週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

CPUよりも7倍以上速いことも!?RadeonのGPUエンコーダーでアドビソフトの動画エンコード速度を検証

2020年06月27日 11時00分更新

GPU性能でエンコード速度は変わるのか?

 アドビ製品におけるRadeonのGPUエンコーダーの使い方を解説したが、CPUエンコードをGPUエンコードにすることで実際どの程度早くなるのか、そして画質はどう変わるのか検証してみた。検証環境は以下の通りとなる。

 今回CPUはメインストリームCPUとしては最多コア数を誇るRyzen 9 3950Xを選択。CPUコア数の多いCPUといえばRyzen Threadripperだが、Media Encoderでは全てのコアを使い切れない(参考記事:https://ascii.jp/elem/000/004/005/4005423/)ので、Ryzen 9 3950Xが最適と判断した。

 ビデオカードはNavi世代の中からRX 5700とRX 5500XTの2モデルを準備。GPUの性能の高いものと低いもので、GPUエンコード時間に差はでるのかも確認しておきたい。

【検証環境】
CPU AMD Ryzen 9 3950X
(16コア/32スレッド、3.5GHz~4.7GHz)
マザーボード GIGABYTE「X570 AORUS MASTER」
(BIOS F11)
メモリー G.Skill「F4-3200C16D-32GTZRX」×2
(DDR4-3200、16GB×4)
グラフィック AMD「Radeon RX 5700リファレンスカード」
ASRock「Radeon RX 5500 XT Challenger D 4G OC」
(Radeon RX 5500XT)
ストレージ GIGABYTE「GP-ASM2NE6200TTTD」
(NVMe M.2 SSD、2TB)
電源ユニット Super Flower「Leadex Platinum 2000W」
(2000W、80Plus Platinum)
CPUクーラー Corsair「H115i Pro RGB」
(簡易水冷、280mm)
OS Windows 10 Pro 64bit版
(May 2020 Update)

 テストはPremiere Pro 2020で編集した4K動画(再生時間約3分半)を、Media Encoder 2020で1本のMP4動画に出力するときの時間を比較する。エンコード設定はH.264がVBR 1パスの80Mbps(最大95Mbps)、H.265がVBR 1パスの50Mbps(最大60Mbps)とした。

「Media Encoder 2020」におけるエンコード時間

 GPUエンコードを利用すると、H.264ではCPUの処理時間のほぼ半分程度、H.265ではCPUエンコードの7分の1程度の時間で終了した(CPUエンコードの処理時間はRX 5700でも5500XTでもほぼ同じ)。RadeonのGPUエンコーダーを上手く利用すれば、エンコード時間を大幅に短縮できることが分かったはずだ。

 だがGPUエンコードは高速なぶん画質が粗いため、決して万能ではないというのが動画界隈での常識だ。前述の通り、Premiere ProではCPUエンコード時は目標ビットレートと最大ビットレートの2つが指定できるのに、GPUエンコード時は目標ビットレートしか指定できない。低負荷で高速なぶん小回りが効かない、そして画質も控えめというのがGPUエンコードの定説だ。

 ではRadeonのGPUエンコーダーはCPUエンコーダーに比べどの程度画質が劣るのだろうか? 次の図はMedia Encoder 2020で書き出した4K MP4動画の拡大図だ。

今回のテストのために準備した4K動画の全体図

H.264、VBR 1パス、CPUエンコーダーを使い目標ビットレート80Mbps/最大95Mbpsでエンコードした時の拡大図

H.264、VBR 1パス、GPUエンコーダーを使い目標ビットレート80Mbpsでエンコードした時の拡大図

 十分にビットレートが高い状態であれば、GPUエンコードもCPUエンコードも全く見分けがつかないようだ。では同じ素材を使って8Mbpsでエンコードした場合はどうなのだろうか?

H.264、VBR 1パス、CPUエンコーダーを使い目標ビットレート8Mbps/最大10Mbpsでエンコードした時の拡大図。バス停の左に続く歩道や生垣のディテールが飛んでしまっている

H.264、VBR 1パス、GPUエンコーダーを使い目標ビットレート8Mbpsでエンコードした時の拡大図。CPUエンコーダーよりもディテールの喪失が目立つ

これもCPUエンコーダーで目標ビットレート8Mbps/最大10Mbpsでエンコードしたものだが、VBR 2パスエンコード時の状態。歩道のディテールは失われたままだが、生垣のディテールが復活している

 ビットレートが低い状態だと、RadeonのGPUエンコーダーではディテールが著しく低下する。編集した動画の流れをみたい時にはGPUエンコーダーは有効だが、画質を重視したい時はCPUを使いVBR 2パスでエンコードする方が良さそうだ。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

この連載の記事