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工事現場を常時録画し、遠隔通話も可能

トランシーバー感覚で使える小型ウェアラブルクラウドカメラ「Safie Pocket2」

2020年07月03日 14時00分更新

 セーフィー株式会社は2020年7月1日、クラウド録画型のウェアラブルカメラ「Safie Pocket」の後継機「Safie Pocket2」(セーフィー ポケット ツー)の提供を開始した。

 Safie Pocket 2は、バッテリーとLTEを内蔵し、撮影した映像をクラウドに記録するウェアラブルカメラ。工事現場などの作業員が装着することで、本社の管理者はライブ映像を見ながら、トランシーバー感覚で現場作業員と通話ができる。同日午後に開催された記者発表会は、Youtubeライブで配信され、後半で、建設・土木業界のITC活用と国交省の策定した「遠隔臨場」をテーマに、大林組、鹿島建設、大成建設の3社とのパネルディスカッションが実施された。

工事現場を常時録画し、遠隔通話できるクラウドカメラ

 Safie Pocketは、リアルタイムで双方向通話ができる、クラウド常時録画型のウェアラブルカメラだ。おもに工事現場での利用を想定したもので、作業員の胸ポケットなどにクリップで装着して現場の映像を常時撮影し、遠隔の事務所などからリアルタイムで視聴や会話ができる。また、スタンドで据え置きして無人での24時間記録も可能だ。

 2019年に発売された初代のSafie Pocketは、発売から1年で750現場、1600台以上に導入され、建設工事の現場巡回やハウスメーカーの品質管理、設備施工の作業指示などに活用されている。土木・建築工事で本社の管理者が確認のために現場に赴く場合、移動に時間がかかり、1日で回れるのはせいぜい2ヵ所だ。Safieを導入すれば、管理者は遠隔で1日数十ヵ所の現場を確認でき、大幅に作業効率が向上する。

 

 従来、土木・建築現場では発注者による立ち会いでの目視検査が義務付けられていたが、新型コロナウイルスの影響を受け、国交省は土木建設業界のICT化を進めている。この5月に国交省が策定した「建設現場の遠隔臨場に関する施行要領」では、映像データを用いたオンラインでの遠隔立ち合いが推奨されており、今後建設業界での導入は一気に進む見込みだ。

LTE通信とバッテリーを内蔵し、1台で手軽に使える

 旧モデルの通信機能はWi-Fiのみでバッテリーは内蔵しておらず、別途モバイルルーターとモバイルバッテリーを持ち運ぶ必要があった。Safie Pocket2では、LTEに対応し、4200mAhの大容量バッテリーを内蔵したことにより携帯性が向上している。

 本体のカバーを開くと、すぐにクラウドに録画が開始し、遠隔でリアルタイム視聴ができるようになる。撮影した映像はクラウドに30日間分保存され、後日の振り返りが可能だ。側面に「スナップショットボタン」、上面には遠隔通話用の「呼び出しボタン」を搭載。背面には撮影画像をプレビュー表示するディスプレーを装備。スナップショットの静止画撮影時には、撮影時刻とともにGPSの位置情報が付与して記録される仕様だ。

本体サイズは、高さ84×幅55×厚み30ミリ、重さ155g。LEDライト付きで暗い場所でも撮影が可能。防水・防塵性能はIP65を備える

 Safie Pocket2は、カメラ本体とヘッドセットなどの機器、データ通信費、クラウド使用料込みのレンタルプランで提供される。料金は、長期プラン(24ヵ月以上)で初期費用無料、月額1万5000円(税別)。7月1日の提供を前にプリセールスで8000台を受注しているとのこと。

建設業界はICT活用、遠隔臨場でどう変わるのか

 セーフィー株式会社は、ソニーグループ出身の3名、CEOの佐渡島 隆平氏、CTO/エンジニアの森本 数馬氏、CTO/エンジニアの下崎 守朗氏によって2014年に設立された会社だ。創業以来、インターネットを介した映像サービスを展開しており、クラウドカメラサービス業界ではシェアナンバー1を誇る。建設現場に限らず、店舗、医療などあらゆる業種で防犯や遠隔監視に利用されている。

 2月にダイアモンドプリンセス号内で新型コロナウイルス感染症が発生した際は、感染者を受け入れた聖マリアンナ医科大学病院でSafieが導入され、患者の容態・バイタルチェックを遠隔確認に利用されていたそうだ。

 今後は映像データをAIで分析し、交通渋滞予測などにも活用していく計画だ。

 後半のパネルディスカッションには、株式会社大林組の高橋寛氏、鹿島建設株式会社の渕先 弘一氏、大成建設の中尾 勇貴氏が参加し、土木・建築業界における現在のICT活用状況と今後の計画、期待される技術について語った。

 鹿島建設では、600台以上のカメラを導入し、本社からすべての映像が見られるようになっているそうだ。渕先氏によると「今や現場管理はカメラありき。車両建設機械にもすべてドライブレコーダーを搭載しているので、今後はドライブレコーダーもクラウドに映像をあげていく仕組みを構築したい」とのこと。

 国交省の策定した遠隔臨場の施行については、大林組の高橋氏が「これまでは発注者の監督官から適宜検査を受けなくてはいけなかった。遠隔臨場になれば足を運んでもらわずに済むのは助かる。一気に進むのでは」とコメント。

 大成建設の中尾 勇貴氏は、Safie Pocket2の機能について「操作が簡単で、映像に遅延がなくて画質も音もいい。耐水、耐防塵がIP65、耐衝撃性2メートルと現場で問題なく使える」と評価した。

 今後、5Gが普及し、低遅延性、高速通信、同時接続などの技術が進めば、建設機械の自動化、遠隔操作などの実現も見えてくる。鹿島建設では、遠隔での確認時に現況データや実測データを重ねて表示させているが、5Gが導入されれば、ARやVRデータも遠隔で取り扱えるようになるだろう。

 大林組では、Safie Pocketで撮影した工事現場の映像を時系列でクラウドに保存しており、現在との比較を現場で気軽に確認できるのが便利だそう。高橋氏は、「5Gになれば、それらに属性を与えて、品質を担保するような仕組みを作りたい。また、土木工事は、その瞬間に現場にいないと見られない光景があります。いま取り組んでいるのは、トンネルを両方向から掘るときに、最後の貫通の瞬間をライブ配信すること」と期待を寄せた。

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