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自動運転の基礎 その21

自動走行ビジネス検討会によるロードマップ4.0を解説

2020年06月03日 10時00分更新

自動運転実現に向けたロードマップを発表
ただし交通インフラや流通のみ

 5月12日、自動走行ビジネス検討会が「自動走行の実現に向けた取組報告と方針」(Version4.0)を発表した。自動走行ビジネス検討会とは、2015年2月に経済産業省と国土交通省によって設置された産官学体制の検討会だ。参加メンバーとしては、トヨタをはじめホンダ、日産、スバル、マツダ、いすゞ、日野といった自動車メーカーやデンソー、パナソニック、ジェイテクトといったサプライヤー、東京大学、名古屋大学など、日本の自動車関連のビッグネームがずらりと並んでいる。

 今回、発表された報告書は2019年度の検討分で、無人自動運転サービスの実現・普及に向けたロードマップなどが記載されている。ちなみに、名称に“ビジネス”とあるように、検討する内容は乗用車ではなく、交通インフラや流通といったモノが対象となる。

 発表されたロードマップを見ると、走行環境による違いを基本として5つの類型が定められ、それぞれに対する具体的な目標が示されている。以下に5つの類型ごとに目標を説明する。

類型A 閉鎖空間

 工場や空港、港湾などの敷地内等で、敷地内の人の移動や輸送を行なう。2022年度ごろまでの短期目標としては、数ヵ所の工場で遠隔監視のみの自動運転サービスを開始。一人の監視者による複数台の運用も実施。2025年度をめどに10数ヵ所以上の工場で、遠隔監視のみの自動運転サービスが普及。一人の監視者が監視する台数も増加させる。

類型B 限定空間

 鉄道の廃線跡やBRT(バス・ラピッド・トランジット)専用区間など、専用コースにおける人の移動サービスとなる。低速走行のモビリティーでは、2022年度までに、遠隔操作および監視者ありの自動運転サービスを開始。数ヵ所で遠隔監視のみの自動運転サービスを開始し、一人の監視者による遠隔監視を実施。2025年度をめどに全国10ヵ所以上の遠隔監視のみの自動運転サービス普及を目標とする。

 BRTやシャトルバスを用いた中速での運用に関しては、2022年度までに車内に保安運転者ありで自動運転サービスを開始。2025年度をめどに10ヵ所以上での遠隔監視のみの自動運転サービス普及が目標となる。一人の監視者が監視する台数も増加させる。

類型C 自動車専用空間

 高速道路や自動車専用道における高速走行でのトラック幹線輸送サービス。2021年度に、隊列走行における後続車車内に保安運転手ありでの有人隊列走行を商業化。2025年度以降には、隊列走行時の後続車への車内乗務員のみ(一部無人)での商業化を実現。

類型D 交通環境整備空間

 街の幹線道路におけるタクシーやバスサービス。2021年ごろから、車内に保安運転手ありの状態での自動運転サービスを開始。2025年度をめどに遠隔監視のみ、もしくは車内乗務員のみの自動運転サービスを全国数ヵ所での開始が目標となる。

類型E 混在空間

 クルマや歩行者などが混在する生活道路などにおける人の移動サービス。低速の小型モビリティーに関しては2021年ごろまでに遠隔操作および監視ありのサービスを開始し、徐々に拡大。2023年ごろには遠隔監視のみの自動運転サービスを開始して、2025年度をめどに全国10ヵ所以上に普及。

 中速で走行するバスや小型タクシーにおける移動サービスは2023年ごろに車内に保安運転手アリの状態でサービスを開始。2026年度以降に遠隔監視のみ、または車内乗務員のみの自動運転サービス開始を目標とする。

全国でお目にかかれるのは2030年頃!?

 走行環境でいえば、類型AからB、Cと進むほど、技術的なハードルは高くなる。また、速度も高くなるほど困難になるのが基本だ。そうした中で、まずはシステムがお手上げになったときに運転を交代する保安担当者として運転手を同乗させた格好での自動運転サービスを実施。その後に、運転手の代わりに遠隔監視・操作を導入。サービスによっては、乗客対応のための乗務員を車内に置くケースもある。そして、一人の遠隔監視者が見守る自動運転車両を増やしていく。これが、自動運転サービスのロードマップの基本となるようだ。

 今回のロードマップを見ると、多くのケースで2025年度を目途にしている。全国で、どこでも普通に目にできるようになるのは、さらに先の2030年ごろになるだろう。

筆者紹介:鈴木ケンイチ

 

 1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。

 最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。


 
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