コンパクトでパワフルで低価格、4年ぶりの「iPhone SE」の実力をベンチマークで検証
2020年05月07日 12時00分更新
シングルカメラながら性能向上で機能は豊富に
一方、チップセットの性能向上によって大きな進化を遂げているのがカメラだ。
新iPhone SEのカメラはメインカメラが1200万画素でF値1.8、フロントカメラが700万画素でF2.2と、共にシングルカメラ構造でこちらもiPhone 8とまったく同じ仕様である。しかしながらチップセットの性能が大幅に向上したことにより、ソフトウェアでの画像処理が向上。iPhone 8と比べてより幅広いスタイルでの撮影ができるようになった。
その代表例の1つが、背景をぼかし人物を際立たせるポートレートモードである。シングルカメラでは被写体との距離を測定できないため、iPhone 8はポートレート撮影に対応していなかった。だが新iPhone SEではチップセット性能が向上したことを生かし、ソフトウェアで処理することによって、メイン・フロントカメラともにポートレートモードへの対応を実現しているのだ。
実際に撮影してみると背景のボケ具合がやや強めな印象も受けるが、被写体と背景の境界線は比較的自然に分けられていると感じる。もちろん、ライティングを6種類から選んでさまざまな表現ができる、ポートレートライティングの活用も可能なので、多彩なセルフィーの表現ができるのもうれしい。
そしてもう1つは、逆光下や夜景など、光の差が大きいシーンでも被写体が暗くなったり白飛びしたりせず、肉眼と同じような色合いで映し出すことができる「スマートHDR」機能。こちらも「iPhone XS」以降の機種で搭載した機能なのでiPhone 8では対応していなかったが、チップセットの進化により新iPhone SEにはしっかり搭載されている。
実際に逆光下のシーンで写真を何度か撮影してみたが、被写体が暗くなることもなくしっかり写し出せているようだ。ハードウェア全体の進化によって、シングルカメラながらもより幅広いシーンでの撮影に対応できるようになったといえるだろう。
動画撮影に関しても、もちろんメインカメラを使えば最大で4K・60fpsでの撮影が可能だし、「QuickTakeビデオ」の活用で写真から動画への撮影変更もスムーズにできる。チップセットの進化によって、端末上での4K映像編集もより快適になったのも歓迎すべき進化だ。
唯一残念なのは、iPhone 11シリーズで大きな注目を集めた、夜景を明るく写し出せる「ナイトモード」が搭載されなかったこと。もちろん元々レンズが明るいので、ある程度暗い場所での撮影も問題なくできるのだが、最近は夜景を綺麗に映せる機能に各社とも力を入れてきているだけに、この機能が搭載されなかったのはもったいない。
【まとめ】コスパは圧倒的、iPhoneにこだわるなら選びたい
そして新iPhone SEが驚異的なのはその価格だ。
最新のチップセットを搭載しながら、もっとも安い64GBのモデルで4万4800円、もっとも高い256GBのモデルでも6万800円と、iPhone 11の64GBモデル(7万4800円)より1万円以上安いのである。中でも一番コストパフォーマンスが高いと感じるのは中間の128GBモデルで、税別で5万円を切る4万9800円という価格を実現している。
新iPhone SEがこれだけの低コストを実現できたのは、やはりiPhone 8をベースに開発したモデルだからこそ。それゆえiPhone X以降の系統と比べデザインが古くさいのは事実だし、低価格でも6型クラスのモデルが増えている今となっては、ディスプレーが狭いと感じる人もいることだろう。性能面では優位性があるものの、その1点だけで他社の低価格モデルと比べ圧倒的に優れているとは言い切れない。
だが日本ではコンパクトなiPhoneに対するニーズが非常に強いだけに、低価格で高性能、かつコンパクトなiPhoneである新iPhone SEが、多くの人にとって非常に魅力的な端末であることに間違いはないし、実際に使ってみてもかなり満足度の高い端末に仕上がっている。特に古いiPhoneからの買い替えや、スマートフォン初心者が初めて購入する端末としては、ベストな選択肢といえるだろう。
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