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「関内とみなとみらいが交わる新しいエコシステムの形」レポート

コロナ禍で再定義される場 スタートアップにとって横浜とは

2020年08月20日 09時00分更新

 2020年6月19日、横浜・関内のベンチャー企業成長支援拠点「YOXO BOX」は、無料セミナー「関内とみなとみらいが交わる新しいエコシステムの形~スタートアップにとっての横浜の魅力~」をオンライン開催した。関内・みなとみらい地区で活動する株式会社plan-A 代表取締役の相澤 毅氏、株式会社野村総合研究所の土井 健氏、スカイファーム株式会社 代表取締役の木村 拓也氏の3者をゲストに招き、横浜らしいビジネスエコシステム像について議論した。

横浜市、新型コロナウイルス感染症の影響を受けたスタートアップの資金繰り等を支援

 第1部では、横浜市経済局より、YOXO BOXの現状と最新情報、横浜市のスタートアップ向け公的支援について説明。横浜市は2019年1月に「イノベーション都市・横浜」を宣言し、その実現に向けて、横浜をクロスオーバーするイノベーションを起こす「YOXO(よくぞ)」のテーマのもと、スタートアップやイノベーション人材などの支援を実施している。ベンチャー企業成長支援拠点「YOXO BOX」の支援メニューは、1)横浜市スタートアップ企業支援一時金、2)YOXOアクセラレータープログラム、3)YOXOイノベーションスクール、4)ベンチャーピッチ、5)イノベーション創出のための交流・ビジネスイベント、6)専門家への個別相談窓口の6つ。

 新型コロナウイルス感染症支援施策として、横浜市中小企業融資制度の実質無利子融資について説明。対象となる事業者は、4000万円を上限に、当初3年間は横浜市が利子を全額助成し、実質無利子で融資を受けられる(対象要件あり)。また、日本政策金融公庫の「挑戦支援資本強化特例制度(資本性ローン)」では利用した創業15年以内の中小企業者は、借入利率1.0%を上限に、当初3年間、横浜市が利子補給を行う(対象要件あり)。なお、「YOXO アクセラレータープログラム」を受けた方については、上限を借入利率2.0%とし、優遇している。新型コロナウイルス感染症の影響を受けている横浜市内のスタートアップは、これらの支援の活用を検討してみては。

奥住有史氏 横浜市経済局 イノベーション都市推進部 新産業創造課 担当係長

 第2部のパネルディスカッションでは「関内とみなとみらいが交わる新しいエコシステムの形~スタートアップにとっての横浜の魅力~」をテーマに、株式会社plan-A 代表取締役の相澤 毅氏、株式会社野村総合研究所の土井 健氏、スカイファーム株式会社 代表取締役の木村 拓也氏の3名をゲストに迎えて議論した。司会進行は、株式会社角川アスキー総合研究所 ASCII編集部のガチ鈴木が務めた。

相澤毅氏 株式会社plan-A 代表取締役、プロジェクトデザイナー、イノベーションブースター

土井 健氏 株式会社野村総合研究所 システムエンジニア、One MM全体サポーター

木村 拓也氏 スカイファーム株式会社 代表取締役

スタートアップが横浜でビジネスをする魅力やメリットは?

鈴木:新型コロナウイルス感染症の影響を受け、スタートアップを取り巻く状況も変わってきているかと思います。そのなかで、改めて横浜でビジネスをする魅力やメリットについてお聞かせください。

相澤氏(以下、敬称略):横浜は開港都市として、歴史的にもいろいろな文化や人やモノが行き交うイノベーション都市。こうした文脈はスタートアップにとってアドバンテージになると思う。また、横浜市は18区あり、産業特性も幅広いので、活用できる新しいフィールドを見つけやすいのではないでしょうか。

土井氏(以下、敬称略):大企業の視点で言うと、みなとみらい地区の大企業が市内のベンチャーに投資したい、という話を良く耳にします。大企業とスタートアップの拠点が近くにあることは大きなメリットです。

木村氏(以下、敬称略):スタートアップとしては、官民学の距離が近いのが魅力ですね。みなとみらいの大企業や横浜国立大学とのオープンイノベーションもすごくやりやすい環境だと思います。

相澤:個人的には、東京と距離が近いことを悲観的に捉えることはないと思っています。逆に、これだけの人口と広い土地を抱えているのは、最強の地方都市なのではないかと。

関内、桜木町のいま

鈴木:みなとみらいの開発が進み、昨秋には関内にYOXO BOXができ、さまざまなプログラムが生まれていい方向に進んでいたのが、今はコロナの影響でストップしている部分もあります。リアルなところはどう感じていますか?

相澤:大きいのは、横浜市庁舎が関内から馬車道へ移転したこと。つまり、6000人の就労人口が引っ越してしまった。そこに加えて、新型コロナウイルス感染症拡大です。関内は、もともと飲食店の数が多いため、非常に苦しい状況です。また、横浜スタジアムでの試合も観客数が制限されています。今後の関内の再開発に期待したい所です。

土井:野村総合研究所でも共創スペースを開設して、これからオープンイノベーションがどんどん加速していくと思っていた矢先、コロナの影響で使えなくなってしまいました。6月からようやく使用できるようになり、活気が出てきたところです。やはり、人が集まって交流できる場はすごく大事だと改めて実感しています。

木村:オフィス向けのフードデリバリーのオーダーは大きく落ち込みました。6月から戻りつつありますが、当初の3分の1程度です。関内のほうが比較的、人が戻ってきています。飲食店も苦しい状況ですので、デリバリーで支援していければ。あとは、直接会って商談しづらいのも課題ですね。

鈴木:土井さんは、いま桜木町に通勤しているのですか?

土井:基本的にはテレワークです。ただ、誰かに会って一緒に話をしながら考えることはやはり重要で、お客様のところへ出向くこともよくあります。今後、テレワークが標準になっても、みんなが集まれる場所は、廃れることはないと考えています。

相澤:G Innovation Hub YOKOHAMAは、緊急事態宣言中は閉館していましたが、6月15日から通常通り営業しています。戻りは非常に早く、月額会員は7割が戻ってきていますね。また、意外だったのは、緊急事態宣言が明けてから、入居を希望する見学者の数が異常に増えていることです。

鈴木:見学にいらっしゃる方って、これまでどこで仕事をしていたんですか?

相澤:住まいは横浜市内で、都内のオフィスに通っていた方が多いですね。

鈴木:コロナ禍で「場」という概念が変わってきた気がします。皆さんは場をどうとらえていらっしゃいますか?

土井:人と人とが交わって、新しいインスピレーションを得たり、わくわくしたりするようなものになっていくのではないでしょうか。テレワークでも困ることはないけれど、たまにお客様のところに出向くと、新しいインスピレーションを受けることがあります。直接お会いすることが少なくなった分、対面の一回一回が、より価値のあるものになってきている気がします。ただ、そのぶん、偶然の出会いが減っていくのかもしれません。偶然の出会いから生まれるものもあるので、難しいところですね。

木村:無駄と紙一重ですが、偶発性はオンラインにはあまりない。オンラインのミーティングは、議題を決めた前提での意見のすり合わせにはすごく効率がいいけれど、実際の対面でのコミュニケーションとは別物ですね。

土井:効率性と生産性は違いますよね。効率を求めすぎると、新しい価値が生まれなくなってしまう。

相澤:もともと自分の動き方は、オフラインでリアルに動いて、人との出会いをひっくるめて偶発性の塊だったと、今オンライン前提の動き方をしていて如実に感じています。これから、場という言葉はオフラインだけでなく、オンラインも含めたフィールドとして捉えていくことが大事になってくる。それぞれの場をどれだけ活用できるかが、この先の分岐点になるような気がします。また、オフラインの場は、コミュニティの質が重要。今までは立地の良さだけで成り立っていた場所は成り立たなくなるかもしれません。

スタートアップにとって関内をより魅力的な場にするには?

鈴木:スタートアップにとって関内をより魅力的な場にするには、どうすればいいでしょう?

相澤:関内の魅力は、多様なコミュニティがあること。マーケターやクリエーターなど、いろいろな方々と遭遇できる。コワーキングやシェアオフィスも増えており、いろいろなコミュニティにリーチしやすくなればスタートアップにとって魅力的だと思います。

土井:多くの人は大企業の中にいると自分からはあまり動かず、会社が決めた動きに従うことが多いのが実情だと思います。魅力的な場を作るならは、もっと個人が動いたほうがいい。企業の中にいる人が自分の力で打破して、新しく生み出していくことが必要ではないかと思います。

木村:コロナ禍からあえて前向きな点を言えば、テレワークで通勤時間がなくなったこと。時間の余裕が生まれたことで、自分が住んでいる一帯のエリアに関心が向くことで新しい発見や出会い、ひいてはイノベーションが生まれてくることに期待しています。

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