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アップル異例の「順番入れ替わり」、それでも「プロセッサー自前開発」で強みを見せる

 今年のアップルの「秋イベント」が特殊であることは、誰の目にも明らかだろう。iPhoneよりも他の製品群の方が先に発表されたのだから。

 これはある意味で特殊事情でもある。だがその中でもアップルが軸にした技術的要因がある。それこそが「半導体設計の自前主義」。そこに着目すると、今回の発表のイメージも変わって見えてくる。

激安「第8世代iPad」の裏にある「枯れたA12」の活用

 もっともわかりやすいのがiPadだろう。

 今回発表された「第8世代iPad」はとにかくコストパフォーマンスがいい。昨年発売のiPad Airと変わらないパフォーマンス・デザインでありつつ、最廉価モデルの価格は2万円下がった。ストレージを128GBにしても、昨年版iPad Airの「64GBモデル」よりさらに1万円安い。

 その背景にあるのは、SoCが「A12 Bionic」である、という点だ。A12 Bionicは2018年にiPhone XS世代が登場する際に発表されたSoCだが、今やアップル製品のベースラインといっていい。大量生産されるiPhone で生産技術を磨き、今回発表された「iPad Air」新モデルを除くすべてで使われている。安定した生産工程で一気に自社製品で広く使っているからこそ、価格がこなれていて、本体コストの引き下げに生きてくる。この価格設定ができるのはアップルの半導体戦略の賜物だ。

 そして、「iPad Air」の新モデルでは、iPhoneよりも先に新SoCである「A14 Bionic」がお披露目された。その性能評価などは今後の検証に譲るが、この世代のプロセッサーは非常に重要なものになる。5Gになる「今年のiPhone」を支えるものであると同時に、年末登場の「Apple Silicon版Mac」で使われる世代の技術になるからだ。

 A12世代がアップルの「これまで」を支えた基盤だとすれば、A14はアップルの「これから」を占うものになる。新プロセスである「5nm」での量産なので、歩留まりを含めた量産とコストコントロールがどうなるか興味深い。

 まあ、今年の特殊事情ゆえに、価格が大幅に異なるiPad ProとiPad Airで、一部のアプリでは性能が逆転しているかもしれない……という現象を生んでいる可能性もある。iPad ProのA12Zの方がCPU・GPUのコア数が多いので、ほとんどのアプリではiPad Pro優位は揺るがない、と予想はしているがそれでも悩ましい状況ではある。

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