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実は50年以上の歴史があった

パナソニックが農業に、土壌と作物を分析する「栽培ナビドクター」

2020年05月28日 18時10分更新

 パナソニックは、安定的で、効率的な農作物の生産を支援するサービス「栽培ナビドクター」の提供を開始する。

 「土壌総合診断」、「土壌定点診断」、「作物体診断」の3つの診断サービスを提供。土壌と作物の状態を見える化し、栽培ステージに応じた土壌と作物の定期的な分析をもとにした対処方法のアドバイスを提供。肥料や農薬などの過剰な使用を抑え、環境への負荷を軽減するほか、安定的で効率的な栽培方法の確立をサポートするという。

 パナソニック アプライアンス社事業開発センター アグリ事業プロジェクト総括担当の新居道子氏は、「栽培ナビドクターは、経営と営農の見える化とともに、土と栽培の見える化を実現するものになる」と位置づける。

 パナソニックでは、2016年12月から、クラウド型農業管理システム「栽培ナビ」を提供している。同サービスは、農業生産工程管理における品質認証制度であるGAP(Good Agricultural Practice)に対応。専用サイトから、農業組織と生産者が営農に関する様々なデータを記録、情報共有しながら、営農指導の効率化、品質向上、生産性向上などに役立てることができる。設定費用は10万円(税抜)、月額利用料は1980円(税抜)。

 パナソニックの新居氏は、「パナソニックが考える営農システムは、生産者にとってもうけるためのツールであるという点。そのためには、見える化して、売上げをあげ、支出を下げることを目指す。栽培ナビは、クラウドであるためにデバイスに依存することなく利用でき、必要な人に必要な部分だけの情報を共有することにより、販売力と収益性を向上。農薬の使用方法や回数の見える化、IoTを活用した圃場の見える化により、効率性と品質を追求。栽培地温を見える化し、冬場のメロンを無加温で栽培するといったデータの活用例もある。また、写真や資料、栽培データなどの加工や保存が可能であり、ノウハウの蓄積や人材育成にも貢献できる」とした。現在、農業法人や地域営農、市民農園などで利用しているという。

 今回発表した「栽培ナビドクター」は、土壌と作物の状態を見える化し、サスティナブルな営農を支援する新たなサービスとなる。

 パナソニックの新居氏は、「多くの生産者から言われるのは、『土(地力)』が落ちており、いまこそ、土の見える化が重要だという点。慣行農業によって、化学肥料や農薬の使用を背景に土壌環境の疲弊化が見られている。これによって、環境保全の問題につながったり、農作物が持つ免疫力が落ちるという課題もある。土を見える化することで、栽培の効率化を手伝いたいという狙いから生まれたサービス。土を科学的、論理的に分析し、栽培を確立するものになる」とし、「農業のお医者さんを目指して、『栽培ナビドクター』と命名した。提供するサービスは、人間ドックにあたるもので、体脂肪が多い、血圧が高いといった場合には、食事制限をし、その結果を数カ月後に血液検査で調べるのと同じように、土の状況と、改善状態を見える化することができる」と述べた。

 栽培ナビドクターで提供する「土壌総合診断サービス」は、耕起(施肥前)の土壌の状態を総合的に診断。光合成をはじめとする生化学反応に欠かせないマグネシウムなど有機栽培に必要なミネラル群などを含む26項目の分析により、栽培する作物に必要な成分の過不足を把握。最適な土壌づくりを可能とする。減農薬や減化学肥料栽培、有機栽培に活用できるという。水稲の場合は27項目で実施する。料金は1万5000円。

 「土壌定点診断サービス」は、作物の生育段階に合わせて実施する土壌診断。生育に必要な土壌の状態や成分の過不足を知ることができ、作物の成長の遅れや、生育不全が起きているとき、あるいは開花や着果不良、いつもと違う病害虫が発生している時に実施すると効果が高い。20項目の診断で1万円、12項目で5000円。

 「土壌の状態を知ることで、適切な施肥を行うことができるようになり、コストダウンも図ることができる。窒素やリン、カリといったものだけでなく、微生物や炭水化物、アミノ酸、ミネラルなども見える化し、有機栽培にも使える土分析を考えている」とする。

 「作物体診断サービス」は、栽培中の農作物や収獲した農作物を診断。糖度や酸度、光合成による葉緑素とその中心となる「交換性苦土」、植物細胞の生成に関係する「交換性石灰」および「交換性カリ」、アミノ酸に関係する「硝酸態窒素」、吸収に関係する「ナトリウム」など、8項目を分析、作物および収獲物の状態がわかるという。料金は3000円。

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