有人飛行体、ブロックチェーン、AIと広い領域に渡って研究・開発
目指すは「空の道路公団」次世代領域でビジネスを動かすA.L.I. Technologies
ドローンの物流をブロックチェーンで管理
さらに、ドローンの社会実装には、空路の整備だけでなく、個別機体の管理も重要となる。
そこで、ブロックチェーン技術を同社ではドローンの社会実装のために取り入れている。ドローンで物流をするときに、誰がどこに送ったかをしっかりトラッキングしていかないと、違法ドラッグ配送などの犯罪に使われてしまう。これらの情報をブロックチェーンに記録できれば問題解決の手がかりとなる。
「このような目標を実現するためにはロビー活動が重要。ドローンであれば国交省とディスカッションし、ホバーバイクを浸透させるために自動車局に働きかけることが必要と考える。ホバーバイクを東京モーターショーに出展したのも、公道走行も視野にいれた新しいモビリティとしての一般社会への認知向上を狙ったため。だからこそ実現に向けてしっかり動きたい。」(小松氏)
ドローンの機体は今ある安いものを使ってもいい
エアーモビリティのイメージには、未来やイノベーションがあるが、一方で小松氏は警鐘を鳴らす。
「この先業界としては、一度失望が起きると思っている。今のように、機体にめちゃくちゃお金をかけようとしているのは個人的には違うと思っている。ハードウェアを高くすると、どんなに便利なものができても、誰も使わないだろう。例えば、物流で1回飛ばすのに1000円近くかかったら、送料と同じくらいなので利用者が増えるとは思えない。それを利用可能な世界にするには、数百万円する機体では難しいのではないか。であるのなら、サービスによっては今手に入る手頃な価格の機体でもいいと思っている」(小松氏)
政府は、赤字になっている宅配便の路線を補助金で穴埋めしているが、ドライバーが高齢になってくるとそれも難しくなってくる。そこを、ドローンへの置き換えが可能になると小松氏は提言する。
「運送会社が過疎地域に1日で運ぶ荷物は、せいぜい3つ、4つ。荷物も平均すれば3~4kg。過疎地における物流ドローンというのはそこまでの耐荷重を求められていなかったりする」(小松氏)
そのためには、ドローンとしての規格統一が必要だ。例えば、田舎の物流に利用する場合、高齢者はドローンから受け取るのが難しいかもしれない。そんな時、その村の荷物は公民館などに自動運転で持って行けばいいという。村の公民館なら、受け取りに行くのも簡単だ。
このような運用をする場合、村からドローンを戻すためにはハードウェアのデバイスごとやソフトウェアの品質保証など規格が統一されていなければならない。そこで同社はFAIのレースを通じて、JISやISOの規格を決めるため動いているという。
「昔は誰でもタクシーの真似事ができたが、その後ルールが統一されて2種免許になった。歴史を見れば、それと同じことがドローンでも起きると考えている。我々はそのところを2年前からずっとやっている」(小松氏)
同社ではさらに、ドローンのプラットフォームも開発しようとしている。たとえば、山奥での測量を依頼した発注者は、ドローン操縦士が本当にオーダーをこなしているのかを知りたいこともあるだろう。もしくは、町のどこをどんなドローンが飛んでいるのか把握したいという政府の要望もある。また、ドクターヘリなどもルート上のドローンの情報は知りたいところだろう。そのために、管理機能を開発しているという。
「飛行中の航空機の位置をリアルタイムに表示する『Flightradar24』というスマホアプリがあるが、それのドローン版のニーズはあると思っている」(小松氏)
最後に、同社の今後の展開を伺った。
「データでいうと、例えば橋梁のデータをそろえることで、教師データが増えて、AIを学習させることができる。点検レポートの作成がとても大変だが、この過程を自動化して、手間を省くソリューションができる」(片野氏)
「2020年の今年は、ドローンを使った橋梁点検などの公共インフラのサービスを本格的に進める。2021年には5Gが実装されて、初めて映像がリアルタイムで送れるようになる。そして、2022年にはドローンの規格が統一され、この機体を使うためには、このライセンスが必要、という機体に対してライセンスが付与されるようになると考えている」(小松氏)
未来の世界を見据えつつも、足下の事業でしっかりマネタイズし、政府も巻き込んだ壮大な戦略の元、着実に歩みを進めるA.L.I. Technologies。2020年7月には、SBSホールディングスとの国内過疎地での物流ドローン試験の開始が発表された。航空管制やオペレーション、そしてドライバーも含めた総合的なUAV管制ソリューションとして、彼らが世界に進む日に期待したい。
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