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ダイハツ「タフト(TAFT)」試乗! 軽自動車にもクロスオーバーSUVブーム到来か!?

2020年08月17日 15時00分更新

タフト(TAFT)ってどんなクルマ?

 ダイハツから新型モデルとなる「タフト(TAFT)」が、6月10日に発売開始となった。「タフト」という名称は、1970~80年代にかけてダイハツが発売していた小型車からの復活となる。初代となるタフトはラダーフレームを持つ、本格クロスカントリー・モデルであったが、新しいタフトは、乗用車ベースとなるクロスオーバーSUVだ。そのコンセプトは昨年の東京モーターショーで「WAKUWAKU(ワクワク)」として登場し、量産モデルは2020年の東京オートサロンで披露されている。そして、実際の発売は半年後の6月となった。

ダイハツ「タフト」。右はターボモデル

 タフトの特徴は、ダイハツの新世代技術となるDNGA(ダイハツ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)から生まれたという点だ。第一弾は軽自動車のタント、第二弾は小型SUVのロッキー(トヨタへOEMしたモデル名は「ライズ」)であり、タフトはその第三弾モデルとなる。プラットフォームだけでなく、部品ひとつひとつまで見直したDNGAにより、走行性能が格段にアップ。それでいてコストも抑え、良品廉価を実現している。

 タフトのコンセプトは「日常からレジャーまで大活躍する、毎日を楽しくしてくれる相棒」だ。DNGAの基本に「タフで力強いデザイン」「視界の広がるガラスルーフ(スカイフィールドトップ)」「使いやすい室内空間」を積み上げた。「楽しく・ワクワク」するというのがセールスポイントとなる。

窮屈さを感じさせないスカイフィールドトップ

 エクステリアは、水平基調でスクエア、ウエストラインが高く、キャビンのガラス・エリアが薄くなっている。窓が上下に狭く、下半身が大きいことが力強さを印象づける。一方で窓が上下に狭いということは、乗員にとって窮屈に感じるもの。それを覆したのが、フロントウインドウの近くまで前進しているガラスルーフの「スカイフィールド」だ。フロントウインドウから前を向くと、目の端、上側に「スカイフィールドトップ」が見える。まるでオープンカーのような解放感が味わえる。また、同じプラットフォームを使うタントから、ドライバーの座面は15㎜下がっており、より足を投げ出すドライビング・ポジションとなるのも特徴となっている。

力強く高速走行も難なくこなすターボ・エンジン

 走りという点ではDNGAが大きく貢献する。実際に走らせてみれば、軽自動車ということを忘れるようなフラットな乗り心地に感心させられた。また、ロールが少なくナチュラルなハンドリングも、新世代プラットフォームDNGAの効果だ。パワートレインに関していえば、ターボ・エンジン車の力強さが印象的。低速域が力強いだけでなく、高速域の伸びもある。CVTにギヤを組み合わせることで、広いギヤレシオを実現した「D-CVT」の採用が効いている。燃費性能がターボで20.2km/l(WLTCモード)、NAエンジン車で20.5km/l(WLTCモード)と、それほど変わらないのも、ターボ車だけに採用されたD-CVTの存在が大きい。

NA(自然吸気)モデルのエンジンルーム

ターボモデルのエンジンルーム

 また、タフトは新世代モデルということもあり、衝突被害軽減自動ブレーキを含む先進運転支援システムが充実しているのも特徴。軽自動車でありながら、オプションとしてACC(全車速追従機能)やステアリングをアシストするLKC(レーンキープコントロール)まで用意されている。最新の軽自動車の装備の充実ぶりを象徴する装備と言える。

 ちなみにターボ車とNA車の価格差は約12万円。しかし、ターボ車には4.4万円相当の運転支援システム(ACC等)のオプションが標準仕様となるため、実質の差は7万円ちょっと。高速道路での移動を想定しているなら、迷わずターボ車を選ぶべきだろう。


ライバルとなるスズキ「ハスラー」との違いは

 タフトのライバルとなるのは、スズキのハスラーだ。ハスラーは2014年に初代モデルが登場し、軽自動車にクロスオーバーSUVというジャンルを切り開いた。タフトと同様に、昨年の東京モーターショーで第2世代のコンセプトが登場。タフトはモックアップの出品であったが、ハスラーは、ほぼ量産車そのままであり、2020年1月に新世代の新型車の発売が始まっている。

 ハスラーとタフトの大きな違いはキャラクターだ。窓が大きくキュートなハスラーに対して、タフトはクーペのような雰囲気がある。ガラス・エリアの小ささを「スカイフィールド」でカバーするのがタフトの特徴だ。パワートレイン的には、ハスラーが2次電池を使うマイルドハイブリッドを使うのに対して、タフトはハイブリッドの用意がない。そのため燃費性能はハスラーが一枚上手となる。一方、タフトは電動パーキングブレーキやオートブレーキホルードという装備で勝る。そして、先進運転支援の充実度は両車互角と言っていい。

 丸い目(ヘッドライト)でルーミーなハスラーは燃費性能が優れ、角ヘッドライトでクーペ風のタフトはクールさとスカイフィールドルーフの解放感が魅力となる。内容的には良い勝負ではないかと思う。

軽自動車にもSUVのムーブメントが到来

 これまで、軽自動車のクロスオーバーSUVといえばハスラーの独断場であった。しかも、今年1月に登場した第2世代のハスラーは、相当に売れている。なんと1~6月の販売ランキングで4位に食い込んだ。ちなみに、軽自動車の売れ筋は、ここ数年すっかりハイトワゴンからスーパーハイトワゴンに移っている。今年1~6月の販売トップ3は、1位がホンダのN-BOX、2位がスズキのスペーシア、3位が日産のルークス。3台ともスライドドアを持つ、背の高いスーパーハイトワゴン。その次がクロスオーバーSUVのハスラーとなる。

 ここに6月発売のタフトが参戦。ハスラーが唯一の存在であったクロスオーバーSUVにタフトが加わるのだ。ライバルが競ってこそ、ムーブメントは生まれる。そういう意味で、タフトの参戦によって、俄然、軽自動車のクロスオーバーSUVの注目度は高まった。この2台が売れるようになれば、ホンダや日産、三菱からもクロスオーバーSUVが登場する可能性は高まる。そうなれば、現在の売れ筋であるスーパーハイトワゴンの立場を、クロスオーバーSUVが奪取することになるだろう。

 なんといっても、普通車の世界では、すでにSUVがトレンドとなっているのだ。軽自動車も同じようにならない方が逆におかしい。今回のタフトの試乗では、その走行性能の高まりと先進運転支援システムの充実度に驚いた。これならば、高速道路の移動が中心の人であっても、タフトをファーストカーとして利用できる。これまでの軽自動車ユーザーだけでなく、小型車からの乗り換え組も増えることだろう。今回の試乗で、そうした新しいムーブメントを起こす力をタフトからは感じられたのだ。

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筆者紹介:鈴木ケンイチ

 

 1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。

 最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。


 
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