吉祥寺は新型コロナ騒動などイメージで語られがち
去年の6月中旬に吉祥寺に引っ越してきてから、1年以上が経ちました。
吉祥寺は住みたい街ランキングでよく上位になったり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)にともなう緊急事態宣言下に人出が多いと週刊誌に叩かれたり、良くも悪くもイメージで語られがちな傾向があると思います。
たとえば、「SUUMO」を運営するリクルート住まいカンパニーが手がける「住みたい街ランキング」では、吉祥寺は2012年〜2015年は1位に輝き、2016年に恵比寿に首位を奪われて2位。2017年に再びトップに返り咲き、2018年〜2020年には1位は横浜、2位は恵比寿、3位は吉祥寺の順になっています。
しかし、このランキングの上位は吉祥寺はもちろん、恵比寿や目黒、品川、新宿など有名な街が多いです。個人的には、実際の住みやすさではなく、イメージが先行しているような印象があります。
実際、このようなランキングに影響していると思われる「おしゃれ」といったイメージは、あくまで吉祥寺の一面に過ぎません。むしろ、「おしゃれ」といった言葉でくくれない場所もたくさん存在するからこそ、吉祥寺は魅力的なのです。この点は後ほど詳しく書きます。
また、緊急事態宣言下の人通りについても、地元に住む私が見る限り、普段よりは人通りが“確実に”減っていました。時期や曜日によって異なりますが、少ないときには、普段の3割以下だったと記憶しています。
具体的には、街を歩く人々は普段に比べると少し年齢層が高く、スポーツウェアを着ていたり、買い物用のマイバッグを持っていたり、近所で必要な用事を済ませる人が多い印象でした。
もしかしたら、吉祥寺は駅前の商店街にドラッグストアなど、生活必需品を取り扱う店が多いため、地元の人が買い物に行くと、駅前が賑わっているように見える側面もあったのかもしれませんが……。
住みたい街ランキング上位「吉祥寺」 本当の魅力とは?
少し前置きが長くなりましたが、このように“イメージの中の吉祥寺”と“実際の吉祥寺”には大きなギャップが存在します。では、本当の吉祥寺の魅力とは何なのでしょうか。
消費社会研究家かつ、マーケティング・アナリストで、吉祥寺に20年近く(※2007年出版当時)住み続けている三浦展氏は、渡和由研究室との共著『吉祥寺スタイル 楽しい街の50の秘密』(文藝春秋)のなかで、吉祥寺に引っ越してきたばかりの頃のこんなエピソードを紹介しています。
駅ビルのベンチで息抜きをしていると、隣に座った年配の男性が「吉祥寺は住みやすいですよ。お金がある人は百貨店で買い物をすればいい。お金がなくても元気のある人は公園を走ればいい。お金も元気もない人はベンチに座っていればいい」と話しかけてきたというのです。
続けて、三浦氏は「いろいろな人がいて、それぞれの人が自分の居場所を見出せる。それが吉祥寺の最大の魅力なのだ。(中略)この街は独身の若者でも、子連れの家族でも、一人暮らしの老人でも、離婚した中年男でも、サラリーマンでも、漫画家でも、誰でも住みやすい。そして毎日暮らしても飽きないのである」とつづっています。
吉祥寺にはエリアや店など多様性がある
冒頭で「おしゃれ」といった言葉でくくれない場所もたくさんあるからこそ、吉祥寺は魅力的と軽く触れましたが、三浦氏が言及しているとおり、吉祥寺にはいろいろな人が居場所を見いだせる多様性があります。
吉祥寺グランドデザイン改定委員会がまちづくりの方針を示した「吉祥寺グランドデザイン2020」では、吉祥寺駅を中心に街を4つのエリアに分けています。この分類を用いて、大雑把にそれぞれの特徴を紹介しましょう。
・「セントラルエリア」には、飲食店やドラッグストア、スーパーなどがあり、食料や日用品はもちろん、衣服なども揃う「吉祥寺サンロード商店街(サンロード)」、ディープなバーや飲食店が密集する「ハーモニカ横丁(ハモニカ横丁)」が含まれます。俗に言う「便利」なエリアです。
・「ウエストエリア」は、SHIPSやラコステなどの有名な服飾店、イタリア料理屋やカフェなどがある「東急裏エリア」が代表格です。いわゆる「おしゃれ」な場所と言って良いでしょう。
・「イーストエリア」は、吉祥寺図書館やコミュニティセンターなどの公共施設だけではなく、飲み屋やラブホテル、性風俗といった歓楽街としての役割も担っています。一概に言うのは難しいですが、個人的には「夜の街」といった印象が強いです。
・「パークエリア」には、井の頭恩賜公園(井の頭公園)はもちろん、イタリア料理屋やパン屋などの飲食店もあります。とくに、井の頭公園はさきほど触れたとおり、ジョギングや散歩をしたり、ただのんびりしたりできます。強いて言うならば、「落ち着いた」エリアと表現できるでしょうか。
大まかに4つのエリアそれぞれの特徴を表すキーワードを抜き出すと、「便利」「おしゃれ」「夜の街」「落ち着いた」と、多種多様なイメージがあることがわかります。
しかも、あくまでこのくくりは便宜上のもの。たとえば、同じセントラルエリアでも、吉祥寺に遊びに来た人はもちろん、地元の人の生活も支えるサンロードと、どこか懐かしい気分に浸れるハモニカ横丁では、大きく雰囲気が異なります。
少し付け加えると、エリアだけではなく、店もバリエーションに富んでいます。たとえば、飲食店はイタリア料理、フランス料理、ロシア料理、インド料理、台湾料理、カフェ、ファーストフード、お好み焼き、ラーメン、定食、お寿司、パスタ、焼き肉、居酒屋……などなど。
同じ業種でも競合店も多く、それこそ東急裏のおしゃれな店から、ハモニカ横丁の居酒屋まで、行きたい場所にどこでも行けるわけです。私自身も吉祥寺に住んでから、すっかりグルメが趣味の1つになりました。
まさに、吉祥寺は「いろいろな人がいて、それぞれの人が自分の居場所を見出せる。(中略)そして毎日暮らしても飽きない」といった言葉がぴったり当てはまる街と言えるでしょう。
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