YOXO Accelerator Program 2020説明会イベントレポート
ギャップ、スキマ、ズレはチャンス 変革期のイノベーション
2020年6月25日、横浜・関内のベンチャー企業成長支援拠点「YOXO BOX」から、YOXO Accelerator Program 2020説明会イベント『新たな変革を求められる時代のイノベーション』をオンライン開催した。
YOXO Accelerator Programは、横浜から「新たな変革を求められる時代のイノベーション」をテーマに新時代を切り開くスタートアップの創出を目指した支援プログラム。イベントでは、本プログラムの紹介のほか、The Breakthrough Partners GO FUND代表パートナーの小池 藍氏による講演、小池氏とPROJECT INITIATIVE 株式会社 代表取締役の藤田 勝利氏、株式会社CROSS SYNC代表取締役・医師の髙木 俊介氏によるパネルディスカッションが実施された。
横浜市では、「イノベーション都市・横浜」の実現に向けて、「YOXO(よくぞ)」のテーマのもと、スタートアップや起業家、イノベーション人材を支援している。イベント冒頭では、横浜市 経済局 新産業創造課長 髙木 秀昭氏より、「イノベーション都市・横浜」へ向けた取り組みを紹介。続いて、株式会社アドライト 代表取締役 木村 忠昭氏が「YOXO Accelerator Program 2020」について説明した。
2年目となる今期は、with/afterコロナ時代に向けたイノベーションをテーマに、新時代を切り開くスタートアップを募集。採択されたスタートアップには、(1)有識者によるメンタリング、(2)大手企業等とのマッチング、(3)多彩なゲストとの交流、(4)専門家を招いたセミナーなどが提供される。
採択数は10社程度。特設サイトにて応募書類を提出後、書類による一次審査や面談による二次審査を経て、8月中旬に採択スタートアップを発表する。2020年9月からプログラムがスタートし、翌年2月に成果発表会が開催される予定だ。応募受付は7月27日(月)17時まで。
それでも選ばれるスタートアップとは
続いて、The Breakthrough Partners GO FUNDの代表パートナー 小池氏による講演「スタートアップを取り巻く現在の環境、選ばれるベンチャーの特徴」がおこなわれた。
歴史を振り返ると、ペストや天然痘など感染症をきっかけに社会が大きく変わっており、今回の新型コロナにより、これまでのグローバル化から分散社会へと変わることが予測される。
とはいうものの、現在の状況が続くことによる経済の落ち込みは免れない。そのなかでスタートアップが気を付けるべきポイントは、体質改善と健康寿命(ランウェイ)の確保だ。実際、新たなVCとの交渉や政府系支援の活用、オフィスの縮小や受託を含めたマネタイズを検討するなど、資金調達やバーンレートの見直しを進めているスタートアップは多いと言える。
一方、DXが急速に進み、EコマースやDX事業などデジタルサービスの成長機会につながるも、プレーヤーごとに伸び率に差が生じている。その例として、SlackとMicrosoft Teamsのユーザー数の変化を取り上げた。コロナ禍ではSlackに比べてMicrosoft Teamsの伸びが圧倒的だ。小池氏はその理由として、Microsoftの圧倒的な営業力や大手企業に基幹システムとして導入されていること、ブランドやセキュリティの信頼性などに加えて、DXに全振りした企業戦略と強力なリーダーシップが大きいのではないか、と考察する。
もう1つの例として、米国のフードデリバリーサービスDoorDash社を紹介した小池氏。同社はコロナ禍でUber Eatsを抜き、大幅に成長している。『「Delivering Good(フードロス・飢餓への対応)」という明確な企業ビジョンにより、資金調達や提携先の増強、地域の飲食店への支援など迅速に動くことができたのではないでしょうか』と小池氏は分析する。
コロナ時代のスタートアップには1)企業ビジョンと目的を明確にする、2)社会へのリーダーシップと内部へのフォロワーシップを発揮する、3)オペレーション・エクセレンスの確立の3つが求められると締めくくった。
パネルディスカッション「新たな変革を求められる時代のイノベーション」
後半のパネルディスカッションには、小池氏とYOXO Accelerator Programのメンターを務めるPROJECT INITIATIVE代表 藤田氏、当プログラムの第一期生であるCROSS SYNC 代表取締役 髙木氏がパネラーとして参加し、「新たな変革を求められる時代のイノベーション」をテーマに議論した。
いま感じている変化・変革
藤田氏(以下、敬称略):個人の方がより自立意識を持つようになってきたように感じます。以前は組織のヒエラルキーのなかにいた方が予期せずリモートワークに移行し、自分で意思決定をする時間が増えてきたことで会社への要求、マネジメント能力を見る目がシビアになっています。この変化をチャンスとして受け止めている会社と、経済活動の再開後4ヵ月前の状態に戻ろうとしている会社とでは、今後かなりの差が出てくるのではないでしょうか。
髙木氏(以下、敬称略):医療現場ではこれまで遠隔医療がなかなか受け入れられませんでしたが、新型コロナでは対面診療自体が感染リスクになることから、急に導入が進んでいます。また新しい感染症の症例を共有するために、各病院の先生方が協力し、これまで病院ごとに管理されていた患者さんの診療の状況やベッドの稼働状況が参照できるオンラインデータベースが作成されたのは非常に大きな変化です。
イノベーションの起こし方
小池氏(以下、敬称略):コロナ以前は、あらゆる業種がやりつくされている感じがありましたが、コロナ後の新しい世界感、生活様式の変化で、新たな領域やニーズが生まれてくるように思います。いま起きている変化をしっかりと観察し、どのようなニーズが求められるかを汲み取れるとチャンスにつながるのではないでしょうか。
藤田:まずは興味のあることから観察すること。これまで慣れ親しんだやり方がいつの間にか時代とズレていることがあります。ギャップ、スキマ、ズレはイノベーションのチャンスです。それにどれだけ敏感に気が付けるかどうかですね。
髙木:弊社は医療従事者向けの情報共有システムを提供していますが、今は遠隔医療や情報共有への理解が高まり、問い合わせが増えています。やること自体は変わらなくても、時流が変わればプラスに働くことがあります。イノベーションを起こせるかどうかはくじけずに続けることかもしれませんね。
イノベーションに必要なリーダーシップ
髙木:弊社はまだイノベーションを起こすよりも、まずはチームをつくる段階です。いいチームをつくるためにはリーダーがどれだけ情熱をもって動き、汗をかき続けられるかにかかっていると思います。
藤田:イノベーションのためのリーダーシップは、善い目的をつくり出すことが重要。人が面白いと感じる仕事は人それぞれ違いますが、やりがいのある目的のために働きたいと願う気持ちは共通しています。そういった善い目的が共有されれば、多様な人たちが1つのチームになって取り組めて、イノベーションを起こす可能性が高まります。
小池:自分の働いている組織がどのような社会を目指しているのかをみんなが気にするようになってきたので、社内の従業員に対するフォロワーシップが重要になっていると思います。
横浜に立地する魅力
髙木:私は1996年に横浜市立大学に入学してからずっと横浜に暮らしています。横浜は東京に近く、都会的で便利なのに、山や海の近くには長閑なエリアもあり、地域のつながりが感じられます。東京に比べると競争相手が近くにいないので、のびのびと事業ができるのも魅力ですね。
藤田:東京から横浜に移り住んで13年になりますが、とくに感じるのは、パブリックスペースのぜいたくさ。道が広く、整備も適度にされているので、気分転換にと海沿いを歩きながら話しもできますし、カフェの店内も広い。住宅の値段以上に外部環境から得られるメリットは大きいと思います。
小池:東京はそもそも特殊な都市。同じような場所がないので、東京では成立したビジネスが地方では通用しないかもしれません。全国展開を目指すなら、東京を除く地方都市のトップである横浜で起業するのは理にかなっていると思います。
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