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ピンチを攻めに変える戦略、ダイキン社長に聞く

2020年05月29日 13時46分更新

重要経営課題として、6つの緊急プロジェクト

 ダイキン工業は、「守り」の43テーマと、「攻め」の31テーマ、「体質強化・体質改革」の17テーマに取り組む方針を発表する一方、重要経営課題として取り組む6つの「緊急プロジェクト」を新たに発表した。

 「守り」の43テーマでは、新型コロナウイルスの影響の急拡大を踏まえて、固定費の徹底的な圧縮や、販売店および取引先への迅速な支援などを含み、「攻め」の31テーマでは、インターネットを活用した営業強化、 消費者の意識や行動の変化を見据えた打ち手の展開などの施策で構成。「体質強化・体質改革」の17テーマでは、身軽で強靭な固定費構造の確立、AIやIoTを活用した業務プロセスの変革による業務効率化などに取り組む姿勢を示した。

 「第1四半期は、経済活動の制限がかかっており、守りの施策が中心になる。だが、新型コロナウイルスが終息し、需要が立ち上がったときには、ライバルに先んじてV字回復するために、攻めの構えも用意した。守りと攻めの転換を機動的に行えるかどうかが重要である」とする。そして、体質強化・体質改革については、「リーマンショックの時と同様に、ピンチこそが、体質強化をするチャンスであると考えている。厳しいときは委縮しがちになるが、むしろ、いまこそ、体質を変えるチャンスであると前向きに捉えて、やるべきことをやることが大切だ」とする。

 重要経営課題として取り組む6つの緊急プロジェクトとして、

  • 全グローバルの調達、生産、在庫、物流の構えの強化
  • 需要の減退、縮小と世の中の変化の中でライバルに打ち勝ち、価格を維持しながらシェアアップを実現するための販売力、営業力の強化
  • 空気質、換気への意識の高まりにより、新たに生まれる需要を徹底的に刈り取るために、全世界横串での空気、換気商品の拡販、差別化新商品の開発、投入、ソリューションメニューの具体化
  • 固定費の抜本的削減(損益分岐点・売上高固定費比率の抜本的低減)
  • 事業環境の先行きが、従来になく不透明ななかでの大型投資(設備投資、投融資)の優先順位付け
  • グループ全体の資金需要をキメ細かく把握した資金調達の構え

を打ち出した。

 「厳しい環境のなかでも、様々な需要が生まれている。また、影響が長期化した際に、在庫増にならないことへの備えも必要になる。瞬時に全世界の状況を把握して、最適な対策を取るための判断ができるようにしておかなくてはならない。また、在宅勤務の拡大やテレワークの広がり、eコマースの利用増加を捉えて、新たな販売施策にも取り組む必要がある。一方で、新型コロナウイルスの環境下において、除菌や殺菌、換気といった空気質に対する意識が高まっており、こうした需要を徹底的に刈り取るため、他社にはない差別化商品も投入する。病院などに対しては、ソリューションメニューを提供することで、ビジネスチャンスにつなげたい」などと述べた。

人材獲得や設備投資、研究開発投資、M&Aを縮小する考えはない

 そして、こうした環境下においても、「人材獲得や設備投資、研究開発投資、M&Aを縮小する考えはない」とし、「チャンスと思えば、この資金を投じてM&Aを積極的に行っていく」とも語る。

 十河社長兼CEOは、「この1年は、手の打ち方でライバルとの差がつくタイミングであり、強い企業とそうでない企業が分かれる勝負どころである。企業の競争力が試される1年であると認識して、経営の舵取りをしていく」と語る。

 そして、「現場や現実の変化の波打ち際に身を置けるかどうかが大切である。また、情報を集めるだけでなく、有事の際に乗り越えてきたこれまでの経験をもとにした勘所が重要な意味を持つ。勘所をまとめたのが、守りの43テーマと、攻めの31テーマ、体質強化・体質改革の17テーマということになる」と語る。

 「ダイキン工業は、バブル崩壊やリーマンショックといった難局を、全社一丸となった挑戦と実行力で乗り越えてきた。危機における抵抗力があり、そうした局面において、戦う力が強い会社である。その強みを今回の難局に生かすことで、過去に経験したことがない異質な危機も必ず乗り越えられる」と胸を張る。

 厳しい環境に置かれることになる2020年度は、戦略経営計画「FUSION25」を策定する1年でもある。その策定においても、この1年間の経営の舵取りが、どう反映されるのかにも注目したい。

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