で生産技術を磨き、今回発表された「iPad Air」新モデルを除くすべてで使われている。安定した生産工程で一気に自社製品で広く使っているからこそ、価格がこなれていて、本体コストの引き下げに生きてくる。この価格設定ができるのはアップルの半導体戦略の賜物だ。

 そして、「iPad Air」の新モデルでは、iPhoneよりも先に新SoCである「A14 Bionic」がお披露目された。その性能評価などは今後の検証に譲るが、この世代のプロセッサーは非常に重要なものになる。5Gになる「今年のiPhone」を支えるものであると同時に、年末登場の「Apple Silicon版Mac」で使われる世代の技術になるからだ。

 A12世代がアップルの「これまで」を支えた基盤だとすれば、A14はアップルの「これから」を占うものになる。新プロセスである「5nm」での量産なので、歩留まりを含めた量産とコストコントロールがどうなるか興味深い。

 まあ、今年の特殊事情ゆえに、価格が大幅に異なるiPad ProとiPad Airで、一部のアプリでは性能が逆転しているかもしれない……という現象を生んでいる可能性もある。iPad ProのA12Zの方がCPU・GPUのコア数が多いので、ほとんどのアプリではiPad Pro優位は揺るがない、と予想はしているがそれでも悩ましい状況ではある。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この特集の記事