週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

ドリフトご意見番・マナPが語るD1グランプリのこれからの20年

2020年08月21日 12時00分更新

ドリフトがちゃんとしたモータースポーツになってきた

 モータースポーツとしてのD1グランプリ。では世界に対して遅れている部分はどこか?

2連連続でFIAインターコンチネンタル・ドリフティングカップを制覇したロシア代表ゲオルギィ・チフチャン(愛称:ゴーチャ)選手

 「技量の面では、世界に対して日本のドライバーに差はないと思っています。では、トップチームとその他では、どこに差が出てくるか。モータースポーツは、ドライバーの才能だけでは勝てないスポーツです。持っている道具とお金が重要になります。D1グランプリも成熟し、そうなってきました。トップに立つためには、どれだけイイクルマを作って、イイチーム作りができるか、というパッケージの勝負になってきました」

 F1などは最たる例だろう。優秀なドライバー以外にも、強いマシンが作れるファクトリーと潤沢な資金がなければ勝つことができない。現在メルセデス、フェラーリ、レッドブルが常勝集団なのは、そこに資金があり、ドライバーを含めて優秀な人材が集まっているからに他ならないからだ。これはトップカテゴリだから莫大な費用がかかるのは当然のこと。

 D1グランプリもドリフトのトップカテゴリであるからして、費用は相応にかかる。結局札束の殴り合いと思われるかもしれないが、プロスポーツはすべからくその側面は存在し続ける。その中でチームが上手く機能していても、外的要因で勝負がわからない。それだからモータースポーツは面白いのだ。

ロシア国旗を肩にするゲオルギィ・チフチャン(愛称:ゴーチャ)選手

ゴーチャ選手と談笑するFIA初代チャンピオンの川畑選手(写真左)

 「技量で飛びぬけて凄いなと思うのは一人位かな。昨年のFIAインターコンチネンタル・ドリフティングカップのチャンピオン、ゴーチャ選手は相当な腕前だと思いますよ。でも探ってみると、チーム体制やクルマといったパッケージ、つまり資金力があるところに、凄い人が乗っているからチャンピオンになったんですよね。言い換えるなら、トップのレベルは国を超えてもそう変わらないし、誰が勝ってもおかしくないありません」

昨年のFIAインターコンチネンタル・ドリフティングカップ決勝直後の様子。走り始めたゴーチャ選手に対して、藤野選手はデフブローによりリタイアとなった

決勝戦、デフブローにより走れない状態ながらも、ゆっくりとファンにその雄姿を見せようと進む藤野選手。しかしマシンは力尽き、その後レッカー車で回収されてしまった

 「昨年のFIAの決勝戦、最後に藤野選手が止まってしまいましたが、ゴーチャ選手も壊れていた。どちらが先に壊れるかという状態で、たまたま藤野選手が先だっただけです。もはや、腕というよりそれ以外の要素がトップレベルの中にはある、ということなのかもしれませんね。だからドリフトが面白くなってきているんですよ。ちゃんとしたモータースポーツになりつつあるんですね」

「ドリフトでメシが食えるようにしたい」から20年
D1グランプリは進化し続ける

 土屋圭市さんがドリフトでメシが食えるように、との思いから始まったD1グランプリシリーズ。現在、ドライバーはドリフトだけでメシが食えているのだろうか?

 「D1グランプリ20年やってきて、本当にD1だけでメシが食っているようになっているかというと、F1ドライバーは億単位の契約金、日本でも契約金は数千万単位ですが、D1はひと桁が低い。そこだけがいまだ追いついていないですね」

現在、唯一D1グランプリにタイヤ供給しているTOYO TIRE。そのスタッフと契約ドライバーたち

 今後、契約金が高くなればより多くのドライバーが参戦し、カテゴリとしての魅力度が増してくるだろう。そして次の世代へとつながっていく。プロスポーツとはそういうものだ。そのためには、企業、特に自動車メーカーやタイヤメーカーの存在は不可欠だと鈴木さんは語る。

今年注目のマシン、エヴァRTのGRスープラ初号機と鈴木さん

 成長し続ける20年目のD1グランプリシリーズは7月23日に初開催となる奥伊吹で幕を開けた。この週末(22~23日)は第2戦エビスサーキット(福島県)が開催される。最後に「これから次の20年が始まりますね」と鈴木さんに問いかけると鈴木さんは笑いながらこう話してくれた。

 「僕は、もういいかな(笑)。あと数年ですよ。もちろんそういう架け橋ができればいいというのもありますけれど、だんだん年寄りは引きこもらないといけないですからね(笑)。その最初ともいえる今年が、こんなことになっちゃったのが残念ですけれどね。これから始まる10年、20年がどうなるかわからないですけれど、ぜひ会場で生の迫力を味わってほしいですよね。みんなでドリフトを盛り上げましょう!」

■関連サイト

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

この連載の記事