リアルの手前はいくらでもバーチャルでいい
最後の15分は、いよいよポストコロナの話に移る。テーマとして掲げたのは「リアルとバーチャルのコミュニケーション」と「テクノロジーへの期待」だ。緊急事態宣言下の中、われわれは実際に会えるリアルの価値と、場所を問わずにやりとりできるバーチャルのコミュニケーションについて深く考え直した。両社の話を聞いて「会えなくても仕事はできる」のは理解できたが、果たしてリアルを失ってよいのだろうか?
アンジェラックスは新入社員のオリエンテーションも研修もオンラインで行なったが、Zoom呑み会でオンラインの限界を理解したという。「少人数で催した新入社員の懇親会でうちの社長が『Zoom呑み会ダメ。やっぱりリアル最高!』って言っていましたが、やはり迷惑をかけあってこそ絆が生まれる。ダメなところを出すというのが、バーチャルでは難しい」と大杉氏は指摘する。『チームを作る』ということに関しては、やはりリアルに勝るものはないと改めて確信したという。
これについて杉山氏は、「リアルでの体験を提供する旅館こそ、その手前はどこまでもオンライン・バーチャルでやれると思っています。IT下手でいいということにはならないし、バーチャルをとことん試して、最後のリアルに磨きをかけるとうことは旅行業界はもっとチャレンジしていい」とコメントし、テクノロジーの導入についても前向きだ。実際、和心亭豊月は浴場に人感センサーを設置し、どれくらいの人数が入っているかをわかる仕組みをパートナーとともに構築中。LINE WORKSのチャットボットと連携して、おもに従業員が清掃するタイミングを見計らうのに使う予定だという。
テクノロジーの導入という観点では、アンジェラックスは完全キャッシュレスとサブスクリプションを前提とした「エントランス」という新店舗を昨年末外苑前にオープンしている。「とにかくデジタル化の遅れたエステ業界で、フルデジタルでなるべくやろうという」(大杉氏)ということで、チェックインも会計もすべてスマホから行なえる店舗で、ふたを開けてみれば20・30代より40代の利用がもっとも多いという結果も得られているという。
組織やチームワークがよくなったと実感した瞬間は?
最後は視聴者から出た「集まれない中で組織やチームワークが良くなったと実感した瞬間はどんな時ですか?」という質問に対して二人が答えてくれた。
杉山氏は「休業延長のような重大局面を周知するのにあたって、大人数だったらハイとしか言えないリアクションが、LINE WORKSだと個人ごとにコメントできるのが面白かった」と語る。コロナ渦の現状は「情報共有」と「周知」がメインだが、LINE WORKSのやりとりをログとして残すことで数年後までには会社の方向性をきちんと「浸透」させるというのが、杉山氏のねらいだ。
大杉氏は「シンプルに言うと、休業中は長野のメンバーが「東京の分まで稼ぎます」と言ってくれ、5月に復帰した東京のメンバーが「休んだ分、長野の分まで稼ぎます」と言ってくれたところです」とコメント。まさに苦しい休業を乗り越えて、組織が一丸となった瞬間と言えるのではないだろうか?
新型コロナウイルスのダメージの大きかった旅館とエステサロンを迎えた今回のトークセッション。LINE WORKSをはじめとしたデジタルツールの活用とリーダーの試行錯誤、そしてメンバーの奮闘により、緊急事態宣言の中でもきちんと仕事が進んだことは理解できた。まだまだ予断を許さない状況ではあるが、「転んでもただでは起きなかった」という今回の経験が、両社のビジネスにどのように影響していくのか、とても楽しみだ。
ワークスモバイルジャパンでは今後もITとほど遠い世界の働き方を変えるべく、さまざまなイベントを予定しているという。「オンライントークライブ-会えなくても仕事は進む Episode 2」は「地域包括ケア時代の情報連携」をテーマにして2020年8月6日(木)の17時30分から開催。Peatixにてすでに参加者を募集中なので、ぜひ参加してもらいたい。
【8/6(木)オンライン開催】小さな変革で離れた現場が見えるように!医療・介護従事者の業務効率化への一歩とは?
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