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ソニー、究極の解像感と定位感を両立したニアフィールドスピーカー「SA-Z1」

2020年05月28日 13時00分更新

用途を限定することで、卓越した解像感と空間表現力を実現

 SA-Z1を開発する上でソニーは、解像感と空間再現力の両立にこだわった。そのために採用した技術的なポイントを見ていこう。

ユニットの軸を同心円上に配置する、同軸型ユニットを採用している。

 特徴のひとつは、理想的な点音源に近づける同軸型を採用した点だ。ニアフィールドリスニングでは、音の発生源とリスニングポイントまでの距離が近いため、ユニット間のわずかなズレも意識される。この点に配慮し、各ユニットの取り付け位置をミクロンオーダーの高い精度で追い込んできい。さらに、マルチアンプとFPGAを使った時間軸制御によって、各ユニットが発音するタイミングを厳密に調整する。結果、複数のユニットから発せられる音の位相が揃い、正確な波面の再現につながる。ソニーでは「マルチユニットでありながら、シングルユニットのように正確なインパルス応答が得られる」と説明している。

片側5つのドライバーを使用、構成は極めて個性的

 また、空間再現力では、ニアフィールドだからこそ指向性の広さが重要とし、低域・高域を担当するそれぞれのユニットに独自の工夫を入れている。

 SA-Z1は、密閉型同軸スピーカーの1種だが、ドライバー構成は少し変わっている。低域用に2つ、高域用に3つのスピーカーを使用する、2ウェイ5スピーカー構成で、低域用にはメインウーファーの後方にアシストウーファーを対向配置。高域用には、メインツィーターとその上下にセットで置いたアシストツィーターを利用する。

SA-Z1。武骨な外観だが、これは音を最優先に考えたゆえのものだ。

 まずはウーファー部から。2つのドライバーを4本ある真鍮製の支柱でつないだ対向配置を採用。形状が和楽器の“鼓”に似ていることから「TSUZUMI構造」と命名した。対向配置は、ハイエンドのサブウーファーでもよく用いられる構造。それぞれのドライバーが逆方向に動き、振動を打ち消し合うため、大きく動かしてもエンクロージャーが揺れず、音のにごりを減らす効果が得られる。

 アシストウーファーは後方に向けているが、その振動の一部は側面の音道(スリッド)を通じて左右からも放出される。結果、音がスピーカーを中心とした360度に広がり、広いステージ感を演出する。

 新開発のドライバーには、分割マグネット構造を採用。振動板の裏側に十分なエアフロ―を確保し、空気が素直に流れるようにしている。これは、振動板周辺に発生する乱気流を防ぎ、低減の歪みやリニアリティを確保するための構造だ。また、分割マグネットはボイスコイル周辺の気圧変化を減らす効果もあり、強力で均一な磁場が出せるという。

鼓に似た形の対向配置ウーファー。

密閉型だが、側面に大きなスリッドがあり、ここからアシストウーファーの音が左右に広がる。

 ツィーターには、「SS-NA2ES」など、ソニーESシリーズの高級スピーカーでも用いられている「I-ARRAY SYSTEM」を採用した。高域は周波数が高くなればなるほど指向性がきつくなる傾向がある。口径を大きくすれば指向性を広げられるが、逆に音圧が出しにくくなる。そこで、高い音圧を出すメインツィーターの周囲に、指向性を広くするためのアシストツィーターを置いている。役割の異なる2種類のユニットを置くことで、音圧を確保しつつ、音の広がりも得ようとするコンセプトだ。

 ツィーター用のドライバーも新開発。振動板にはチタンスパッタリングの製法を使用。金属製に見えるが、実際はチタンをなじませたシルクになっており、ハードドームではなく、ソフトドーム型となる。ボイスコイルと振動板は、高性能な接着剤を使い、外周と内周の折り返し部分に点で接着している。接着面が広くなると、ピストンモーション時に接着剤がその力を吸収し、歪みにつながるためだ。ボイスコイルも高域の音圧を上げ、インダクタンス(コイル自身が発する電力)も下げられる最適な設計とし、100kHzの高域まで歪みが少なく、リニアな再生ができるようにしたという。

縦に3つ並んだツィーター。その後ろにメインウーファーが設置されている。加工精度・組み立て時精度を追い込み、ツィーターとウーファーの中心をミクロンオーダーで揃えている。

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